ダークデータを明るいインサイトへ: AI エージェントがデータをシンプルに

Yasmeen Ahmad
Managing Director, Data Cloud, Google Cloud
AI エージェントは、企業が一部のデータだけでなく、すべてのデータを簡単に理解し活用することを可能にし、より良い意思決定と新たな機会の獲得につながっています。
※この投稿は米国時間 2025 年 2 月 21 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
知識豊富な同僚に質問するように、組織のすべてのデータ(ドキュメント、スプレッドシート、メール、画像、動画など)と簡単に会話できると想像してみてください。これは、もはや SF の世界の話ではありません。現在、企業の多くはデータの 10% しか活用できていません。AI エージェントは、構造化されていない残りの 90% のデータを解放しようとしています。これは、組織が現在アクセスできていないデータを活用して AI を強化する絶好の機会です。
それを実現するための課題は、ドキュメントや画像、音声ファイルなどに眠ったままアクセスされずにいる 90% のデータだけでなく、利用可能な 10% のデータについても、分析と解釈を行うデータの専門家が不足していることです。これはデータドリブンな意思決定における大きなボトルネックとなっていましたが、この問題は解消されようとしています。
それを実現するのが、AI エージェントというブレークスルーです。一般的な会話をするだけの汎用言語モデルとは異なり、目的に特化して作られた AI エージェントは、専門的な機能とデータシステムへの密接な統合を兼ね備えています。データ環境を自律的に探索し、ビジネスのコンテキストを理解したうえで、ユーザーが望むワークフローに基づいて、必要な分析情報を直接ユーザーに提供します。データに関する専門知識は必要ありません。
まるで眠らないデータ アナリストがいるようなものです。質問があれば、希少なデータ専門人材を呼ぶ代わりに、データ エージェントに質問できます。エージェントは専門家と同じように、ユーザーが何を求めているかを理解し、分析を行い、わかりやすい形で結果を返します。
企業におけるデータの進化
ここまでの道のりは特筆すべきものでした。私たちは、データがシンプルで限られていた、原始時代ともいえる時代からスタートしました。ほとんどの企業は、ビジネスに関する既知の質問に答えるように設定された、スプレッドシートやデータベース内の基本的な構造化された情報に頼っていました。管理こそ容易でしたが、こうしたデータからは潜在的に取得可能な分析情報のほんの一部しか得られません。
その後、データの量と複雑さが爆発的に増加した「ビッグデータ」の時代が到来します。組織は精巧なデータ ウェアハウスとデータレイクを構築して膨大な量の情報を蓄積しました。熟練したエキスパートがそのデータを価値あるものに変換してくれることを期待しましたが、実際には、データに埋もれ、そこから分析情報を得ることが困難な状況に陥りました。
そして今、私たちはマルチモーダル データをシンプルにする時代を迎えています。あらゆる種類のデータがキャプチャされ、動画、音声、スピーチ、テキスト、PDF などを通じて、世界を見たり、聞いたり、感じたりできるようになります。マルチモーダル データの時代は、マルチモーダル生成 AI によって支えられています。生成 AI がもたらすツールにより、この多様なデータセットを活用して、私たちを取り巻く世界を真に表現する分析情報が得られます。
現実世界への影響
こうした進化は理論上の話に聞こえるかもしれませんが、すでにさまざまな業界のビジネスに実質的な影響を与えています。たとえば、Volkswagen Group of America の myVW Virtual Assistant は、技術マニュアル、よくある質問、視覚データを精査し、自然な会話を通じてドライバーが問題を診断できるようにサポートします。これはただのチャットボットではありません。さまざまな種類の車両データの関係を理解し、警告灯からメンテナンス スケジュールまですべてを解釈できる特殊なシステムです。
HCA Healthcare でも、優れた活用例が示されています。医療記録から画像データ、研究論文に至るまで、多様な医療情報を AI エージェントを通じて統合することで、医療現場で臨床医に適切なインサイトを提供するシステムを構築したのです。これは効率を上げるだけでなく、広範なデータアクセスを通じて医療上の判断を改善することにもつながります。
ダッシュボードの制約からの解放
従来のダッシュボードはこれまで役立ってきましたが、もはや十分ではありません。ダッシュボードは企業データへの主要な掲示板として使われてきましたが、現実は厳しいものがあります。多くの組織には、一度だけ使用されて忘れ去られた、使われていないまたは古くなったダッシュボードが数多く存在します。もっと良い方法が必要です。
ここで真価を発揮するのが AI エージェントです。ビジネス ユーザーは複雑なダッシュボードを操作したり、アナリストのサポートを待ったりする必要はありません。AI エージェントが、メール、チャット、ビジネス アプリケーションなど、既存のワークフロー内で直接分析情報を提供します。ビジネス ユーザーは、指標が事前に定義された静的なダッシュボードを確認する必要はありません。別のツールに切り替えて情報を自分のコンテキストに翻訳し直さなくても、コンテキストに合った情報が自動的に手に入ります。
データが生み出す価値のフライホイール
ここからが非常に興味深い部分です。組織が多様なデータシグナルをまとめ、チーム全体で利用できるようにすると、それまでは見えなかった隠れたパターンを発見することがよくあります。こうした分析情報により、より優れたサービスとカスタマー エクスペリエンスを構築できます。その結果、さらに多くのデータシグナルが生成され、「リアルタイムなデータ フライホイール」と呼べるものが形成されます。
データドリブンな価値創出の本質は、驚くほどシンプルです。まとめるデータシグナルが多ければ多いほど、データの隠れたパターンを見つけやすくなります。そして、発見されたパターンを活用してより優れたサービスとモデルを構築すれば、さらに多くのデータが生成され、継続的な改善のサイクルを実現できます。
これから重要になるのは、ビッグデータではなく「ワイドデータ」です。顧客データ、販売データ、サービスデータ、ソーシャル メディア データを統合されたレコードにまとめることで、サイロ化されたシステムでは見えなかったパターンを発見できるということに、先進的な組織は気づき始めています。こうした分析情報によって新しいサービスやイノベーションが生み出され、改善の好循環が絶えず促進されることになります。
今後の対応
データリーダーは今こそ行動を起こすべきです。AI エージェントは、単に既存のプロセスを効率化するだけでなく、組織全体のデータアクセスを民主化します。これにより、専門のデータチームに依存して分析情報を得るのではなく、すべての従業員が組織のデータと有意義な対話を行えるようになります。そして、これまで眠っていた 90% のデータを活用できる AI エージェントの力により、こうした対話からまったく新たな可能性が開かれるのです。
問題は、この変化を受け入れるべきかどうかではなく、どれだけ早く行動を起こせるかです。AI エージェントのアクセシビリティと統合データ プラットフォームの機能を組み合わせることで、ダークデータを明るいインサイトに変換できます。そのインサイトを活用すれば、お客様のビジネスにかつてないほどの価値がもたらされます。
-データ分析担当マネージング ディレクター、Yasmeen Ahmad



