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アプリケーション開発

住友ゴム工業様:Gemini を活用したクラウドベースの内製開発で、アプリ開発の生産性を大幅に改善

2024年4月23日
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Google Cloud Japan Team

Google Cloud Tech Acceleration Program (TAP) は、ユーザー企業が DX の取り組みを加速させるために、クラウドネイティブな技術を活用して、実際のアプリケーションを題材に、迅速で効率的なアプリケーション開発を体験するアジャイル型のワークショップです。また、TAPではアジャイルなアプリケーション開発を支援するための環境づくり(開発環境の整備やコンテナベースのプラットフォームの検討など)もご支援しています。

住友ゴム工業株式会社(以降住友ゴム)では、内製開発の生産性を高めるべく、開発環境の整備と生成AIのアプリケーション開発での適用を検討されるにあたり、TAPに参加されました。同社の研究開発本部 研究第一部長 角田昌也様と、今回の開発環境構築を支援された京セラコミュニケーションシステム株式会社(以降 KCCS)の白井 智也 様にお話を伺いました。

住友ゴムは、タイヤ・ゴム製品を中心に事業を展開する総合ゴム素材メーカーです。同社の主力事業は自動車タイヤで、売上の約 8 割を占めています。これまで 110 年以上の歴史の中で、自転車タイヤからゴルフボールまで、様々な製品を手掛けてきました。

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TAP で利用した主なサービス:Cloud Workstations, Cloud Run, Gemini Code Assist

TAPで利用したソリューション:アプリケーションのモダナイゼーション


住友ゴムでは、製品開発の工程でコンピューター シミュレーションを活用しています。シミュレーションでは、タイヤの摩耗や空気抵抗から製造プロセス、金型の流れ、回転時の挙動、発生音など、さまざまな条件を予測・検証しています。

これらのシミュレーションでは、アバカスなどの市販ソフトを利用しつつ、Fortran、Perl、Java など複数の言語でカスタムツールを内製開発する必要がありました。開発チームをリードする角田様は「シミュレーションでは、デスクトップ 1 台で様々なソフトを使い分けます。これまで自分達でプログラミングしてツールを内製開発していましたが、シミュレーションには、いろんな言語を知っている必要があり、それを身につけるのは大変ですし、開発環境の構築にも、とても時間がかかっていました。」と振り返ります。

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そこで、これらの課題を解決するためクラウドを活用することを検討、特に開発環境と 生成 AI 技術を使って効率化することを目指して、具体的に検証されることになりました。「特に生成 AI について調査を進める中で、これは今までとは違うことができる可能性があると感じました。そして、この分野で優れたサービスを提供している Google Cloud を試そうと考えコンタクトしたところ、ワークショップ形式で積極的に支援してくれる、とのことで Google Cloud で検討することにしました。」と角田様は話します。この検討のために部門横断での検討チームを結成、さらに Google Cloud パートナーの KCCS の支援を得て、Google Cloud 上で実際に環境構築と生成AIの検証をすべく、TAP に参加されました。TAPでは、Google Cloud のエンジニアが伴走して開発環境及び生成AIの導入に向けたシステム設計の支援とハンズオンを実施、その後 住友ゴムとKCCSにて導入と検証を実施されました。

Cloud Workstations や Cloud Run によって、Web アプリ配布とメンテナンスのスピードの向上とコスト削減を同時に実現

まず 開発者が迅速でセキュアな開発ができる環境を整備するため、Cloud Workstations を導入しました。これによって、Google Cloud の VPC 管理下のセキュアな開発環境ができ、しかも従来、開発者が利用している Visual Studio Code をそのままブラウザ経由で使えるため、迅速に環境が出来上がりました。Cloud Workstations は、GPU の利用もサポートされているため、AI の開発も快適に実施できます。さらに、開発者が作成したプログラムのメンテナンスや社内利用者への配布を自動化する仕組みも構築しました。コンテナをベースとして、Cloud Run や Cloud Build といったクラウドネイティブのアプリケーション基盤で、開発したプログラムの Web アプリ化と実行環境へのデプロイが自動化できるようになりました。「住友ゴム様では、以前から開発環境を構築して配布されることに苦労されていましたので、同じスペックのマシンをまとめて配布できる仕組みができたのは開発の効率化にとても役立ちました。」Cloud Workstations の構築支援を担当された KCCS の白井様は、このようにお話しします。従来は外注して半年かかる作業を、コマンド 1 つで数分で完了できるようになり、環境構築や開発スピードが大幅に向上しました。また、Cloud Run は、利用者からのアクセスがあった時だけサーバーが立ち上がるので、コストを抑えることもできています。

