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データ分析

データドリブン型意思決定のための MongoDB Atlas と Google Cloud を使用した Customer 360 プロファイルの構築方法

2022年11月16日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2022 年 11 月 1 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

小売業者にとって最大の課題の一つは、複数のチャネル(オンラインと店舗)、デバイス、購入、やりとりにわたって、個々の顧客のジャーニーを追跡することです。

顧客に関する情報が一か所に集約されていないと、カスタマー エクスペリエンスが統合されず、一貫性がなくなります。多くの小売業者は、不正確または不完全な顧客データが原因で、効果的なクロスチャネル マーケティングに支障をきたしていると報告しています。また、ユーザー プロファイルのデータでは、カスタマー エクスペリエンスを 360° 把握できないため、マーケティング活動も断片的になってしまいます。情報が不足すると、顧客の心理の把握ができず、顧客エンゲージメントやロイヤルティをさらに低下させることにつながります。

企業全体にわたる単一の顧客の全体像の作成

  1. カスタマイズとターゲット マーケティング コミュニケーションにより、顧客満足度と顧客維持率を向上させ、顧客エンゲージメントとロイヤルティを支援します。

  2. 小売業者が、あらゆるチャネルにおける顧客とのやりとりを集約し、価値ある新規顧客を特定し、獲得することで、より高いマーケティング ROI を達成し、収益向上につなげることを支援します。

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360˚ とは、顧客がブランドと出会う多くのタッチポイントで構成される関係サイクルのことです。Customer 360˚ ソリューションは、顧客に関する集約された情報を提供します。顧客の主要連絡先情報から、購入履歴、カスタマー サービスとのやり取り、ソーシャル メディアでの行動まで、すべての顧客データを一か所に集めることができます。

顧客データの記録とプロセスを 1 か所に表示

  • 行動データ: クリックストリーム データによるオンラインでの顧客のブラウジングや検索行動、アプリがロケーション ベースである場合の顧客の位置情報などを含む、顧客の行動データ。

  • トランザクション データ: オンライン購入、クーポンの利用、店舗での購入、返品や返金などが含まれるトランザクション データ。

  • 個人情報: オンライン登録や店頭のポイントカード、保証書などが 1 つのビューに集約された個人情報。

  • ユーザー プロファイル データ: マッチングと重複除去のプロセスの一部としてデータ プロファイリングを使用し、ゴールデン レコードを作成。プロファイル セグメントを活用することで、マーケティングの自動化が可能。

機械学習モデルを備え強化された Customer 360˚ ソリューションにより、分析情報の生成などのユーザーベースのカスタマイズのための主要機能を小売業者に提供し、それぞれのカスタマー エクスペリエンスをオーケストレートできます。

2022 年 10 月 1 日、Google は、MongoDB Atlas と BigQuery 間のデータの移行と処理を簡素化する Dataflow テンプレートを発表しました。

Dataflow はサーバーレスで高速かつ費用対効果の高い、真にストリームが統合されるバッチデータ処理システムです。Dataflow テンプレートを使用すると、Dataflow パイプラインをデプロイ用にパッケージ化できます。テンプレートには、パイプラインを Dataflow に直接デプロイする場合と比べて、いくつかのメリットがあります。Dataflow テンプレートと Dataflow ページにより、ソース、ターゲット、変換、データに適用するその他のロジックを定義することが簡単になります。また、Dataflow ページからすべての接続パラメータを入力すると、1 回のクリックで Dataflow ジョブがトリガーされ、データを BigQuery に移行できます。

BigQuery はあらゆる規模の分析処理(OLAP)を実行するために設計されたフルマネージド データ ウェアハウスです。BigQuery には、機械学習、地理空間分析、データ共有、ログ分析、ビジネス インテリジェンスなどの機能が組み込まれています。

このインテグレーションにより、お客様は MongoDB から BigQuery にデータを移行して、変換し、集計や複雑な分析を行うことができます。さらに、BigQuery に組み込まれた ML や AI とのインテグレーションにより、予測分析、不正検出、リアルタイム カスタマイズ、その他の高度な分析ユースケースを活用できます。

このブログでは、小売業者がフルマネージド MongoDB Atlas と Google Cloud サービスを使用して Customer 360 プロファイルを構築する方法、お客様がリファレンス アーキテクチャを環境に実装するために使用できるアーキテクチャと再利用可能なリポジトリについて説明します。

