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Inside Google Cloud

ビジネスを加速させる Google 流プロダクト管理術

2025年1月28日
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Deepti Kamat

Product Management Consultant, Google Cloud

Tom Abraham

Product Manager, Google Cloud

Google では、ユーザーのニーズ、データドリブンな意思決定、迅速なイテレーション、そして共同開発を重視して、商品開発を行っています。これらの基本理念を取り入れることで、企業はイノベーションを促進し、開発速度を向上させ、成長を実現することができます。

※この投稿は米国時間 2024年 12 月 11 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

過去 30 年以上にわたり、Google はさまざまなビジネス分野で市場に大きな影響をもたらしました。たとえば、Google の 9 つのプロダクトがそれぞれ 10 億人以上のユーザーの獲得を達成しています。この成長は、ユーザーのニーズを理解し、それに応えたいという強い意志、データドリブンな意思決定への徹底した取り組み、そして現場に最も近い人々から新しいアイデアを引き出すボトムアップ型の自律性とイノベーションの文化の賜物です。

Google には専任のプロダクト マネージャーが多数いますが、すべての担当者がプロダクト管理に責任を負っています。プロダクト管理の本質は、優先順位を付けることです。つまり、チームを導き、具体的かつ意味のあるユーザーの課題を解決できるように、明確な目標を定めることです。このアプローチが効果的であることは、Google のプロダクトが証明しています。たとえば、ユーザー中心のアプローチから生まれた Gmail はメールの受信トレイを検索の問題として捉え、Google 翻訳は初期インターネットの言語の壁を排除しました。

しかし、プロダクト管理が常にスムーズに進むとは限りません。課題を乗り越えることこそ、プロダクト管理の重要な側面です。Google では、プロダクトを継続的な実験と捉え、常に進化させ、適応させていくものだと考えています。すべての実験が成功するわけではありません。愛され続けてきたプロダクトをサービス終了とする際の慎重なアプローチや、過失を責めない事後分析の文化への確固たるコミットメントが必要となります。

この手法は、消費者向けのテクノロジー プロダクトだけに特化するものではありません。Google はこの手法を通じて、皆様が組織内で価値を最大化し、成長を加速できるよう支援します。Google Cloud コンサルティングには、テクノロジーおよびビジネスの最も意欲的な目標を達成できるように皆様を支援する、専任のデルタチームが存在します。

このチームは、同様のアプローチを活用し、皆様とともに新しいプロダクトやサービスの商品開発に取り組んでいます。Google は、Google が実践している手法を学べるよう支援することが非常に重要であると考えています。そうすることで、開発速度や士気が向上するだけでなく、クラウドの技術やサービスが組織にもたらす利点を最大限に活用することが可能になります。

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このブログでは、Google が皆様とともに取り組む中で得た重要な学びを共有し、Google のプロダクト管理のアプローチをビジネスのさまざまな場面に適用することで、優れたプロダクトをより迅速に構築する方法をご紹介します。

Google におけるプロダクト管理アプローチの主要原則

  • ユーザー重視: ユーザーのニーズを優先し、ユーザーの目標や課題を理解する。
  • データドリブン: データと分析を活用し、情報に基づいた意思決定を行う。
  • 迅速なイテレーション: プロトタイプを作成、テストを実施し、フィードバックを収集して、プロダクトを改善する。
  • 効果的なコラボレーション: プロダクト開発におけるチームワークと部門横断的な連携を促進する。

Google のプロダクト管理アプローチをビジネスに適用する

この 4 つのシンプルかつ基本的な原則により、Google の各チームは 10 倍の目標を設定し、それに向かって段階的に前進することで、継続的にロードマップを強化し、新しい情報に基づいて目標を調整しています。行動重視の考え方は、初期のプロトタイプやリリースが必ずしも完全なものではないことを意味しますが、この考え方は、現実の環境で仮説を検証し、ユーザーとともにプロダクトを進化させ、必要に応じて軌道修正する機会を生み出します。

これらのシンプルな原則が Google でどのように実践されているのか、そしてご自身の壮大な目標を達成するために、これらの原則をビジネスにどのように適用できるのかを見ていきましょう。

  1. ユーザーを重視する(そうすれば、他のすべては後からついてくる)

Google のプロダクト管理哲学の基盤は、ユーザー重視を徹底することです。ユーザーがワクワクし、進んで使いたくなるプロダクトを作るには、ユーザーのニーズ、要望、願望を深く理解する必要があります。

Google では、ソリューションの考案、構築、テストにおいて、ユーザーを常に中心に据え、早い段階から頻繁にフィードバックを得るようにしています。Google は、ペルソナやクリティカル ユーザー ジャーニーを定義するための基礎研究と、イテレーションによりユーザーの目標を達成できているかどうかを知るための評価調査を実施しています。

「ユーザー」は、消費者向けプロダクトのエンドユーザーだけでなく、さまざまな人々を指す場合があります。たとえば、プラットフォームや API を利用する外部のデベロッパー、内部向けプロダクトを使用する従業員、上層部の関係者がユーザーとなることもあります。

まずは、ユーザー エクスペリエンス(UX)リサーチを実施し、ユーザーの要望、ニーズ、目標、動機を明確にすることから始めることをおすすめします。これにより、ユーザーの本当の問題を解決することができます。次に、ターゲット オーディエンスのさまざまなセグメントを代表する明確なユーザー ペルソナを作成し、プロダクト開発の取り組みにおいて、常にユーザーのニーズを最優先します。最後に、リリースよりもランディングに重点を置きます。優れたプロダクトに完成はありません。プロダクトをより早く実際のユーザーに届けることで、より迅速に課題を見極めて改良し、本当の価値を提供することが可能になります。