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Gemini を活用して、プログラミングの生産性も大幅に向上

次に、生成 AI を活用したプログラミングの生産性の向上に向けて、Gemini の利用を開始されました。今回利用を開始された「Gemini Code Assist」は、コード生成や補完、提案、変換などの機能があり、これによってアプリケーション開発者はプログラミングにおける生産性を向上させることができます。また今回導入された開発環境の Cloud Workstations の画面から利用することができます。今回の取り組みでは、 例えば、「CSV データを読み込んで、描画するプログラムを Python で書いて。」と指示するとコードが自動生成され、それをエラー修正するだけでプログラムが完成、また、そのテストプログラムの生成も指示することで、自動生成したプログラムの検証もできるとのことがわかりました。また、MATLAB で作られたプログラムを Python に変換することができることも検証されました。一方、Fortran から Python へといったコンパイラ言語からスクリプト言語への変換は、難しいことがわかりましたが、これについては、一旦プログラムの要約をさせてから、別途 Python で生成させる、といった方法で効率的に変換ができることもわかってきました。角田様は「今までは、Fortran からの言語変換ができなかったため、Gemini による効果は画期的でした。」と話します。

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今回の取り組みにより、開発環境の構築やアプリの配布やメンテナンスなどのスピードが格段に向上しました。さらに、生成 AI を活用してプログラミングの効率化が実現できる目処がたったことで、様々なプログラミング言語の習得の必要性という従来の課題についてもハードルを下げられることになりました。今後は研究本部の全員がプログラミングできる体制を整備する計画です。

角田様は「生成 AI によって育成にかかる時間を大きく短縮でき、またプログラミングの初心者を助けるツールとして有効であることもわかりました。今後、メンバー全員が生成 AI を使ったアプリケーション開発をすることで、業務効率化に加えて、多く新しいサービスを顧客に提供する、ということも可能になるでしょう。」と前向きに述べています。

また、 KCCS の白井様は「生成 AI を活用していくことは企業にとって非常に重要であり、また、これを全社で活用しやすくするための環境の整備や運用の効率化は、それを支えるために必須なことだと考えます。引き続き住友ゴム様を全面的に支援していきます。」と語っています。さらに「Gemini は、Google Cloud に関する質問を的確に答えてくれるため、この活用も推進していきたい。」と付け加えました。

住友ゴムでは、生産性の大幅な改善に加えて、これまで以上のユーザー視点に立ったイノベーション創出を目指しています。Google Cloud の生成 AI 技術の活用が、その原動力になることが期待されています。


住友ゴム工業株式会社

「未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる。」を起点とし、独自のゴム技術を活かしてタイヤ・スポーツ・産業品事業を軸に事業を展開しています。日本において「近代ゴム技術」を創始して以来、世界中のお客様に「最高の安心とヨロコビ」を実感していただくことを大切にしています。

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京セラコミュニケーションシステム株式会社                   

1995年に京セラ株式会社より分離独立し、情報システム企業として事業を開始しました。既存事業の拡大を目指すと同時に、新たな事業への挑戦を重ね、現在では、「ICT」「エンジニアリング(通信・環境エネルギー)」「経営コンサルティング」の分野において事業を展開しています。

住友ゴム工業株式会社
研究開発本部 研究第一部長
角田昌也 様

京セラコミュニケーションシステム株式会社
デジタルソリューション事業部 DXインテグレーション課 エキスパート
白井 智也 様

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