このリファレンス アーキテクチャの一部として、ユーザーの閲覧行動、注文、ユーザーの属性情報、商品カタログの 4 つの主要なデータソースを検討しました。下の図は、顧客に関する情報を一か所にまとめるために使用されるデータソースと、このデータから導き出すことができるいくつかの主要なビジネスの成果を示しています。

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以下の技術的なアーキテクチャの図は、MongoDB と Google Cloud を活用して、カスタマー ジャーニーを包括的に把握する方法を示しています。

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リファレンス アーキテクチャは、以下のプロセスで構成されています。

1. データの取り込み

異なるデータソースは、データ取り込みの段階でまとめられます。一般的には、オンライン行動、購入(オンラインと店舗)、返金、返品、その他 CRM やロイヤリティ プラットフォームなどの企業データソースなど、幅広いデータソースを統合しています。

この例では、代表的な 4 つのデータソースを検討しました。

  • ユーザー プロファイルによるユーザー プロファイル データ

  • 商品カタログ

  • 注文を通じたトランザクション データ

  • クリックストリーム イベントによる行動データ

ユーザー プロファイル、商品カタログ、注文データは MongoDB から取り込み、ウェブサーバーのログファイルのクリックストリーム イベントは Cloud Storage に保存されている csv ファイルから取り込みます。

データの取り込みプロセスは、過去のデータの最初の一括読み込みと、ほぼリアルタイムでの動的な変更処理をサポートする必要があります。MongoDB の変更ストリーム機能と Google の Pub/Sub を組み合わせることで、ほぼリアルタイムの変更を取り込み、高スループットと低レイテンシを実現する設計になっています。

 2. データ処理

データを MongoDB のドキュメント形式から BigQuery の行と列の形式に変換し、Google Cloud Dataflow テンプレートCloud Storage Text to BigQuery Dataflow テンプレートを使用して、MongoDB Atlas から BiqQuery に読み込み、CSV ファイルを BQ に移行します。

Google Cloud Dataflow テンプレートがデータ処理をオーケストレートし、集約されたデータは ML モデルのトレーニングやビジネスの知見の生成に利用できます。プロダクトの推奨事項など、分析上の重要な情報は MongoDB に戻されるため、ユーザーデータが充実します。

3. AI と ML

このリファレンス アーキテクチャは、Google Cloud BigQueryML と Vertex AI の高度な機能を活用したものです。BQ にデータを取り込むと、BigQueryML では複数の機械学習モデルを作成して、実行できますが、今回のリファレンス アーキテクチャでは、以下のモデルに注目しています。

  • K 平均法クラスタリングでデータをクラスタに分類。この場合、ユーザーのセグメンテーションを行うために使用されます。

  • 行列分解による推奨事項の作成。この場合、この機能は、過去の顧客行動、トランザクション、商品評価を使用して、プロダクトのアフィニティ スコアを作成するために使用されます。

           モデルは Vertex AI Model Registry に登録され、エンドポイントにデプロイされ、

リアルタイム予測が行われます。

4. ビジネス分析情報

GitHub リポジトリで提供されているコンテンツを使い、Looker の分析機能を紹介します。この分析機能は、BigQuery や MongoDB に集約されたデータとシームレスに統合され、ビジネス ユーザーがデータを細かく分割して新たなトレンドを探すことができる高度なデータ可視化を実現します。含まれるダッシュボードには、MongoDB と BigQuery から得た分析情報、そして両者のデータを組み合わせたものから得た分析情報が含まれています。

このリファレンス アーキテクチャの詳細な実装手順、サンプル データセット、GitHub リポジトリはこちらからご利用いただけます。

MongoDB Atlas を Google Cloud で実行する理由はたくさんありますが、最も大きな理由の一つは、Google Cloud Marketplace のセルフサービス、従量課金制のリスティングです。この機能をお試しいただき、ぜひご感想をお聞かせください。また、こちらの事例では、Luckycart が MongoDB と Google Cloud を使用して、大量のデータを処理し、極度にカスタマイズされたアクティベーションを顧客に提供するために必要な複雑な計算を実行している方法を紹介しています。


このコラボレーションに貢献してくださった多くの Google Cloud と MongoDB のチームメンバーに感謝します。リファレンス アーキテクチャの開発に協力してくださった PeerIslands のチームにも感謝します。

- MongoDB、ソリューション アーキテクト Venkatesh Shanbhag 氏

- Google Cloud ソリューション アーキテクト Maruti C
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