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コンピューティング

強力なコンピューティング能力: 「スパイダーマン: ファー・フロム・ ホーム」を Google Cloud 上で レンダリング

2019年9月26日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2019 年 8 月 28 日に Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

「スパイダーマン:  ファー・フロム・ホーム」では、スパイダーマンがおなじみの舞台ニューヨークを離れ、学校の研修旅行でベニス、プラハ、ベルリン、ロンドンを訪れます(でもパリには行きません)。この映画の視覚効果(VFX)を担当する Luma Pictures 社も、それまで利用していたロサンゼルスのオンプレミス データセンターから Google Cloud へとレンダリング パイプラインを移行して、登場キャラクターの風と火のエレメンタルズ(サイクロンとモルテンマン)を作りました。

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画像提供: Luma Pictures

「この移行は非常に良い結果をもたらしました」と、Luma Pictures 社の VFX プロデューサーである Michael Perdew 氏は述べています。当初、同社では最新作のスパイダーマンの制作にクラウドは適していないと考えられていました。「この 2 つのキャラクターがシミュレーションであることが、技術面での大きな課題でした」と同氏は続けます。それまでシミュレーションと言えば、CPU、帯域幅、ディスク容量を大量に消費する作業であるため、オンプレミスのコンピューティング施設以外では時間効率やコスト効率の良い方法でレンダリングできませんでした。帯域幅が制限されている場合、テラバイト規模のキャッシュ データをオンプレミスからクラウドに同期するには何時間もかかってしまいます。また、同社はシミュレーションのレンダリングに必要な大量のコンピューティング クラスタをサポートできるクラウドベースのファイル システムをまだ見つけていませんでした。

しかしこのプロジェクトの規模は大きかったので、「オンプレミスのコンピューティング施設よりも大量に処理できるレンダリング方法を見つける必要がありました」と Perdew 氏は述べています。そこで同社のスタッフは知恵を出し合い、クラウドで機能するワークフローを開発しました。 

結果的に、クラウドはこのプロジェクト、特にサイクロンのシミュレーションに最適であることがわかりました。同社は Google Cloud で、96 コア、128 GB の RAM を備えた Compute Engine カスタム イメージを利用し、パフォーマンスの高い ZFS ファイル システムと併用しました。最大 15,000 個の vCPU を使うことで、クラウド モンスターの映像をわずか 90 分でレンダリングできました。オンプレミスのレンダリング施設であれば 7~8 時間はかかる処理です。クラウドでのレンダリングによって節約できた時間は、Google Cloud へのデータ同期にかかった時間を補って余りあるものでした。「時間をかなり節約できました」と Perdew 氏は言います。

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画像提供: Luma Pictures

クラウドの活用により、同社のワークフローもスマートになりました。サイクロンのシミュレーションを分割することで、世界各国のチームによって 24 時間体制で作業できるようになったのです。これを可能にしたのは、世界中でデータ伝送を行う Google のグローバル ファイバー ネットワークです。ロサンゼルスの本社チームが眠っている間は、メルボルン支社の VFX アーティストがアニメーションとシミュレーションの設定を微調整します。作業を終えたシーンはクラウドに同期され、ロサンゼルスの FX チームとライティング チームに引き継がれます。翌朝出社したロサンゼルスのアーティストは、Google Cloud でシミュレーション作業を開始し、確認用のデータを昼には受け取ります。 

最終的に、同社が完成させた「スパイダーマン:  ファー・フロム・ホーム」の 330 ショットのうち約 3 分の 1 はクラウドで制作されました。制作したのはサイクロンとモルテンマンだけではありません。スパイダーマンのナイトモンキー スーツのデザインや、リベレツ広場で繰り広げられるモルテンマンとのバトルシーンのための複雑な CG 環境も作成しました。さらに、ミステリオの隠れ家での破壊シーンの視覚効果にも携わりました。

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画像提供: Luma Pictures

スパイダーマンの作業を完了した現在、Luma Pictures 社は他の GCP 機能を活用するための準備をしています。たとえば、完全なシミュレーションとレンダリングにより、更新されたキャラクター アニメーションの表示プロセスを自動化する Rill という社内独自のツールがあります。このツールは現在、オンプレミスの Kubernetes クラスタにデプロイされていますが、同社の他のツールと併せてクラウド上の Google Kubernetes Engine(GKE)に移行することを検討しています。「日常的な業務をクラウドで行えば、あらゆる面で信頼性が得られます」と Perdew 氏は述べています。たとえば、同社のサンタモニカ支社で時折発生する停電の影響を受けなくて済みます。

さらに、Luma Pictures 社は今後の制作に備え、帯域幅を増やし、Google Cloud へのレイテンシを低減するために、今年の夏に 1 周年を迎えた Google Cloud ロサンゼルス クラウド リージョンに直接接続する予定です。同社のチームは、これによりあらゆる可能性が広がることを期待しています。
たとえば、Perdew 氏はリモート ワークステーションを試したいと考えています。同氏は次のように述べています。「この業界では、良い仕事をするために分野ごとに必要なコンピュータの種類が変わり続けています。臨機応変にアップグレードやダウングレードができる柔軟性を個々のアーティストに提供できることを、プロデューサーとして嬉しく思っています。」 

Google Cloud チームも、スパイダーマンの最新アドベンチャーの映像化をサポートできたことを嬉しく思っています。しかし、強力な(コンピューティング)能力には責任が伴います。Google では、皆様の作品をレンダリングする最適な場所として Google Cloud をご活用いただけるよう、精力的に取り組んでいます。メディアとエンターテイメントの業界における Google Cloud について詳しくは、レンダリング ソリューションのページをご覧ください。

- By Todd Prives, Product Manager, Cloud Rendering

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