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サステナビリティ

カーボンフリー エネルギーがいつでも使用できることをめざしたタイムリーな進展

2022年3月24日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2022 年 3 月 15 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

2030 年までにグローバルな事業活動全体で 24 時間 365 日カーボンフリーなエネルギーの使用を目指すならば、エネルギー消費量と生産量を追跡するために、より優れたツールが必要であることは明らかです。結局のところ、測定しなければ管理はできません。さらに、既存のクリーン エネルギーを追跡するアプローチは、時間ごとのエネルギー使用量を追跡するようには設計されていません。

Google やその他の企業がカーボンフリー エネルギーの常時使用を目指すなか、エネルギー消費者、運用事業者、行政機関が、すべての電力供給網でどのようなエネルギーが生産、消費、取引されているかを 1 時間単位で正確に把握できる新しいシステムが必要とされています。そのため、Google は昨年、エネルギー追跡に対してよりきめ細かいアプローチを行う新しいツールの試験運用を発表しました。それが、Time-based Energy Attribute Certificates(T-EAC、時間ベースのエネルギー属性証明書)です。

T-EAC の開発が完了し広範囲に導入されると、Google の 24 時間 365 日カーボンフリーという目標達成に貢献するだけでなく、電力供給網におけるカーボンフリー エネルギーの利用可能性に関するこれまでになかった貴重な分析情報を、毎日 1 時間おきに生み出すことになります。この情報は、エネルギー消費者のエネルギー使用に関する理解を深めるとともに、行政機関や運用事業者が脱炭素化を目指して、より迅速で費用対効果の高い戦略を立案するのに役立ちます。また、おそらく最も画期的なのは、最も必要なときにカーボンフリー エネルギーを供給する技術やプロジェクトへの新たな投資を刺激する価格シグナルを作成することであり、これによって電力供給網全体の脱炭素化が加速することになります。

このようなビジョンに触発され、Google はこの 1 年間、T-EAC の開発と導入を進めるために世界中のパートナーとともに取り組んできました。Google 内外での時間単位の証明書の利用拡大、エネルギー データと時間単位でのマッチングを実現するツールやシステムの開発の加速、T-EAC の導入を促進する技術標準の作成など、多くの面での有意義な進展を本日報告できることを嬉しく思います。

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クリーン エネルギーにおける登録機関の動向

T-EAC を推進するうえで最も重要な影響を与えるのが、クリーン エネルギー発電に関連するエネルギー属性証明書(EAC)を作成、追跡、管理する登録機関です。これまでの状況から見て、このような登録機関は時間単位で証明書を発行、追跡することはありませんでしたが、24 時間 365 日カーボンフリー エネルギーに対する需要が高まるにつれ、その状況は変わり始めています。この変化を加速させるために、Google は世界中の登録機関と協力し、エネルギー属性をより詳細に追跡する新しいプロダクトやサービスを開発しています。

たとえば米国では、エネルギー属性証明書の追跡と検証を行う非営利団体 M-RETS と提携し、同社のプラットフォームにおける時間単位のトランザクション機能を拡張して、すべてのユーザーによる時間単位の証明書の追跡と無効化を可能にしました。また、市場ベースの環境保全技術のリーダーである APX と連携し、APX の North American Renewables Registry プラットフォームを通じて、Southwest Power Pool(SPP)の管轄内で時間単位の再生可能エネルギー証明書(REC)の無効化をサポートしています。この取り組みの結果、米国中部および中西部の発電事業者は、時間単位のデータが入手可能になればすぐに、1 時間単位で証明書を無効化することができるようになります。

また、デンマークの系統運用事業者である Energinet と共同で、詳細な証明書をサポートする技術的基盤を構築し、Project Energy Origin プラットフォームなどの革新的なアプリケーションを開発しています。現在 Energinet は、初期の成功に基づき、欧州全域で他の送電系統運用事業者と共同して、これらのソリューションをデンマークにとどまらず促進させるために、業界のパートナーとともに取り組んでいます。

そして、ラテンアメリカでは、Evident Services と Google のサプライヤーである ACCIONA Energia および AES Andes と緊密に連携し、The International REC Standard Foundation(I-REC Standard)が主導する試験運用を開始しました。チリで入手できる詳細な電力データを活用して、チリのデータセンターの 1 時間あたりのエネルギー消費量と、年間電力需要の 100% を満たす 3 つの再生可能エネルギー プロジェクトの 1 時間あたりの発電量をマッチングし、2021 年に発行したすべての REC において時間単位の証明書を無効化させることができました。

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また、公共部門のエネルギー利用者の間で T-EAC への関心が高まっていることや、新しい地域での試験的プロジェクトなど、Google 外部でも画期的な進展がありました。たとえば、バンコクのオランダ大使館は最近、The Electricity Generating Authority of Thailand (EGAT)による 1 時間単位のクリーンエネルギー証明書の試験運用を発表しました。これは、タイのクリーンエネルギーに関する取引インフラストラクチャを構築し、国のカーボン ニュートラル目標の達成をサポートするのが目的です。

