グリーン エネルギーへ: Google Cloud で持続可能な障害復旧を実現
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 1 月 22 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Google はさらに地球に優しいテクノロジーの構築と、幅広い持続可能性の促進への取り組みを行っています。Google は、再生可能エネルギーの世界最大級の購入企業であり、9 月には、2030 年までに Google の世界中のすべてのデータセンターとキャンパスで 24 時間 365 日カーボンフリーのエネルギーで業務を遂行する目標を設定しました。
以前お伝えしたように、Google ではさまざまな形で地球の持続可能な未来実現に向けて取り組んでいます。その一つが、パートナー各社やお客様が、本番環境ワークロードの場所にかかわらず、運用上の二酸化炭素排出量が正味ゼロの障害復旧(DR)戦略を確立できるよう支援することです。
この投稿では、障害復旧戦略における二酸化炭素に関する考慮事項、Google Cloud を活用して正味の二酸化炭素排出量を削減する方法、DR フェイルオーバー サイトの設計を最適化できるようにする 3 つの基本シナリオについてご説明します。
二酸化炭素排出量に関する考慮事項とのバランスを取りながら DR を計画する: 案ずるより産むがやすし
DR 戦略には、組織が大きな障害の後に業務上不可欠な機能をサポートし、想定外のリージョン障害の場合に復旧できるようにするポリシー、ツール、対応手順が伴います。ここで、持続可能な DR とは、二酸化炭素排出量を可能な限り少なくしながらフェイルオーバー サイト(スタンバイ コンピュータ サーバーまたはシステム)を運用することであると言えます。
持続可能性の観点から見た場合、さまざまな組織において堅牢な DR アプローチと二酸化炭素排出量に関する考慮事項とのバランスを取るのに苦労しているとの声をよく耳にします。こうした組織は危機に備えるために、資金を投入して、電力と冷却機能、バックアップ サーバー、スタッフを施設全体に配置していますが、これらはすべて、通常の運用時にはアイドル状態になっています。
一方、Google Cloud のお客様には、こうした問題は発生しません。Google Cloud はエネルギー使用によって生じる運用上の排出量を相殺するのに十分な再生可能エネルギーを調達しており、お客様は Google Cloud でアプリケーションとワークロードを実行することにより、二酸化炭素排出量削減を実現できます。従来の DR 計画とは異なり、Google Cloud のお客様は、容量(必要に応じたスケーリングに十分なリソースの確保)、あるいは施設やエネルギーの費用(障害の発生時にのみ必要になる可能性のある装置の稼働に伴う)を気にする必要はありません。
Google の詳細な障害復旧計画ガイドをご覧ください。このガイドでは、DR 計画を立てて実装するために必要な情報を紹介しています。
Google Cloud を使用して DR 戦略を実装する場合、3 つの基本的なシナリオがあります。お客様の DR 戦略が軌道に乗るように、ここではそのシナリオについてご説明し、加えてリソースやシナリオの過程における重要な検討事項についてもお話しします。
1. 本番環境をオンプレミスに置き、Google Cloud を DR サイトとして使用
独自のデータセンター、または多くがホスティング プロバイダによって運用されている非ハイパースケールのデータセンターを運用している場合、大規模運用によって実現可能なエネルギー効率上のメリットを得られない可能性があります。たとえば、平均的なデータセンターでは、コンピューティング以外の「オーバーヘッド」エネルギー(冷却や電力変換など)の使用量が、サーバーに供給する電力と同程度にのぼります。
オンプレミスにフェイルオーバー サイトを作成することは、エネルギー効率の最適化がされていないデータセンターに加えて、バックアップのロケーションでアイドル状態のサーバーを運用することを意味します。そしてこうしたロケーションでは電力消費に伴う排出二酸化炭素の相殺がおそらく行われないのです。DR 戦略を立てる際に、Google Cloud をフェイルオーバー サイトのターゲットとして使用することで、二酸化炭素排出量の増加を防ぐことができます。
オンプレミス環境をレプリケートすることで、Google Cloud に DR サイトを作成できます。環境のレプリケートにより、DR フェイルオーバー サイトでは、Google Cloud のカーボン ニュートラルなデータセンターを直接利用できるようになり、エネルギー消費量とオンプレミスでの DR サイト実行費用を相殺できます。しかしながら、実際は、オンプレミス環境を単にレプリケートした時点では、さらに DR サイトでの電力消費を最適化する余地があります。Google Cloud は、Google Cloud のインフラストラクチャで実行されている DR サイトのすべての排出量を相殺しますが、二酸化炭素排出量を可能な限り少なくした運用を最大限に活用するには、Google Cloud での DR フェイルオーバー環境の構成を最適化することが必要です。
これを行う場合、オンプレミスでアプリケーションを実行していて DR ソリューションが Google Cloud 上にある状況で実装できるパターンとしては、コールド、ウォーム、ホットの 3 つがあります。これらのパターンについて詳しくは、こちらをご覧ください。
下のグラフは、選択したパターンが「個人」エネルギー消費にどのように関連しているかを示しています。ここでは、「個人」エネルギー費用は、アイドル状態のリソースで消費されるエネルギーを意味することとします。
個人エネルギー消費の最適化は、単なる DR サイトの移動以上のことが関わってきます。単に「すべてをレプリケートする」アプローチをとるにとどまらず、DR 戦略を慎重に検討することが必要です。検討が必要な重要項目には、次のようなものがあります。
アプリケーションに、他より長い目標復旧時間(RTO)を許容できる部分はあるか。
Google Cloud Storage を DR 構成の一部として利用できるか。
コールド DR パターン寄りのアプローチを採用することで、個人エネルギー消費を最適化できるか。
