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AI & 機械学習

バイオマスと Google Cloud の AI が実現する「自己修復する道路」の可能性

2025年2月6日
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Iain Burgess

Director, Public Sector UK, Google Cloud

研究チームはバイオマスと Google Cloud の AI 技術を活用し、自己修復が可能な新型アスファルトを開発しました。この革新的な技術により、耐久性が高く持続可能な道路を実現し、英国が抱える道路のポットホール問題の解決を目指しています。

*この投稿は米国時間 2025 年 2 月 5 日に Keyword に投稿されたものの抄訳です。

英国は深刻な道路のポットホール問題を抱えており、修理費用は年間数百万ポンドにのぼり、ドライバーの悩みの種となっています。しかし、Google Cloud の AI を活用した画期的な研究により、バイオマス廃棄物から作る自己修復道路という解決策が見えてきました。

英国の キングスカレッジ ロンドンスウォンジー大学の研究チームは、チリの科学者たちと共同で、時間の経過とともに自らのひび割れを修復できる新型のアスファルトを開発しま

した。これにより、人の手によるメンテナンスが不要になります。この革新的な材料は自然界からインスピレーションを得ており、樹木や一部の動物が持つ自己修復能力を模倣しています。研究チームはこの再生能力をアスファルトで再現し、より耐久性が高く持続可能な道路の実現をを目指しています。

英国では建設および維持管理用のアスファルトを年間 2,000 万トン以上も生産しています。同業界は食品廃棄物などのリサイクル材料を活用することで持続可能性の向上に取り組んでいますが、ひび割れやポットホールの問題は解決されていません。

AI が切り開く新時代

ひび割れの正確な原因は完全には解明されていませんが、多くの場合はアスファルト混合物に使用される粘着性の黒い物質、ビチューメンが酸化により硬化し、発生すると考えられています。科学者たちは、この過程を研究し、これを逆転させてアスファルトを効果的に「縫い合わせる」方法の開発に取り組んでいます。

研究室での実験では、新開発のアスファルト材料が 1 時間以内にマイクロクラック(微細なひび割れ)を修復できることが実証されました。この自己修復プロセスは、天然の胞子マイクロカプセルと廃棄物由来の若返り剤によって促進されます。

研究チームは AI を支える技術の一つである機械学習を使用して、ビチューメンのような複雑な流体中の有機分子を研究しました。そして、原子レベルのシミュレーションを加速させる新しいデータ駆動モデルを開発し、ビチューメンの酸化とひび割れ形成に関する研究を進展させました。このアプローチは従来の計算モデルと比べて、はるかに高速でコスト効率に優れています。さらに、研究チームは Google Cloud と協力し、創薬に使われる技術と同様の手法で、化学的性質を特定し、特定の目的に合わせて設計された仮想分子を作成できるツールを開発しました。

2022 年に Google Cloud のリサーチ イノベーターズ プログラムに参加した計算化学の専門家、キングスカレッジ ロンドンの Francisco Martin-Martinez 博士もこのプロジェクトに携わりました。博士は、自然界の自己修復能力を模倣することで道路の寿命を延ばし、より持続可能で耐久性の高い道路インフラへの道が開けると指摘しています。これは、自己修復舗装の迅速な開発を可能にした Google Cloud の AI ツール により実現しています。

2024 年に権威ある国際材料構造試験研究機関連合(RILEM)の Robert L’Hermite 賞を受賞したスウォンジー大学の自己修復アスファルト専門家 Jose Norambuena-Contreras 博士は、この研究が耐久性を向上させたネットゼロ アスファルト道路の開発に大きく貢献すると評価しています。

現在も開発が続く自己修復アスファルトは、世界のインフラの改善と持続可能性の促進に大きな可能性を秘めています。このイノベーションは、英国政府が掲げるネットゼロ排出目標に沿うものであり、道路維持管理にかかる莫大な財政負担の軽減にも貢献します。修理の必要性を減らし、道路の寿命を延ばすことで、自己修復アスファルトは英国が抱える道路のポットホール問題に対する、費用対効果が高く環境にも優しい解決策となる可能性を秘めています。

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