コンテンツに移動
インフラストラクチャ

クリーン エネルギー認証へのタイムリーな新しいアプローチ

2021年3月12日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2021 年 3 月 2 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

Google Cloud は業界最高水準の地球環境に優しいクラウドを運用しています。私たちはこのようなリーダー的役割を担えることを大変誇らしく思っています。この取り組みには、世界中のエネルギー消費とその追跡に対する継続的な投資と絶え間ない進化が求められます。2030 年までに 24 時間 365 日カーボンフリーのエネルギーで事業を運営するという目標を発表したとき、Google は他社の模範になるような方法で目標を達成することを約束しました。私たちが特に大きな期待を寄せたのは、企業や組織がクリーンな電力の利用をより効率的に追跡し、認証できるよう支援する手段を促進させることです。

地球温暖化に対処するには、世界の消費電力の脱炭素化を速やかに実現する必要があります。実際には、カーボンフリー資源と、すべての地域電力系統の毎時間の電力需要のつり合いをとる方法を見出さなくてはなりません。しかし、現在 Google などの大規模エネルギー購入企業が利用しているクリーン電力調達の認証システムは、月間または年間単位でしか機能しません。より細やかなエネルギー追跡システムを構築することで、カーボンフリー エネルギーを最も必要とされている時に、最も必要な場所に供給するアプローチを推進できるようになります。

このような背景から、Google は、米国中西部とデンマークで Time-based Energy Attribute Certificates(T-EAC)という新しいコンセプトを試験的に運用しています。T-EAC は、Google のデータセンターでクリーン エネルギーのマッチングを 1 時間ごとに検証する新しいアプローチです。また、これと並行して同業他社とも連携し、世界中のクリーン エネルギー認証システムを支える基準とポリシーのモダナイゼーションも図っています。

現在のクリーン エネルギー購入の認証

クリーン エネルギー認証の現行の仕組みを説明するため、アイオワ州の風力発電所の例をご紹介します。この発電所で 1 メガワット時の電力が生産されると、そのたびに再生可能エネルギー証書(REC)が生成されます。これは第三者によって検証された REC(欧州では原産地証明(GO)と呼ばれる)ですが、実際に生産した電力量ではなく環境属性を表すものです。

企業は REC と電力をセットで購入するか(Google が一般的に使っている影響力の大きい手法)、単体で購入できます(つまり REC と電力を別々に購入します)。政府のクリーン エネルギー指令への対応を進める電力会社は、REC を義務の履行に役立てることができます。独自の目標値を掲げている企業であれば、目標達成に向けた進捗を証明するために REC を使用できます。Google が 2017 年以来、世界中の年間消費電力の 100% を再生可能エネルギーで賄うという目標を継続的に達成していることは、REC と GO を通して確認してきました。

しかし、問題が入り組んできた今、REC は時代にそぐわないアプローチとなりました。証書は風力発電所が 1 か月に生産できる総電力量を示しますが、電力がどの時間帯に生産されたかは正確に示しません。そのため、REC を購入している企業は、たとえば電力系統の大部分でカーボンフリー エネルギーがすでに利用されている時間帯など、カーボン インパクトの面で有用性の低い風力で評価を得ている可能性があります。クリーンな電力を常時供給するうえでギャップを埋める資源に対し、インセンティブを与えられる証書追跡システムがあれば理想的です。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/RECs_GOs_vs._T-EACs.max-1000x1000.jpg
Google の再生可能エネルギーの購入における REC / GO と T-EAC の比較図。 REC / GO は、風力発電所や太陽光発電所が 1 か月に生産するエネルギー量を示しますが、エネルギーが生産された時間は具体的に示しません。一方で、T-EAC は 31 日間の 744 時間の各時間ごとに、その時点で生産された電力量とともに生成されます(注意: ボックスの容量は正確な縮尺を表していません。現在 Google は、デンマークの太陽光よりも米国中西部の風力を多く購入しています)。

