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AI & 機械学習

Visual Inspection AI: より高速かつ精度の高い品質管理のための専用ソリューション

2021年6月23日
https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/original_images/manufacturing.gif
Google Cloud Japan Team

 ※この投稿は米国時間 2021 年 6 月 23 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

自動車、半導体チップ、スマートフォン、食品、飲料など、メーカーの作る製品はさまざまです。しかし、パフォーマンスを測定する指標のトップに品質と生産量が含まれるのは、どの業界でも変わりません。品質管理がしっかりと行われない場合、部品の再加工、廃棄の発生、生産量の低下、あるいは仕掛品在庫、販売済み製品のリコール、保証の請求、修理の増加などの形で運用上、経済上の大きな損失が発生します。

実際、米国品質協会の試算によると、品質に関するこのような費用は、大多数のメーカーの年間総売上高の 15~20% を占め、大手メーカーになると金額は数十億ドル規模におよびます。

メーカーがより正確に、しかもコスト効率よく製品の品質検証を行えるよう支援するため、Google Cloud は新しい Visual Inspection AI ソリューションを発表いたします。これは Google の誇る最高級の人工知能(AI)とコンピュータ ビジョン テクノロジーを駆使してメーカーのために構築された、生産施設全体で上記の問題を解決するための専用ソリューションです。

既存の外観検査アプローチの問題点

通常、製造プロセスには製品の不具合を視覚的に検査する工程が 1 つ以上組み込まれています。一般的にこの検査工程は大部分が人力で行われ、時間がかかるうえにエラーの可能性も排除できません。これまでの間に、外観検査を機械的に行う装置も開発されてきました。

しかし、これらのアプローチには欠点があります。

  • 人が行う目視検査では、検査員の感覚と経験に頼る部分が大きく、ばらつきは避けられません。

  • 従来型の外観検査装置の場合は事前にプログラム化する必要があるため、柔軟性が乏しく、製品の変更に対応できません。

  • 既存のマシンビジョンでの外観検査は、一度に検出できる不具合の数にきわめて厳しい限界があります。

メーカーは、大量生産の時代からリーン生産方式、シックスシグマ、最近のエンタープライズ リソース プランニングに至るまで、イノベーションとともに成長してきました。人工知能(AI)を活用すると、さらに多くのイノベーションを最前線にもたらすことができます。理論上、AI の使用には複数のメリットがあります。

  • 検査員の感覚に頼る検査が減り、見逃しが減少する

  • プログラミングが不要で、製品の変更にも対応できる

  • 数秒の間に数百もの関心領域を検出できる

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が広がる前は、多くのメーカーが AI あるいは ML ベースの品質検査への投資に十分なビジネス価値を見出しておらず、そうしたプロジェクトは「パイロットの苦行」(いつまでもパイロット段階から脱却できないこと)から抜け出せていませんでした。しかし、Google Cloud の新しい調査(7 か国の 1,000 人を超える製造業の上級幹部を対象に実施)によると、76% がデータと分析、クラウド、AI などのデジタル イネーブラーに目を向けるようになっています。

Visual Inspection AI の概要

Google Cloud Visual Inspection AI ソリューションは一連の AI およびコンピュータ ビジョン テクノロジーを使用して検査タスクを自動化します。メーカーはこれらのテクノロジーを使用して製品不具合の自動検出を行い、品質管理プロセスの変革に役立てることができます。 

Visual Inspection AI は、担当領域の専門知識は豊富に持っているが AI に関する知識は持ち合わせていない、品質、テスト、製造、プロセスのエンジニアのニーズに応えるために開発されました。主要なユースケースを念頭に置き、使いやすさを考慮して設計されているため、このソリューションを使用しているお客様は汎用の機械学習(ML)アプローチをとった場合と比較して、次のようなきわめて大きな成果を上げています。

  • オンプレミスで自律的に運用: 検査モデルをネットワーク エッジやオンプレミスで運用できます。検査は Google Cloud で処理することも、工場内で完全に自律処理させることもできます。

  • 迅速な価値創出: 従来型の機械学習(ML)ソリューションは通常、デプロイ作業に数か月を要しますが、このソリューションは数週間でデプロイできます。プロセスと品質エンジニアを考慮した設計になっているので、コンピュータ ビジョンや ML に関する経験は必要ありません。最初から最後まで、すべての手順をユーザー インターフェースに表示されるインタラクティブなガイドに沿って操作できます。