しかしながら、表には出ずとも次のような懸念も生じることが考えられます。「必要になる場合は間違いなくリソースを利用できるのか。リソースが必要なときにそれが用意できていることをどのように確認できるのか。必要な時以外の稼働リソースを最小限に抑えるよう、Google Cloud 上の DR フェイルオーバー サイトの設計を最適化する場合の仕組みはどうなるのか」ということです。
この場合、Compute Engine ゾーンリソースの予約機能を検討することをおすすめします。これにより、必要な場合は常にリソースを DR ワークロードに使用できるようになります。仮想マシンを予約することは、費用の削減にもつながります(これについてはこの投稿で後述します)。
ここまで、Google Cloud をフェイルオーバー サイトのターゲットとして使用すれば正味の二酸化炭素排出量をすぐに削減できること、および適切な事項の検討と適切なパターンの実装により DR 構成を最適化することの重要性を説明してきました。最後に、お客様の特定のユースケースで可能であるなら、オンプレミスのワークロードを完全に Google Cloud に移行することを検討してください。これにより、お客様の組織は、二酸化炭素排出量を可能な限り削減することにおいて、真の変化をもたらすことができます。
2. 本番環境を Google Cloud に置き、Google Cloud を DR サイトとして使用
アプリケーションと DR フェイルオーバー サイトを Google Cloud で運用すると、本番環境のアプリケーションと DR 構成の両方で、運用上の正味の排出量がゼロになります。
ここから、Google Cloud で DR フェイルオーバー サイトの設計を最適化することに注力できます。最適なパターンは、ユースケースによって異なります。
たとえば、完全な高可用性(HA)構成、つまりホットパターンの場合、すべてのリソースを使用します。アイドリング状態のスタンバイ リソースはなく、常に、必要なときに必要なものを使用します。あるいは、RTO に完全な HA 構成は不要でも、障害や大きなイベントの発生時に必要に応じてリソースのスケーリングや稼働ができるようにウォームまたはコールド パターンを採用することもできます。
ウォームまたはコールド パターンを採用した場合、DR に必要なすべてまたは一部のリソースは、必要になるまで使用されることはありません。これにより、1 つ目のシナリオで言及したものとまったく同じ懸念が生じることが考えられます。「障害や大きなイベントの発生時に必要となる場合は間違いなくリソースが利用できるのか。リソースが必要なときにそれが用意できていることをどのように確認できるのか。これはどのような仕組みになるのか。」
前のシナリオと同様に、簡単な解決策として、必要な場合に備えてワークロードに Compute Engine ゾーンリソースを予約します。また、本番環境を Google Cloud で運用している状況であるため、使用量の予測について Google Cloud の営業担当者にご相談いただき、確約利用割引をご利用いただくことができます。確約利用割引は、1 年間または 3 年間の支払いをご確約いただく代わりに、コンピューティング リソース(特定の量の vCPU、メモリ、GPU、ローカル SSD)を割引価格でご購入いただけるものです。確約利用割引は、必要なリソース量が予測可能なワークロードに最適です。
確約利用割引をご利用いただくと、Google Cloud がリソースをオーバープロビジョニングすることによって最適なサーバー運用が妨げられることなく、お客様の予測に基づき、お客様のニーズに合わせてデータセンターを最適化できるようになります。持続可能性とは、消費されている電力量、使用されている電力の種類、データセンターから電力を供給されているリソースの使用量のバランスを取ることです。
3. 本番環境を Google Cloud 以外のクラウドに置き、Google Cloud を DR サイトとして使用
オンプレミスで本番環境を運用する場合と同様に、全体的な二酸化炭素排出量は、Google Cloud 以外の稼働から生じる量と、Google Cloud(カーボン ニュートラル)の稼働から生じる量との合計です。Google Cloud 以外のクラウドで本番環境を運用している場合、独自の持続可能性目標を基準として、インフラストラクチャの持続可能性についての特性を調査する必要があります。カーボン ニュートラルを実現する方法はいろいろあり、多くのプロバイダは独自の持続可能性目標に向けてさまざまな取り組みを進めています。過去 3 年間、Google は消費電力を再生可能エネルギーで賄う取り組みを進めており、2020 年 9 月には、24 時間 365 日すべてのデータセンターでカーボンフリーのエネルギーを利用できるようにするという目標を掲げました。Google Cloud はこの取り組みが、Google Cloud のお客様それぞれの持続可能性目標を達成する手助けとなるものと考えます。
お客様の組織がどのシナリオを適用する場合でも、DR に Google Cloud を利用することが、エネルギー消費量を削減する簡単な方法です。Google Cloud が「お客様と連携する」と言うときは、心からそれを意味しています。Google Cloud は、お客様がいる場所でお客様とつながります。お客様がリソース消費量を予測して Google Cloud にご協力くださることで、Google Cloud はデータセンターの拡張をどこに集中させるかを判断できます。Google Cloud のデータセンターは、正味ゼロの排出量を実現できるよう設計されており、最大使用率に合わせて最適化されます。この結果として得られるメリットは、二酸化炭素排出量の削減という形でお客様に還元されます。持続可能性の取り組みは、お客様と Google が連携することでさらに大きく前進できます。
続けて読む: カーボンフリー エネルギーを 24 時間 365 日利用できる体制に向けた取り組みの詳細については、無料のホワイトペーパー「Moving toward 24x7 Carbon-Free Energy at Google Data Centers: Progress and Insights(Google データセンターでカーボンフリー エネルギーを 24 時間 365 日利用できる体制へ: 進捗状況と分析情報)」をダウンロードしてご覧ください。
-Cloud ソリューション アーキテクト Grace Mollison