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エグゼクティブが考える「AI 投資対効果を最大化させる方法」

2023年11月13日
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Google Cloud Japan Team

Economist Impact の新しい調査では、AI とビジネス戦略の連携、従業員の支援、適切な関係者の関与などの優先事項の重要性が強調されています

※この投稿は米国時間 2023 年 10月 5 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

この 1 年間に巻き起こった生成 AI ブームにより、AI で何ができるようになるのかが誰にでも理解できるようになりました。あるレポートでは、生成 AI によるその他の AI テクノロジーへの全体的な影響は 40% も増加する可能性があることが推測されています。

組織がクラウド上でデータと AI の成熟度を高め続ける中、新しい生成 AI 機能やユースケースへ投資することは、幅広い変革の取り組みにおいて AI 戦略を強化するまたとない機会になります。

問題は、これらの投資に対して期待どおりの収益が得られるかどうかです。

新しいテクノロジーが登場するたびに、競争力を高め、変革をもたらし、競争上の優位性を獲得できるといった過剰な期待をされることがあります。しかし、デジタル トランスフォーメーションへの投資から 10 年で実現されたメリットは、多くの場合、実際には魔法と言えるほどのものではありません。2022 年の McKinsey の調査によると、組織が最近のデジタル投資で得られた効果は予想されたもののわずか 3 分の 1 にすぎません。

マクロ経済環境の変化に伴い、新たな次元での不確かさが生じており、テクノロジーへの投資や導入を最初から適切に行うことがかつてないほど困難になっています。AI のみに限らず、テクノロジーの導入が成功するかどうかは、ビジネス戦略に沿った導入の意思決定ができるかどうかに大きく左右されます。

参照: Economist Impact と Google Cloud の新しいグローバル調査

このレポートは、4 大陸および主要産業分野にまたがる、数百人におよぶビジネス リーダーへのインタビューに基づいて作成されたもので、AI 導入の成功を妨げる最も一般的な問題を浮き彫りにし、AI テクノロジー投資の価値を最大化するための 5 つの戦略的提言をまとめています。

1. 多くの場合、投資は ROI の限られたイメージに基づいて評価される

投資の ROI を把握するには、テクノロジーのパフォーマンスを評価することが重要です。ところが、Economist Impact によると、テクノロジーのパフォーマンス評価では、テクノロジーのパフォーマンスの全体的な視点が得られることは稀です。世界中の組織の約 87% がテクノロジーのレビューを実施していますが、多くの場合、テクノロジーの定性的な利点を活用することができないツールに依存していると報告されています。

たとえば、費用便益分析(Cost Benefit Analysis )は、テクノロジーを評価する最も一般的なツールで、あらゆる地域で使用されています。しかし、AI 自動化によるイノベーションへの取り組みに向けたリソースの再配分など、ケースによっては単純に金銭的価値として表せないものもあります。定量的データと定性的データの両方を提供するツールを組み込んでいないと、テクノロジーの影響に関するデータから不正確な結論を導き出したり、実装や導入において文化的な障壁となるものを見落としたりする可能性があります。

推奨事項: 多面的な評価(例: 費用便益分析、遠隔測定、ユーザー調査など)から、AI テクノロジー投資の全ての費用とメリットを把握できるようにします。言い換えれば、実装データはもちろん不可欠ですが、ユーザーのフィードバックを収集して、組織のさまざまな状況の中でテクノロジーがどのように機能しているかを把握することも必要です。

2. IT 投資がビジネス戦略にあっていない

テクノロジーへの投資の価値を最大化するには、IT 投資をテクノロジー戦略とビジネス戦略の両方に適合させた上でテクノロジーを購入することが重要になります。ところが、Economist Impact の調査では、IT 投資の多くが特定のビジネス目標の達成に役立っておらず、導入の意思決定と全体的な戦略の間に乖離があることが示唆されています。ビジネス リーダーの大半(85%)が、顧客の需要の高まりに対応するために新しいテクノロジーに投資していると回答していますが、67% はそうした投資に苦慮しているとも回答しています。

テクノロジー戦略は、より大きなビジネス目標の達成に貢献することではじめて価値を生み出します。ビジネス プロセスをどのように改善できるのか、または既存のテクノロジーの利用を支援できるのかを、事前に検討せずに AI テクノロジー ソリューションへの投資を決定しても、限定的な投資効果しか得られず、リソースを無駄に費やす可能性があります。

推奨事項: ビジネス目標に対する、既存の技術スタックのギャップ分析やニーズ評価を行い、新しい AI テクノロジーへの投資が、合意された目標の達成とビジネス戦略の推進に実際に役立つかどうかを確認します。理想的には、技術リーダーと非技術リーダーの双方が部門を超えて連携し、組織内に存在するニーズとギャップすべてを確実に分析できるようにすることをおすすめします。

3. テクノロジーに関する意思決定が必ずしも適切な担当によって行われているとは限らない

意思決定プロセスにおいて、テクノロジーを日々使用している従業員からのインプットが不足している傾向があり、そのため失敗のリスクが高まります。この調査では、テクノロジーの導入プロセスは主に経営幹部が先導し、多くの場合、新しいテクノロジーの必要性を提案するのは、は、CTO(33%)、CEO(29%)、CIO(26%)であることが指摘されています。