Google の再生可能エネルギーの購入における REC / GO と T-EAC の比較図。REC / GO は、風力発電所や太陽光発電所が 1 か月に生産するエネルギー量を示しますが、エネルギーが生産された時間は具体的に示しません。一方で、T-EAC は 31 日間の 744 時間の各時間ごとに、その時点で生産された電力量とともに生成されます(注意: ボックスの容量は正確な縮尺を表していません。現在 Google は、デンマークの太陽光よりも米国中西部の風力を多く購入しています)。

さらに、既存の証書は新しいクリーン エネルギー技術の生産量を追跡するには適していません。粒度の高い計測方法を使用しなければ、電力系統の新しいバッテリーにカーボンフリー エネルギーが充電されているのか、あるいは化石燃料由来の電力が放電されるのかが明確にわかりません。

タイムリーな新しいアプローチ

T-EAC は、電力が生産された方法と場所を追跡できるだけでなく、その電力が生産された時間帯も正確に認証できる手段です。前述した風力発電所にたとえると、企業は任意の 1 時間の生産に対して T-EAC を購入できます。

Google は、米国中西部で M-RETS と連携してこのコンセプトを試験的に運用しています。M-RETS はエネルギー属性証書の追跡と検証を行う非営利団体です。風力発電所から電力を購入する際、それに伴う時間単位のデータを含む証書の購入と償却を行います。これは、地域における正式な時間ベースの追跡システム導入への第一歩です(M-RETS の詳細についてはこちらをご覧ください)。同様に、Google はデンマークの系統運用事業者である Energinet との提携も開始して Project Origin プラットフォームの試験運用を行っています。このプラットフォームでは、デンマークの Google データセンターをサポートするカーボンフリー エネルギー プロジェクトのために 1 時間ごとの GO 証書取引をシミュレートしています。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/T-EACs.max-1600x1600.jpg

T-EAC を世界中で導入するには証書を標準化し、既存の追跡システムとカーボン アカウンティング プログラムに統合する必要があります。また、系統運用事業者は、顧客が自らの毎時エネルギー データにアクセスし、把握できるようにしなくてはなりません。Google が電力データの公開を義務化するポリシーをサポートし、T-EAC のグローバル追跡標準を先駆的に推進している独立系非営利団体である EnergyTag の諮問委員を務めているのはこのような理由からです。

Google は、EnergyTag などの組織と連携して、T-EAC でエネルギーの最終用途や関連する二酸化炭素排出量など、電力生産のタイミング以外の情報もエンコードできるよう、設計を模索しています。最終的には、欧州で「フル ディスクロージャ」と呼ばれる状態を実現し、T-EAC ですべての発電装置(カーボンフリーか否かにかかわらず)の電力を追跡することを目指しています。

今後の展望

Google の使命は、世界中の情報を体系化して時と場所を選ばずアクセスできるようにし、あらゆる人々の利便性を高めることです。エネルギー分野において、より入手しやすく、体系化された情報が利便性を発揮するのは明らかです。

T-EAC は世界の電力系統に透明性をもたらします。その過程で、組織によるエネルギー利用の把握と最適化を促進するソフトウェア ソリューションが次々に誕生するでしょう。Google では、時間ベースの証書を採用する地域を急速に拡大する予定です。今後、その進捗についても皆様にお知らせいたします。

T-EAC が成熟するにつれて、タイムスタンプされた売買可能な証書が価格シグナルの基準となり、電力系統でカーボンフリー エネルギーが最も不足しているときに、カーボンフリーのエネルギーを生産する手段を見出した業者に報酬がわたる仕組みになるでしょう。今後は、こうした証書の導入を促進し、電力系統の完全な脱炭素化に向けて全力で取り組みます。

地球温暖化対策の緊急性を鑑みれば、T-EAC はまさに時宜にかなった手段なのです。

-データセンター カーボンフリー エネルギー担当リーダー Maud Texier

投稿先