Forrester による調査: クラウド上の 5G ネットワークに関する業界の見解

Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 7 月 29 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
5G には、革新的なユースケースやレイテンシの短縮、帯域幅の増加、モビリティの加速といった魅力的なメリットがあります。しかし、通信サービス プロバイダ(CSP)にとっては、クラウド上の 5G スタンドアロン(SA)コアへの移行はネットワークの運用に影響を及ぼすだけでなく、市場開拓にも、消費者や企業顧客へのサービス提供にも影響を及ぼします。5G をすでに実装した、あるいは実装しようとしている CSP は、どのようなユースケースをまず優先しており、どのような課題に直面したのでしょうか。また、どのようなメリットを得ているのでしょうか。共有できるベスト プラクティスや、回避すべき問題はあるのでしょうか。幸いなことに、CSP にはこの変革に取り組む仲間がいます。これらの疑問の答えを得るために、Google Cloud、Intel、Nokia は共同で、Forrester Consulting に調査を委託しました。
業界の動向を把握する
まず、クラウド上の 5G スタンドアロン(SA)コアとは何かを明らかにしましょう。クラウド上の 5G SA コアとは、3GPP 5G 標準に基づくコア ネットワーク機能(モビリティ管理、セッション管理、サブスクライバー データ管理、ポリシー管理、メディア ゲートウェイ、請求、シグナリング、分析、スライス管理)を、プライベート / パブリック / ハイブリッド クラウド モデルを含むクラウド コンピューティング アーキテクチャ上で実行することを意味します。
この調査の目的は、CSP が自社の 5G コア ネットワーク機能をクラウド上で実行するにあたって優先したユースケースと直面した課題を詳しく探ることです。この目的を果たすべく、Forrester Consulting は 世界中の CSP の意思決定者 171 人を対象に、クラウド上の 5G SA コアにモダナイズした経験について調査しました。その結果、5G はアクセス スピードを加速する次世代のモバイル ネットワークというだけでなく、新たなユースケースの扉を開き、CSP や企業顧客にメリットをもたらすことがわかりました。
最優先されている 5G のユースケース
クラウド上の 5G SA コアへの移行はさまざまな業界で行われており、その目的はさまざまです。回答者が挙げた上位のユースケースと優先事項は以下のとおりです。


公共事業、産業自動化、自動車: 5G のユースケースをけん引しているのは、産業および公共事業、特にロボット工学と製造ライン自動化における利用です。主にアメリカ大陸を中心に、回答者の約 26% が産業でのユースケース、約 24% が公共事業でのユースケースを最優先していると回答しました。これらの業界では、優れた信頼性と低レイテンシが不可欠だからです。ヨーロッパと中東を拠点とする事業者は、自動車と拡張現実 / バーチャル リアリティ(AR / VR)でのユースケースを最優先していると回答しました。その一方で、最も高度な 5G が展開されているアジア太平洋の回答者は、AR / VR と、リモート動画サポートなどのカスタマー サービスでの利用を最優先していると答えました。
信頼性とスピードを必要とする重要な 5G の機能: 回答者の 34% が、エンドカスタマーの期待に応えるために必要な最も重要な基準として、優れた信頼性、超高速モバイル ブロードバンド、クリティカルなモノのインターネット(IoT)を挙げました。これらは、店舗で高密度センサー使用している小売業界、優れた信頼性が不可欠なヘルスケア業界などで非常に重要です。
全業界に共通する重要なビジネス目標
この調査では、業界を問わず、クラウド上の 5G SA コアへの移行によって幅広いビジネス上のメリットを獲得し、多くの長期的目標に対するサポートを受けられる機会があることも明らかになりました。これらの目標には、デジタル ビジネスへの移行の加速、対応力とアジリティの向上などがあります。調査の回答者は、より堅牢で柔軟なネットワーク インフラストラクチャにより、製品やサービスの差別化と高度なパーソナライズが可能になることをはっきりと認識しています。得られる重要なメリットには、収益の増加、市場の変化への迅速な対応、カスタマー エクスペリエンスの向上などがあります。


