インタラクションから分析情報へ: Google ADK 向け BigQuery Agent Analytics の発表
Ganesh Kumar Gella
Sr Director of engineering
Sandeep Karmarkar
Product lead
※この投稿は米国時間 2025 年 11 月 21 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
エージェント AI の世界では、エージェントの構築はプロセス全体の半分にすぎません。もう半分は、ユーザーがエージェントをどのように利用しているかを把握することです。最も一般的なリクエストは何か、ユーザーはどこでつまずいているか、どうすれば成功につながるか。こうした疑問への答えが、エージェントを改良し、より優れたユーザー エクスペリエンスを提供するための鍵となります。これらの分析情報は、エージェントのパフォーマンスを最適化するうえでも非常に重要です。
このたび、Google の Agent Development Kit(ADK)では、エージェントのデベロッパーがこうした疑問の答えを簡単に見つけられるようになりました。ADK デベロッパーは、たった 1 行のコードでエージェントのインタラクション データを BigQuery に直接ストリーミングし、エージェントのアクティビティに関する分析情報をスケーラブルな方法で取得できます。そこで、Google は BigQuery Agent Analytics を導入します。これは、エージェントのインタラクション データを BigQuery に直接エクスポートして、エージェントのパフォーマンス、ユーザー インタラクション、費用を把握、分析、可視化する ADK 向けの新しいプラグインです。
エージェントのインタラクション データが BigQuery に一元化されているため、レイテンシ、トークン消費量、ツール使用量などの重要な指標を簡単に分析できます。Looker Studio や Grafana などのツールを使ったカスタム ダッシュボードの作成も容易です。さらに、生成 AI 関数、ベクトル検索、エンベディングの生成などの最先端の BigQuery 機能を利用して、高度な分析を実行できます。これにより、エージェントのインタラクションをクラスタ化し、そのパフォーマンスを正確に測定して、一般的なユーザーのクエリやシステム障害のパターンを迅速に特定できます。いずれもエージェント エクスペリエンスの改善に不可欠です。また、インタラクション データを関連するビジネス データセットと結合(サポート エージェントのインタラクションを CSAT スコアにリンクさせるなど)して、エージェントの実際の影響力を正確に測定することもできます。この機能全体は、最小限のコード変更で利用できます。
このプラグインは現在、ADK ユーザー向けにプレビュー版が提供されており、他のエージェント フレームワークのサポートも近日中に開始される予定です。
プラグインの活用例については、以下の動画をご覧ください。

BigQuery Agent Analytics について
BigQuery Agent Analytics プラグインは、さまざまなエージェントのアクティビティ データを BigQuery テーブルに直接ストリーミングする非常に軽量なツールで、主なコンポーネントは次の 3 つです。
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ADK プラグイン: 新しい ADK プラグインを使用すると、たった 1 行のコードで、リクエスト、回答、LLM ツール呼び出しなどのエージェント アクティビティを BigQuery テーブルにストリーミングできます。
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事前定義された BigQuery スキーマ: 最適化されたテーブル スキーマをすぐに利用して、ユーザー インタラクション、エージェントの回答、ツールの使用状況に関する豊富な詳細情報を保存できます。
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低コストで高性能なストリーミング: このプラグインは BigQuery Storage Write API を使用して、イベントをリアルタイムで BigQuery に直接ストリーミングします。
重要な理由: データドリブンなエージェント開発
エージェントの分析データを BigQuery に統合することで、基本的な指標を表示できるだけでなく、行動につながる詳細な分析情報を生成することもできます。具体的には、この統合により次のことが可能になります。
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エージェントの使用状況とインタラクションを可視化: エージェントのパフォーマンスを明確に把握できます。トークン消費量やツール使用量などの主要な運用指標を簡単に追跡して、費用とリソース割り当てをモニタリングできます。
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高度な AI でエージェントの品質を評価: BigQuery の高度な AI 機能を使用して、単純な指標を超えた評価を実現します。AI 機能とベクトル検索を活用して会話データの品質分析を行い、改善すべき領域をより正確に特定します。
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エージェントのデータと会話して学習する: 新しいオブザーバビリティ データと直接連携する会話型データ エージェントを作成します。これにより、ユーザーとチームは、エージェントのアクティビティについて自然言語で質問し、複雑なクエリを記述することなく、即座に分析情報を得ることができます。
仕組み
堅牢な分析パイプラインをできるだけ簡単に設定できるように、次のプロセスを設計しました。
1. 必要なコードを追加する: このプラグインでは、エージェントを構築する際に ADK のアプリケーション(アプリ)コンポーネントを使用する必要があります。次のコードは、新しいプラグインを初期化してアプリの一部にする方法を示しています。
2. ストリーミングする内容を選択し、前処理をカスタマイズ: BigQuery に送信するデータを完全に制御できます。ストリーミングする特定のイベントを選択して、自分のニーズと最も関連性の高いデータのみをキャプチャできます。次のコード例では、ログに記録する前にドル表記の金額を秘匿化しています。
以上です。必要な BigQuery テーブルを正しいスキーマで自動作成し、エージェント データをリアルタイムでストリーミングするなど、残りの処理はプラグインが行います。
これで、使い慣れた BigQuery セマンティクスを使用して、エージェントの指標を分析する準備が整いました。空でない列に対して「select * limit 10」を使用して BigQuery テーブルに表示されるログの例は以下のとおりです。


使ってみる
エージェントの可能性を最大限に引き出すときが来ました。新しい BigQuery Agent Analytics を使用すると、重要な疑問の答えを明らかにして、エージェントを改良し、パフォーマンスを最適化して、優れたユーザー エクスペリエンスを提供できます。近いうちに、LangGraph との統合によるマルチモーダル エージェント インタラクションの高度な分析など、さらに多くの機能が追加される予定です。
まずは、Google ADK サイトで Google Cloud BigQuery Agent Analytics のドキュメントをご確認ください。このプラグインの使用方法に関するガイド付きチュートリアルについては、包括的な新しい Codelab をご覧ください。
皆様が構築する、データドリブンな素晴らしい会話型エクスペリエンスを拝見できることを楽しみにしております。
エンジニアリング担当シニア ディレクター Ganesh Kumar Gella
プロダクト リード Sandeep Karmarkar


