どこからでもデータとチャット: Google の新しい Conversational Analytics API
Richard Kuzma
Group Product Manager, Data Agents
※この投稿は米国時間 2025 年 8 月 26 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
意思決定者、従業員、顧客などの立場を問わず、日々の業務で使用するアプリケーションの「中で」答えが得られることが求められています。近年、AI を活用したビジネス インテリジェンス(BI)の進歩によって人とデータとの関係が変化し、自然言語で質問して迅速に回答を得られる状況が生まれました。しかし、自然言語がサポートされていても、BI ツール内のデータという形でしか答えとしての情報が得られないこともよくあります。Google Cloud の目標は、この状況を変えることです。
Google Cloud はこのたび、Google Cloud Next 25 で Conversational Analytics API を発表しました。この API により、信頼できるデータアクセスとスケーラブルで信頼性の高いデータ モデリングに支えられた自然言語のクエリ機能を、カスタム アプリケーション、社内ツール、ワークフローに埋め込むことができるようになります。この API は、Looker や BigQuery データキャンバスなどの Google Cloud 独自の会話型エクスペリエンスにすでに導入されており、各分野の Google Cloud 開発者の方にさまざまな実装でご利用いただけます。Conversational Analytics API は、本日、公開プレビュー版としてリリースされました。ドキュメントをご確認になり、早速ご活用ください。
Conversational Analytics API を使用すると、Looker の信頼できるセマンティック モデルによる正確性の確保、BigQuery のエージェントへの重要なビジネスおよびデータ コンテキストの提供が可能となり、これらを活用してデータ、グラフ、テキストの形式の回答を提供するカスタム データ エクスペリエンスを構築できます。この機能を埋め込むことにより、直感的なデータ エクスペリエンスを創出し、自然言語による複雑な分析を実現できます。また、Agent Development Kit を使用して、オーケストレーター エージェントの「ツール」として会話分析エージェントをオーケストレートすることもできます。


Google Health Population アプリは Conversational Analytics API を使用して開発されている
Conversational Analytics API でできること
Conversational Analytics API を使用すると、どこからでもチャットを通じて BigQuery または Looker のデータを操作・活用できます。Looker ダッシュボードのサイドパネルにチャット機能を埋め込む、Slack などのチャット アプリケーションでエージェントを呼び出す、会社のウェブ アプリケーションをカスタマイズする、マルチエージェント システムを構築するなど、さまざまな使い方が可能です。
日々のワークフローはそのままに、必要なときに必要な場所ですぐに答えを得ることができる優れた特性は、Google の高度な AI モデルおよびエージェント機能と、Looker のセマンティック レイヤおよび BigQuery のコンテキスト エンジニアリング サービスとの統合によって生み出されています。これにより、組織全体で共通の自然言語エクスペリエンスが実現し、会社で最もよく使用されるアプリケーションで、シームレスにデータを分析情報に変えることができるようになります。
Google の分析および AI スタックを使用した構築には、正確な質問応答という点で大きなメリットがあります。
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データ分析に優れた最先端の AI
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システムが環境を認識して動作するエージェント アーキテクチャ
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信頼できる回答を実現する Looker の強力なセマンティック レイヤへのアクセス
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専任のエンジニアリング チームがサポートする高性能なエージェント ツール(ソフトウェア機能、グラフ、API など)
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高度な分析のための Python コード インタープリタ
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構造化されたコンテキストとプロンプトによるエージェントの知識のチューニング
データのニーズに合ったエージェント アプリケーションを構築できる柔軟性も備えています。
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BigQuery または Looker のデータとチャットできるエージェントを作成、更新、共有
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エージェントと会話の管理にステートフル API を使用してメンテナンスの負担を軽減
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ステートレスのチャット API でユーザー エクスペリエンスを完全に制御
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AI を活用したコンテキスト エンジニアリングで、エージェントによるビジネスとデータの理解を促進
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エージェントをバージョン管理し、本番環境での使用に影響を与えることなくプロンプトを更新
Google Cloud Platform ならではのエンタープライズ クラスの制御性とセキュリティも実現します。
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ロールベース アクセス制御によってエージェントの使用を管理
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デフォルトの行レベルと列レベルのアクセス制御によってデータのセキュリティを確保
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組み込みのクエリ制限で高額なクエリを防止
Conversational Analytics API を Looker と組み合わせると、Looker のセマンティック レイヤによって生成 AI の自然言語クエリのデータエラーが最大で 3 分の 2 も減少し、クエリが正確なデータに基づいたものになります。


Looker のセマンティック レイヤにより会話分析がデータの事実で根拠づけられる
Google AI を活用したエージェント アーキテクチャ
Conversational Analytics API では、正確な回答を提供するために、データをクエリして分析する専用のモデルが使用されます。また、柔軟なエージェント アーキテクチャにより、質問への最適な回答のためにエージェントによって利用される機能を構成することができます。


