データベース向け生成 AI ツールボックスの公開ベータ版を発表
Hamsa Buvaraghan
Product Manager, Google Cloud Databases
Harrison Chase
Co-Founder and CEO, LangChain
※この投稿は米国時間 2025 年 2 月 7 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
このたび、大規模言語モデル(LLM)アプリケーションを構築するデベロッパー向けの主要なオーケストレーション フレームワークである LangChain とのパートナーシップにより、データベース向け生成 AI ツールボックスの公開ベータ版をリリースいたします。
データベース向け生成 AI ツールボックス(以降、ツールボックス)は、アプリケーション デベロッパーが、本番環境レベルでエージェント ベースの生成 AI アプリケーションをデータベースに接続できるようにする、オープンソースのサーバーです。これにより、安全なアクセス、堅牢なオブザーバビリティ、スケーラビリティ、および包括的な管理機能を備え、データベースに対してクエリを実行できる高度な生成 AI ツールの作成、デプロイ、管理が簡素化されます。現在は、セルフ マネージドの PostgreSQL、MySQL に加え、AlloyDB、Spanner、Cloud SQL for Postgres、Cloud SQL for MySQL、Cloud SQL for SQL Server などのマネージド データベースへの接続を提供しています。Google Cloud 以外の他のデータベースからの貢献も歓迎しています。
この投稿では、データベース向け生成 AI ツールボックスの仕組みと始め方について説明します。
生成 AI ツール管理における課題
AI エージェントの構築には、異なるツールやフレームワークを使用し、さまざまなデータソースに接続する必要があります。このプロセスは、特にこれらのツールがデータベースに対してクエリを実行する必要がある場合、デベロッパーにとってさまざまな課題を生み出します。たとえば次のようなものです。
-
ツール管理のスケーリング: 現在のツール統合のアプローチでは、各ツールごとに複数の場所で、広範囲にわたる繰り返しのコードや修正が必要になることが多くあります。この複雑さは、特にツールが複数のエージェントやサービス間で共有される場合に整合性を妨げます。ツール管理を簡素化し、エージェントやアプリケーション全体で整合性を確保するためには、より効率的なフレームワーク統合が必要です。
-
複雑なデータベース接続: データベースは、大規模に最適なパフォーマンスを発揮するために、構成、接続プーリング、キャッシュ保存を必要とします。
-
セキュリティの脆弱性: 生成 AI モデルからの機密データへの安全なアクセスを確保するには、認証サービス、データベース、アプリケーションとの複雑な統合が必要であり、これはエラーが発生しやすく、セキュリティ リスクを招く可能性があります。
-
柔軟性のないツールの更新: 新しいツールの追加や既存のツールの更新には、多くの場合アプリケーションの完全な再構築と再デプロイが必要となり、それによってダウンタイムが発生する可能性があります。
-
限定的なワークフローのオブザーバビリティ: 現在のソリューションには、包括的なモニタリングやトラブルシューティングのための組み込みサポートが不足しており、データベースを使用する生成 AI ワークフローの詳細な把握が困難です。
コンポーネント
データベース向け生成 AI ツールボックスは、生成 AI ツールとデータの相互作用を改善し、生成 AI ツールの管理における一般的な課題に対処します。アプリケーションのオーケストレーション層とデータソース / データベース間の仲介役として機能することにより、より迅速な開発とより安全なデータアクセスを可能にし、ツールの本番環境品質を向上させます。
ツールボックスは 2 つのコンポーネントで構成されています。アプリケーションで使用するツールを指定するサーバーと、このサーバーとやり取りしてこれらのツールをオーケストレーション フレームワークに読み込むクライアントです。これにより、ツールのデプロイと更新が一元化され、デフォルトで組み込まれた本番環境向けベスト プラクティスを活用することで、パフォーマンスとセキュリティが向上し、デプロイが簡素化されます。
![https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/1_R0NlsQS.max-1800x1800.jpg](https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/1_R0NlsQS.max-1800x1800.jpg)
![https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/1_R0NlsQS.max-1800x1800.jpg](https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/1_R0NlsQS.max-1800x1800.jpg)
利点
ツールボックスは、AI エージェントの管理、セキュリティ、オブザーバビリティを向上させるさまざまな機能を提供します。アプリケーション デベロッパーにとっての利点として次のようなものがあります。
-
簡素化された開発 - ボイラープレート コードの削減と統合されたインテグレーションにより、ツールの開発と、他のエージェントとの共有が簡素化されます。
-
組み込みのパフォーマンスとスケーラビリティ - 一般的なデータベース向けに最適化されたコネクタと組み込みの接続プーリングにより、接続管理の効率が向上します。
-
ゼロ ダウンタイム デプロイ - 構成主導型のアプローチにより、新しいツールや更新をサービスの中断なしでシームレスにデプロイでき、段階的なロールアウトをサポートします。
-
強化されたセキュリティ - Oauth2 と ODIC を使用し、組み込みの一般的な認証プロバイダ対応サポートにより、エージェントのツールやデータへのアクセスを制御できます。
-
エンドツーエンドのオブザーバビリティ - ツールボックスは、OpenTelemetry と統合されており、ロギング、指標、トレーシングを通じて初日から分析情報を提供し、エンドツーエンドのオブザーバビリティを実現することで、より優れた運用を可能にします。
LangChain との互換性
LangChain は、LLM アプリケーションの構築において最も人気のあるデベロッパー向けフレームワークであり、ツールボックスが初日から LangChain エコシステムと互換性を持つことを発表できることを嬉しく思います。ツールボックスと組み合わせることで、LangGraph は Vertex AI の Gemini などの LLM を活用し、パワフルなエージェント型ワークフローを構築できます。
LangGraph は、LLM を活用したステートフルなマルチアクター アプリケーションを構築するためのフレームワークを提供することで、LangChain の機能を拡張します。サイクル、状態管理、コーディネーションのサポートにより、複雑で動的な AI エージェントの開発が可能になります。これらすべての機能は、ツールボックスとシームレスに統合されます。
ツールの呼び出しは、エージェントの構築に必要不可欠です。エージェントは、ツールを制御された指定通りの方法で呼び出し、確実に実行し、その後、適切なコンテキストを LLM に返す必要があります。LangGraph は、ツールの呼び出し方法やその応答の統合方法を管理するための、細かい制御が可能なエージェント フレームワークを提供し、高い精度と制御性を実現します。その後、ツールボックスが実行を処理し、ツールをシームレスに動作させて結果を返します。この 2 つを組み合わせることで、エージェント ワークフローにおけるツールの呼び出しを支援するパワフルなソリューションが実現します。
LangChain の CEO、Harrison Chase 氏は次のように言っています。「データベース向け生成 AI ツールボックスと LangChain エコシステムの統合は、すべてのデベロッパーにとって大きなメリットとなります。」「特に、ツールボックスと LangGraph の緊密な統合により、デベロッパーはこれまで以上に信頼性の高いエージェントを構築できるようになります。」
データベース向け生成 AI ツールボックスの利用を開始する
データベース向け生成 AI ツールボックスは、ライフサイクル全体を自動化し、生成 AI ツールの開発とデプロイを簡素化します。以下は、ご利用開始に役立つリソースです。
-
クイックスタート - Vertex AI の Gemini を使ってツールボックスで LangGraph エージェントを実行する方法。
-Google Cloud データベース、プロダクト マネージャー Hamsa Buvaraghan
-LangChain、共同創業者 / CEO Harrison Chase 氏