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データ分析

Vodafone、匿名化した携帯電話信号データを提供することで COVID-19 感染状況の監視を支援し、新たな大流行に関する情報を早期警告システムに提供

2021年12月8日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2021 年 11 月 24 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

編集者注: 欧州最大手の移動体通信事業者である Vodafone は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策として EU 地域および英国における人流データを把握するうえで欧州委員会から支援を要請され、それに対応してモバイル ネットワークに基づく匿名化された分析情報を提供しています。Vodafone が Google Cloud の力を活用して、顧客のプライバシーを保護しながら COVID-19 対応の最前線を迅速に支援した事例をご紹介します。

2020 年初頭に COVID-19 が流行し始めた際、欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は、パンデミック抑制対策においてテクノロジーが有益な役割を果たすであろうことを理解していました。加盟諸国でさまざまなロックダウンが施行される中、欧州委員会は COVID-19 の蔓延防止および COVID-19 に伴う社会的、政治的、経済的影響の緩和に強い意欲を示していました。

モバイル ネットワーク データが EU 全体の COVID-19 状況追跡に貢献

モバイル ネットワークから提供される位置情報は、地域内の人の流れを理解するうえで有益な匿名分析情報になります。欧州委員会はモバイル業界団体 GSMA(Groupe Speciale Mobile Association)と連携し、欧州の大手携帯電話事業者に対して COVID-19 との闘いへの協力を要請しました。EU 地域のモバイル ネットワーク企業最大手である Vodafone は、この要請が協力に値する極めて重要な機会だと判断しました。

Vodafone には過去にも、モバイル ネットワーク データを使用してパンデミック調査を支援してきた実績があります。たとえば 2019 年に Vodafone はモザンビークでのマラリア蔓延状況を追跡するための移動パターン分析を提供しました。COVID-19 パンデミックの初期段階で、Vodafone は(欧州委員会との連携よりも前に)イタリアとスペインでの国民の移動パターンを理解するための政府の取り組みを支援してきました。Vodafone はまた、多くの国の公共交通機関、観光当局、小売企業を支援する目的で集計および匿名化された人流分析情報を提供してきました。このような実績から、Vodafone は欧州委員会のパンデミック対策を支援するうえでより重要な役割を果たせる立場にありました。

欧州委員会の支援要請を受けた Vodafone はまず、顧客ひとりひとりの移動に関する詳細情報を行政機関に明かすことなく、データを安全に共有できる方法を検討しました。そして緻密な匿名化技術と集計技術を組み合わせることでこれを実現できると判断しました。50 人を最小限とするユーザーから分析情報が集計され、このような匿名化された分析情報だけが Vodafone から欧州委員会に提供され、実際の未加工データは決して共有されません。EU の指示により、このような分析情報がさらに大きな地域(一般に人口が数千人にのぼる市町村や郡など)でまとめられました。

この分析情報は人々の移動状況を示し、ロックダウンや自己隔離対策が人々の行動に与える影響を理解するうえで役立ちます。

人流データの照合と保管に Google Cloud を活用

2020 年 4 月に Vodafone はモバイルデータを含めた同社のオペレーションを Google Cloud に移行しました。これらは従来からの提携に基づき、欧州と英国に設置されたサーバー上で運用され、暗号化などの入念なセキュリティ安全保護対策が施されています。

データは米国でなく欧州と英国のデータセンターに置かれているので、Vodafone は Google Cloud Storage から匿名化分析情報を瞬時に取得できます。ただし欧州委員会に情報を提供する前に、Vodafone は Dataflow を使用してデータの検証と一連のテストを実行し、データベースに格納されるデータが正確であることを確認してから、関連する指標を取り込んでアーカイブしました。データに迅速にアクセスできるように、Google Kubernetes Engine 上の Redis データベースを使用してデータを欧州委員会に公開しました。

Vodafone の顧客データを常に安全かつ匿名で集計する目的で、フロントエンドへのすべてのエントリ ポイントを Google Cloud Armor で保護し、アクセスが許可される IP アドレスを制限しました。これらのツールを使用することで、指定された欧州の各市場からの重要実績評価指標を供給するシームレスなデータ パイプラインが実現しました。またデータ品質対策により、市場間での指標の定義が整合され、正確な比較が可能になりました。

以下の図に示すアーキテクチャは、Vodafone が同社のデータを Google Cloud で統合して匿名化する流れを示しています。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/Vodafone.max-700x700.jpg

人の流れをリアルタイムで表示するライブ インタラクティブ ダッシュボード

Vodafone は Google Cloud で統合した同社のデータに基づき、移動パターンを追跡して関連情報をリアルタイムで欧州委員会に提供するライブ インタラクティブ ダッシュボードを開発しました。

欧州委員会の合同調査センター(JRC)はこれらの分析情報から有益な情報を収集できるようになりました。医療データと相互参照することで、人の流れが COVID-19 の感染拡大を助長している地域を特定できます。また、さまざまな人口集団に対するロックダウンの効果 / 影響を評価し、国全体での感染を予測できています。

複数ステークホルダー向けの疾患モデリングをモバイルデータで支援

また Vodafone のデータは、感染状況の経過予測モデリングにも貢献しました。たとえば、英国のサウサンプトン大学はこのデータを用いて、欧州でのさまざまな協調的 COVID-19 出口戦略の結果を予測しました。この研究は、2020 年 9 月にサイエンス誌に掲載されました。

Vodafone のデータ ダッシュボードは、パンデミックの影響のより詳細な調査や、ワクチン プログラムの展開および並行して行われる対策戦略の有効性の評価を目的として、政府機関、NGO、諸機関が活用しています。このプロジェクトにより Vodafone は、最も高い成果を上げたステークホルダー エンゲージメントに贈られる DataIQ アワード を受賞しました。

Vodafone はこのプロジェクトの経験を活かして、独自の B2B ソリューション Vodafone Analytics のコードを Google Cloud Platform で動作するように適合させて移行し、このソリューションを作り替えました。このソリューションはすでにドイツ、ギリシャ、ポルトガル、南アフリカに展開されており、また展開予定の国が増え続けています。すでに 100 を超える顧客が Vodafone Analytics をさまざまな用途に活用しています。イタリアのファッション小売企業 OVS は Vodafone Analytics をスマート小売事業に利用し、グローバル不動産企業 JLL は自社の物件周辺を往来する人々の情報を Vodafone Analytics で把握できるようになりました。

Vodafone と Google Cloud は今後も協力関係を維持します。これにより、進行するパンデミックを乗り越え、 運営を最適化し、プライバシーに関する基本的人権を守りつつ大きな使命に貢献するさまざまな組織、政府機関、NGO の取り組みを支援してまいります。

Google Cloud と Vodafone について詳しくは、こちらでフル インタビューをご覧ください。



- Google Cloud EMEA インダストリー セールス担当バイス プレジデント Laurence Lafont
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