エージェント作成者が適切なツールを利用できるようエージェント アーキテクチャを活用
開発者は、次のツールを使用して AI エージェントを構成できます。
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Gemini in BigQuery のお客様の信頼を得ている Text-to-SQL
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個人や組織の使用状況に基づくコンテキストの取得
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アナリストによって選定されたセマンティック レイヤを活用するための Looker の NL-to-Looker クエリエンジン
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予測や根本原因分析などの高度な分析用のコード インタープリタ
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優れた可視化によりデータを活用するためのチャート作成
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回答をわかりやすい言葉で説明するための分析情報
これらの生成 AI ツールは、Google の最新の Gemini モデルを基に構築され、特定のデータ分析タスク向けにファインチューニングされているため、高い精度を実現します。会話分析用のコード インタープリタもあり、コホート分析から期間ごとの計算まで、さまざまなコンピューティング処理が可能です。現在プレビュー版のコード インタープリタを使用すると、高度なコーディングや統計手法を学ぶことなく、データ サイエンティストの業務をこなすことができます。ぜひ、こちらから早期アクセスにお申し込みください。
コンテキストの取得と生成
優れたデータ アナリストは、単に頭脳明晰なだけでなく、自社のビジネスとデータに関する深い知識も持ち合わせています。これに匹敵する価値を提供するには、「データとのチャット」エクスペリエンスでも、同様に豊富な知識にアクセスできる必要があります。そのため、Conversational Analytics API では、データとクエリに関するコンテキストの収集に重点が置かれています。
会話分析エージェントは、検索拡張生成(RAG)を活用して特定のユーザーとそのデータを理解します。たとえば「ニューヨーク」または「NYC」の売上を尋ねられた場合は「ニューヨーク市」を意味することを認識します。また、この API は質問の意味を分析して、クエリ対象として最適なフィールドを選択し、組織から学習します。たとえば、ある BigQuery プロジェクトでは「revenue_final_calc」が「revenue_intermediate」よりも頻繁にクエリされることを認識し、それに応じて動作を調整します。最後に、この API は過去のやり取りからも学習します。たとえば、火曜日に BigQuery Studio で「顧客のライフタイム バリュー」についてクエリを実行したことを記憶し、金曜日に再度同じ質問をすると、そのことを考慮して回答します。
すべてのデータセットに、エージェントが機能するために必要なコンテキストが含まれているわけではありません。列の説明、ビジネス用語集、質問とクエリのペアといったものはどれもエージェントの精度向上に役立ちますが、手動で作成するのは大変な作業であり、特に 1,000 個のテーブルそれぞれに 500 個のフィールドがあるような場合はなおさらです。エージェントの学習プロセスを迅速化するために、この API には AI によるコンテキスト支援機能が含まれています。Gemini がエージェントが知っておくと役立つ可能性のあるメタデータを提案し、開発者は変更を承認または拒否できます。
メンテナンス負担の軽減
Conversational Analytics API を使用すると、Google Cloud の最新のデータエージェント ツールにアクセスできるため、エージェントの構築ではなくビジネスの拡大に集中できます。コーディングおよびデータ分析用の生成 AI の分野における Google のたゆみない進歩をぜひご活用ください。
エージェントを作成した時点から、Google のセキュリティ、ベスト プラクティス、ロールベース アクセス制御によってデータが保護されます。Looker または BigQuery エージェントを共有すると、Agent Development Kit などの Google Cloud プロダクトや独自のアプリケーションでそのエージェントを使用できるようになります。


Conversational Analytics API を使用すればどこからでもデータを活用可能
API を活用したチャットをどこからでも
API 経由で利用できるエージェントによって、意思決定者に求められるあらゆる場所で分析情報を提示できます。サポートチケットで顧客と話しているとき、現場でタブレットを使用しているとき、メッセージ アプリを使用しているときなど、いつでも対応可能です。
Conversational Analytics API は、ビジネス ユーザー、エージェントを構築するデータ アナリスト、ソフトウェア開発者など、あらゆるユーザーにメリットをもたらすように設計されています。会話型エージェントでは、ユーザーが質問すると、分析情報の取得に適切なアプローチが使用されていることを確認できるよう、エージェントの思考プロセスとともに回答が提供されます。個別の更新により、開発者はユーザーに提示する内容(回答やグラフなど)と、アナリストによる事後監査用にログに記録する内容(SQL や Python コードなど)を制御できます。
使用を開始するには、REST API と SDK のドキュメントと API リファレンスをご確認ください。また、Colab ノートブックの例、GitHub の Streamlit アプリケーション、TypeScript リファレンス アプリケーションのコード例もご活用ください。
-データ エージェント担当グループ プロダクト マネージャー Richard Kuzma