その結果、新しいテクノロジーを提案し選定するために、トップダウンの場当たり的なアプローチが取られて、従業員のスキルアップにかかる費用やテクノロジーが日常業務でどう機能するかという観点など、実装の重要な側面がほとんど考慮されていません。従業員や顧客が何を必要としているのかわからないまま、現在のビジネス課題を解決するための最適なソリューションなど選べるはずもありません。

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生成 AI の時代が到来

戦略立案者と、影響を受ける従業員の双方を、意思決定プロセスに参加させることで、戦略目標の達成に役立つ新しい AI ソリューションに確実に投資できるようになり、導入後の賛同率や普及率も向上します。

推奨事項: 意見やフィードバックを共有するための標準化された実践手順を含む、 正式な意思決定プロセスを構築します。最も効果的なテクノロジー プロセスには、新しい AI テクノロジーへの投資の計画、選択、展開において、導入時に技術的役割のある従業員と管理的役割のある従業員の両方、さらに顧客視点を持つ従業員または戦略的志向の高い従業員を関与させます。

4. テクノロジーの導入にトレーニングやフィードバックが必要になることはほとんどない

結局のところ、新たに採用されたテクノロジーは、その実装がうまくいってこそ意味のあるものです。Economist Impact によると、多くの組織は従業員の懸念への対処や、トレーニングを重視することを怠り、機会を逃しています。調査によると、テクノロジーの導入における最大の課題の一つが、テクノロジーの使用方法に関する従業員の知識の欠如(31%)であり、最高責任者の 36% は、新しいテクノロジーに対する従業員の抵抗感が成功を妨げる最大の障壁だと感じています。

興味深いことに、この結果では、内部のフィードバック プロセスや従業員のトレーニング プログラムを組み込むことの価値が実証されているにもかかわらず、世界中の組織の大多数が、まだそれらを必要としていないこともわかりました。回答者の約 3 分の 2 は、テクノロジーの導入においてトレーニングや従業員のサポートは必要ないと答えています。そして、フィードバック プロセスを積極的に組み込んでいると回答したのは、 4 分の 1 未満でした。

推奨事項: AI 導入のメリットを明確に伝え、従業員と上司の両方に的を絞ったトレーニングとフィードバックを共有する機会を提供します。AI を導入する際には透明性が特に重要になります。特に、職を失う可能性への不安から従業員の抵抗が起こりやすい AI を導入する際には、透明性が極めて重要になります。


この記事に記載されている見解は、著者の見解です。これは Economist Impact が作成した調査データを参照しての独自の分析であり、Economist Impact の見解を反映するものではありません。

CxO の 36% が、新しいテクノロジーに対する従業員の抵抗が成功を妨げる最大の障壁となっていると感じています。AI 導入のメリットを明確に伝え、的を絞ったトレーニングとフィードバックを共有する機会を提供しましょう

5. プロジェクト マネジメントとチェンジ マネジメントがベスト プラクティスに基づいていない

一般的に、より複雑で、相互に関連し合うテクノロジー導入プロジェクトほど、主たる目的や期待していた成果を達成できない確率が高まります。しかし、Economist Impact の調査では、地域、業界、規模に関係なく、多くの企業は新しいテクノロジーを導入する際にプロジェクト マネジメントのベスト プラクティスを適用できていないことが多いと指摘しています。

回答者の半数以上は、プロジェクトの実装に最もよく関与するのは中間管理職だが、実装方法やフィードバック ツールについてはそのような標準がないと述べています。アジャイルなアプローチ(25%)、マイルストーン ベースのステージゲート法(22%)の使用や、サードパーティのテスト(12%)の使用を挙げた組織もありましたが、そのいずれも相互に排他的ではありませんでした。

ベスト プラクティスを使用して実装要件を標準化できないと、従業員の満足度など、成功に寄与する他の重要な要素にも影響する可能性があります。調査によると、従業員の満足度は、ビジネス レジリエンスの最も重要な指標であることがわかっています。つまり、新しいテクノロジーの価値を最大限に実現するためには、実証済みのプロジェクト マネジメント フレームワークでコンピテンシーを獲得することが不可欠になってきていると言えます。

推奨事項: AI 導入の緊急性を鑑みて、成功の可能性を高めるためには、ベスト プラクティスを活用することをおすすめします。アジャイルなフレームワークが必ずしもすべての実装に適しているとは限りません。しかし、大規模なプロジェクトを段階的なステージに分割するというコンセプト全体が、実装の加速や複雑さへの対応、リスクの軽減に役立ちます。

今後の展望

AI の活用がますます進む世界において、現在行っているテクノロジーへの投資は、組織が新しい働き方に確実に対応するための重要な選択の一つです。このようなテクノロジーに関する意思決定の一環として、テクノロジーを全体的な戦略に合わせる方法を理解し、それらを効果的に実装し、投資が自社を前進させているのか、それとも可能性を最大限に発揮することを妨げているのかを把握するための正確な評価を実施することが必要になります。


この記事に記載されている見解は、著者の見解です。これは Economist Impact が作成した調査データの独自の分析であり、Economist Impact の見解を反映するものではありません。

- 寄稿編集者 Alison Jarris

- シニアカスタマー インテリジェンス マネージャー Priya Mathur

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