レジリエンスの要素も重要視されています。クラウド上の 5G SA コアが目指すのは、モバイル ネットワークのパフォーマンス、安定性、セキュリティの向上を推進するのと同時に、世界中のあらゆる顧客とエンドユーザーが最優先する環境フットプリントの削減を実現することです。環境のサステナビリティに関する問題については、異種混合のレガシー インフラストラクチャを使用するとエネルギー効率が下がることがあります。その一方で、クラウド上の 5G SA コアを使用すれば、CSP はより少ないエネルギー消費量で、より多くのデータを転送できます。
クラウド上の 5G コアへの障壁
他の革新的なテクノロジーと同様に、クラウド上の 5G SA コアに伴う作業は、技術上な移行や実装だけではありません。ネットワーク機能を仮想化またはコンテナ化するだけでは、クラウドに期待される効率性は実現できません。5G を真の意味で活用するにあたり、CSP は技術的なオペレーションを顧客対応のオペレーションと整合させて、革新的なサービスを効果的に市場に投入する必要があります。
主な阻害要因として、従来のオペレーションから自動化された 5G コア ネットワークへの大々的な移行や、クラウドネイティブのアーキテクチャへの移行などがあります。なぜなら、4G がしばらく 5G と共存することになるからです。ユーザー、データ、アプリケーションが相互接続されたネットワーク ハードウェア、ネットワーク ソフトウェア、ネットワーク サービスを効果的に組み合わせて運用するのは、簡単な仕事ではありません。
また、調査では多くの事業者が、自社または企業顧客がクラウド上の 5G コアに移行する準備が 100% できているかどうか確信がないと回答しています。多くの回答者が、技術領域、特にパブリック クラウド内のモバイルコアのクラウドネイティブ ネットワーク機能(CNF)が十分に成熟していないと考えていました。この背景には、フルフィルメント ツール、品質保証ツール、オーケストレーション ツールの運用上の準備に対する懸念があります。


Google Cloud はこれらの課題を強く認識し、通信事業者のエコシステムとの連携に注力してそれらの解決に取り組んできました。2021 年に、Google Cloud は Google Distributed Cloud(GDC)Edge を導入しました。これは、Google の地球規模のインフラストラクチャとサービスを、Google のネットワーク エッジだけではなく、事業者のエッジ、お客様のエッジ、そしてお客様のデータセンターにまで拡大するフルマネージド サービスです。GDC Edge により、CSP は 5G コアおよび無線アクセス ネットワーク機能を必要な場所で実行でき、一貫性のあるクラウドベースのオペレーションを大規模に実現できます。
2022 年には、通信業界のリーダーと提携してプロジェクト Nephio を立ち上げることを発表しました。このプロジェクトは、ネットワーク運用全体で真のクラウドネイティブな自動化を実現するための取り組みです。その目標は、キャリア グレードのクラウドネイティブなインテント ベースの自動化を実現し、ネットワーク機能とクラウド インフラストラクチャの大規模なデプロイと管理を簡素化する共通の自動化テンプレートを提供することです。2023 年の初めには、Nephio における Google Cloud の成果である Telecom Network Automationをリリースし、さらには、クラウド ネットワーキングをモダナイズして Kubernetes の主要機能にするためのソリューション Network Function Optimizer を Google Kubernetes Engine 上でリリースしました。いずれも限定公開プレビュー版でご利用いただけます。
最後に、ゼロトラスト セキュリティ アーキテクチャが技術的な阻害要因になると考える 37% の回答者の懸念に対処するために、GDC Edge では、通信サービスに伴う CSP のセキュリティ要件とデータ プライバシー要件を満たすための機能を導入しています。
エコシステムの力
他の多くの業界のプロバイダと同様に、CSP はパートナーシップの重要性を認識しています。調査によると、技術的なギャップ、スキルのニーズ、複雑さに対処するうえで通信事業者エコシステム内でのパートナーシップが役立つということだけでなく、収益化の機会を促進するためにエコシステムが必要であるということも CSP は認識しています。
ネットワークの複雑さの軽減、技術的な専門知識の提供、スキルギャップを埋めるための知識の移転は、Nokia、Intel、Google Cloud がサポートできます。調査によると、5G の課題を克服するための最も重要なステップは、ネットワーク ベンダー、クラウド プロバイダ、プロフェッショナル サービスを含むパートナーシップによってチェンジ マネジメントを推進し、業界エコシステムのスペシャリスト グループによって主要な顧客セグメントをサポートすることです。


新しいクラウド上の 5G コアへの移行に伴う課題は、克服するだけの価値があるでしょうか?克服すべき課題はありますが、調査で明らかになったように、移行によってもたらされる柔軟性と対応力の向上、ネットワーク レジリエンスの強化といったメリットを考慮すると、変革するうえでの課題に取り組む価値はあります。結論として、CSP がより動的なネットワーク インフラストラクチャのメリットを実現して企業顧客をサポートするには、エコシステムとパートナーシップが不可欠です。
5G の未来に向けた準備はできていますか?詳細については、Forrester Consulting の詳しい調査レポート The Shift to 5G Standalone Core on Cloud をダウンロードしてご確認ください。また、Forrester、Google Cloud、Intel、Nokia のエキスパートをゲストに迎えたパネル ディスカッションもご覧ください。
- 通信分野戦略的グローバル パートナーシップ担当責任者 Don Tirsell
- Nokia、5G コア キャンペーン マーケティング担当責任者 Sharon McTernen 氏