2. 意見ではなくデータでリードする

データドリブンな意思決定は、Google のプロダクト管理アプローチのもう一つの重要な原則です。プロダクト マネージャーは、チームの時間の使い方を厳格に優先順位付けし、ロードマップを通じて成果を上げる必要があります。データがなければ、意思決定は意見や個人的な偏見に基づくものとなり、最終的にチームを誤った方向に導く可能性があります。

Google では、ユーザビリティ調査、アンケート、シャドーイング、ログ分析など、さまざまな評価調査手法を活用しています。これらの手法は、より多くの情報に基づいた意思決定やリスク低減のための定量的データの収集に役立つだけでなく、ユーザーへの共感を深め、ユーザーを理解し、将来のプロダクト ニーズを特定するためのメンタルモデルを開発するのにも役立ちます。特にユーザーデータが関わる場合は、どのプロダクト チームも無制限かつ包括的にデータにアクセスできるわけではありません。そのため、プロダクト管理を成功させるには、利用可能なデータを活用してインサイトを獲得し、それをプロダクトのロードマップやビジョンにつなげる能力が求められます。

同時に、プロダクト マネージャーはデータのバイアスを避けるために、細心の注意を払う必要があります。バイアスは、不正確な結論や不公平な結果を招き、有害なステレオタイプを固定化させる可能性があります。そのため、定量データだけを情報源にすることはできません。自身のチームで提供するサービスについて有益なインサイトを得るには、ライブテストを活用することをおすすめします。また、サービスを自ら試してみることも忘れないでください。

3. (不安に感じても)迅速にイテレーションを実施する

リリースには不安がつきものですし、プロダクトが完璧になるまで改良を続けたいと思うのは自然なことです。しかし、リリースすれは、ユーザーからのフィードバックを得て、ユーザーにプロダクトが進化する方向を定めてもらうことができます。このアプローチは、イノベーションとアジリティを促進し、より良いプロダクト、リスクの低減、より迅速な市場参入につながります。

プロダクト マネージャーは、優先順位、機能、イテレーション、ターゲットとなるユーザー ジャーニー、UX とエンジニアリングの複雑性、ビジネスモデル、価格設定アプローチ、そして全体的な戦略目標について、常に意思決定を主導します。これらを互いに比較することは容易ではなく、指標だけでは限界があります。真に強力な「プロダクト センス」を培うには、チームがプロダクトを隅々まで理解し、ユーザーから継続的にフィードバックを得て、ニーズに応じた設計を行う必要があります。

スピーディな実行は、容易なことではありません。迅速なイテレーションは、徹底した優先順位付けの結果です。すべてが P0(最優先事項)であれば、すべてが P0 ではなくなり、何も進まなくなります。だからといって、不要なリスクを取るべきではありません。たとえば Google のリリース プロセスでは、迅速に進めることが無謀に進めることにならないよう、法務、倫理、アクセシビリティ、技術のチームによるレビューを必須としています。

4. オープンにコラボレーションし、自律性を受け入れる

プロダクト開発では、UX、エンジニアリング、ビジネス、その他のチームが共通のロードマップに向けて協力することが求められます。どのチームも、単独ではユーザーに感動を届けることはできません。卓越したユーザー エクスペリエンスを提供するためには、プロダクト開発において、部門横断的な連携を伴った協力的なアプローチが必要不可欠です。部門横断的な連携は、明確なコミュニケーション、オーナーシップの共有、チーム内およびチーム間の信頼と尊重によって支えられています。Google のプロダクト チームは、これを実現するために、コラボレーションを第一に考え設計されたツールを活用しています。これらのツールは、 Google Workspace のようなプロダクトに対するアプローチを定義するものです。

Google のオープンなコミュニケーション文化は、過失を責めない事後分析を促進し、失敗からの学びとアイデアの共有を推進しています。成功するプロダクト マネージャーは、影響力と共感を持ってチームを導き、同僚から学び、部門横断型のチームの連携をはかりながら、難しい意思決定を行います。加えて、個々のチームに自主性を持たせることも重要です。他のプロダクト チームや部門横断的なグループと協力することが、新しい独創的なアイデアを生むこともあります。しかし、「船頭多くして船山に上る」の状況に陥るリスクもあるのです。コラボレーションを成功させるには、チーム間の深い信頼、意思決定を行う権限、対立の発生時に相手の意図をポジティブに捉える姿勢が必要不可欠です。それによって、プロジェクトを前進させることができるのです。

結論として、Google のプロダクト管理アプローチは、競争の激しい今日のビジネス環境において成長を促進する有益な枠組みとなり得ます。医療、旅行、自動車、エンターテインメントなど、業界をまたぎ、複数の企業がこのアプローチを採用し、成功を収めています。まずは、ご自身の企業が直面した課題を振り返ることから始めてみてください。これら 4 つの原則が課題の解決に役立った可能性はあったのではないでしょうか。そう感じる点があったなら、次回以降にこのアプローチを取り入れることを検討し、Google Cloud コンサルティングやデルタチームが皆様の目標達成をどのようにサポートできるのかについて、Google のサービスをチェックしてみてください。

-Google Cloud プロダクト管理コンサルタント Deepti Kamat
-Google Cloud プロダクト マネージャー Tom Abraham

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