時間単位のエネルギー追跡のためのインフラストラクチャを構築するだけでなく、現在進行している多くの T-EAC の試験的プロジェクトによって、詳細なエネルギー証明書の幅広い採用に役立つ貴重な教訓が生まれています。たとえばチリでは、時間単位の追跡で、共同所有のクリーン エネルギー プロジェクトに関して新たな契約上の検討事項が生じました。それは、登録機関やプロジェクト開発者による時間単位の証明書の二重計算を避けるために、共同所有について説明する必要があるということでした。

時間単位のエネルギー マッチングのためのデータとソフトウェア

登録機関は T-EAC の大規模な導入に重要な役割を果たしますが、T-EAC の潜在能力を十分に発揮するためには、エネルギー消費者が自分のエネルギー データにアクセスして体系化し、エネルギー消費量と時間単位のクリーン エネルギーの購入をマッチングさせる優れたツールとシステムが必要になります。

このニーズに応えるため、デンマーク、アイルランド、オランダのポートフォリオ全体のエネルギー データへのアクセスと集計を簡素化するため、ソフトウェア プロバイダの FlexiDAO と共同でプロジェクトを開始しました。このプロジェクトは、これらの国における 24 時間 365 日のカーボンフリー エネルギーのマッチング プロセスの効率化と、デンマークとオランダのクリーン エネルギー プロジェクトでの時間単位の証明書の無効化を通じてマッチングの検証に活用されています。また、データアクセスに関連する運用上の主な課題が特定されて、より一元化されたデータハブや承認プロセスの標準化の必要性が浮かび上がってきました。

詳細なエネルギー データと時間単位のクリーン エネルギー マッチングを実現する新しいツールの開発を支えてきたのは、Google だけではありません。昨年は、オランダ英国で、エネルギー サプライヤーと消費者が協力して、時間単位のクリーン エネルギー マッチングの試験運用を開始しました。

重要なのは、行政機関も時間単位のエネルギー データを、脱炭素化の目標を支える有望な新しいエネルギー技術の利用を促進するためのツールとして認識し始めていることです。たとえば、欧州連合では、水素を生成するために使用される電力がクリーンなエネルギー源から来ていることを確認することによって、新しいデータとソフトウェア ソリューションによる詳細なエネルギー追跡が、環境にやさしい水素の普及をどのようにサポートできるかを検討しています。さらに今月、米国国防総省と一般調達局は、有望なエネルギー サプライヤーに、カーボンフリー エネルギーを時間単位で追跡、レポートする方法の詳細を求める、初の共同情報依頼書を公開しました。

時間単位の追跡の標準化

時間単位の追跡に関する取り組みが大幅に拡大するにつれて、同時に多数のツール、定義、技術仕様が急増し、エコシステムが断片化され、相互運用性が損なわれる危険性が生じます。そのため、時間単位の証明書を広く普及させるうえで、グローバル規模で効率的に運用される堅牢な市場とインフラストラクチャの開発を可能にすることにより、標準化が不可欠です。

そのため、Google.org は業界をリードする EnergyTag の取り組みに対して資金を提供しました。この取り組みにより、時間単位の証明書の市場を体系化し、主な関係者が団結して業界標準を共同で開発するという大きな進展を遂げています。EnergyTag の諮問委員会の創設メンバーとして、予備的なホワイトペーパーに貢献できたことを嬉しく思います。そして、EnergyTag の公式ガイドラインが近々リリースされることを楽しみにしています。これは、広く認められた堅牢で取引可能な手段として、詳細な証明書の確立を実現するための重要なマイルストーンになります。

また、エネルギー システムの脱炭素化に焦点を当てたグローバルなオープンソースの取り組みである Linux Foundation の LF Energy プロジェクトに参加いたします。Google は LF Energy の戦略的メンバーとして、Carbon Data Specification Consortium で積極的な役割を担っています。この組織では時間単位のエネルギー データに一貫性を持たせ、消費者がより理解しやすい標準を作成しています。エネルギー消費者がより多くの情報を基にした意思決定が行えるだけでなく、T-EAC の普及を後押しすることになります。

時間単位の証明書の今後

今後に目を向けたとき、時間単位のマッチングによってもたらされる市場の変革と供給網レベルの脱炭素化に期待が高まります。消費者が時間ごとに利用エネルギー源を確認できるだけでなく、エネルギーの単位ごとに時間と場所のデータをデジタル処理でタグ付けすることで、電力供給網全体でカーボンフリー エネルギーの時間単位の利用可能性に関する重要な情報を得ることができます。クリーン エネルギー プロジェクトの供給網レベルの排出量の影響を詳細に報告するために、炭素会計のフレームワークを更新する取り組みの拡大と相まって、これは最も影響の大きいクリーン エネルギー プロジェクトへの資本の広範な再配分を推進し、同時にエネルギー消費者が 24 時間クリーン電力を購入する動機づけとなる新しいツールを政策立案者に提供することになります。

私たちは、時間単位の証明書の未来に期待を抱きながら、このような手段によって 24 時間 365 日のカーボンフリー エネルギーの導入と、世界中の電力供給網の脱炭素化が加速することを望んでいます。その間にも、2030 年までに 24 時間 365 日カーボンフリー エネルギーでグローバルな事業活動全体を行うという目標を達成するため、パートナー企業と協力し、Google のポートフォリオに時間単位の証明書を拡大していく予定です。


- Google エネルギー開発担当責任者 Maud Texier
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