  • 優れたコンピュータ ビジョンおよび AI テクノロジー: Google Cloud をご利用の複数のお客様が本番環境で行ったテストでは、汎用の機械学習アプローチを使用した場合と比較して、Visual Inspection AI の使用によって正確さが最大で 10 倍も向上しました。超高解像度(最大 1 億ピクセル)の画像を処理でき、Forrester のランキングで業界リーダーとなったコンピュータ ビジョン テクノロジーを使用しているので、きわめて小さな不具合も見逃すことなく検出します。

  • 少ない手間ですばやく開始: Google Cloud をご利用の複数のお客様が実施したパイロット テストでは、Visual Inspection AI を使用した場合、汎用 ML プラットフォームに比べ、最大 300 分の 1 のヒューマンラベリング画像で正確なモデルを構築できました。以前のソリューションでは、不具合ありのパターンと不具合なしのパターンのそれぞれで、コストの高いラベル付き画像が数千枚の単位で必要になります。

  • 異常検出にとどまらない機能: 他の競合ソリューションはシンプルな異常検出しか行いませんが、Visual Inspection AI はディープ ラーニングを活用することによって、1 枚の画像で複数種類の不具合を正確に検出、分類、位置特定するモデルを構築できます。これにより、生産ラインで不具合が検出された場合に、人の操作を必要とすることなく自動でフォローアップ タスクを行うことができます。

  • きわめてスケーラブルなデプロイメント: Visual Inspection AI ソリューションはライン単位から全工場規模までスケールできるので、ML モデルのデプロイとライフサイクル管理を柔軟に行うことができます。

業界でのユースケース

Visual Inspection AI デモで、業界における次のような品質管理の問題を解決するユースケースに、Visual Inspection AI がどのように対応するかをご覧いただけます。

  • 自動車製造: 塗装工場の表面検査、車体工場の溶接シーム検査、プレス工場の検査(引っかき傷、へこみ、ひび割れ、汚れ)、鋳造工場のエンジン ブロック検査(ひび割れ、変形、異常)

  • 半導体製造: ウエハーレベルの異常と欠陥の位置特定、ダイクラック検査、プレプレース検査、SoC パッケージング検査、ボード アセンブリ検査

  • 電子機器製造: プリント基板(PCB)コンポーネント(ネジ、バネ、フォーム、コネクタ、シールドなど)の欠陥または欠落、PCB のはんだ付けと接着(はんだ不足、つらら、シフト、スズの超過など)、製品表面チェック(接着剤のこぼれ、メッシュの変形、引っかき傷、気泡など)

  • 汎用製造: 包装およびラベル検査、布地検査(メッシュ、裂け目、ほつれ)、金属およびプラスチック溶着シーム検査、表面検査

Visual Inspection AI からすでに価値を生み出しているお客様

Foxconn の子会社である FIH Mobile は、スマートフォンや無線通信の製造や修理のサービスを提供する世界的リーダーであり、今年初めに Visual Inspection AI を評価しました。FIH Mobile でシニア アソシエイト マネージャーを務める Sabcat Shih 氏は、次のように述べています。「Google Cloud との提携を通して、革新的な機械学習とコンピュータ ビジョン テクノロジーを当社の品質プロセスに取り入れて本当に良かったと思っています。FIH Mobile のエンジニアは Google Cloud を信頼しており、Google Cloud チームの協力によって製品の大幅な改善を実現しています。広範な PCB 製造業務全体でアセンブリ検査ソリューションをさらに展開するのが待ちきれません。」

ICT ソリューションを提供する京セラコミュニケーションシステム株式会社は、このソリューションを使用することで、AI と ML の専門知識をスケールできました。同社でデジタル ソリューション部門部長を務める秋枝 正治氏は、次のように述べています。「AI エンジニアが不足している中で、Visual Inspection AI は AI エンジニア以外の従業員が利用できる革新的なサービスです。Visual Inspection AI を使用すると、欠陥箇所が写っているわずか 10~20 の画像で非常に正確なモデルを作成できることがわかりました。今後も Google とのパートナーシップを強化して、お客様のデジタル トランスフォーメーション プロジェクトを成功に導くソリューションを開発していきます。」

Visual Inspection AI の使用を開始する

Visual Inspection AI は、メーカーが生産品質管理プロセスを改善するのに役立つ強力なソリューションです。Visual Inspection AI ソリューションの機能とユースケースについて詳しくは、ソリューション ウェブページこちらのデモをご覧ください。 

- Google Cloud Industrial AI プロダクト担当責任者 Mandeep Wariach

- Google Cloud Visual Inspection AI 担当プロダクト マネージャー Thomas Reinbacher
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