サステナビリティ

Google Earth Engine on Google Cloud を活用した気候科学者によるカナダの林冠モニタリング

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※この投稿は米国時間 2022 年 4 月 21 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

気候科学者たちは、世界中のセンサーや衛星からリアルタイムで送信される大量の環境データの分析や解釈に追われています。それには地球の長期的な未来がかかっていますが、状況は急速に変化しており、洪水や山火事などの異常気象や日常的な資源の管理など、すでに各地のコミュニティに影響が出始めています。このような状況のなかで、詳細な環境マップは、食料安全保障、水質、植生レベルなど、地球規模の緊急課題に対する重要な情報源となります。

科学者、研究者、デベロッパーは、Google Earth Engine(EE)のような最先端のクラウド コンピューティング ツールを利用して、地表の変化を検出し、傾向をマッピングして、変動を数値化しています。EE は Google Cloud のコンピューティング能力を活用して、数ペタバイト規模の衛星画像および地理空間データセットのカタログを地球規模の分析機能と組み合わせます。

気候科学者がこのような複雑な研究課題にどのように取り組んでいるのかを詳しく知るために、カナダ天然資源省(NRCan)Richard Fernandes 博士にお話を伺いました。Fernandes 博士は、世界をリードする科学者のコホートに技術的および専門的なサポートを提供する Google Cloud リサーチ イノベーター プログラムの 2022~23 年のメンバーでもあります。クラウド コンピューティングと機械学習(ML)ツールが気候変動レジリエンスの研究をサポートし、気候の持続可能性に関する意識を高める方法について説明していただきました。


Fernandes 博士、気候科学に関する博士の研究の概要を教えてください。

カナダ全土の植生の状態と傾向をマッピングすることに重点を置いた研究を行っています。20m の解像度で樹冠被覆などの植生パラメータのマップを毎月生成し、環境のモニタリングや評価をサポートしています。これらのマップは、天候や気候の予測の不確実性を低減するために使用されるグローバルなデータセットに貢献しています。

カナダの国土はおよそ 1,000 万平方キロメートルあり、これらのマップの年間データ量は、HD 映画をノンストップで 750 時間以上ストリーミングするのに匹敵します。しかも、これは氷山の一角にすぎません。マップを生成するために必要な入力データの量は、通常その 100 倍以上あります。動画ストリーミング サービスとは異なり、位置を正確に特定し、雲(雲の影も含む)をスクリーニングするために入力されたピクセル一つ一つを個別に処理してから、ML アルゴリズムを使用して樹冠などの植生パラメータ値に変換しなければなりません。

高解像度のデータ量および必要とするコンピューティング量は増加の一途をたどっており、負荷の高いものになっています。サーバーを 24 時間 365 日常時専有してモニタリングするのではなく、クラウド コンピューティングと ML を活用しています。クラウド コンピューティングにより、これらのデータすべてを有用かつアクセス可能な方法で管理できます。また、Google の人工知能(AI)プラットフォームを使用して、サードパーティ データセット用の新しい ML モデルの調整も行っています。


Google Cloud を使い始めたきっかけは?

4 年ほど前から、Google ドライブとのインテグレーションとしてオープンソース API とともに EE を使い始めました。パンデミックの発生に伴い、私の研究グループはカナダ全体のマッピングと研究開発活動の両方で、EE、Google Cloud、Google ドライブの使用に移行しました。1 月には、EE 衛星データをベースに、カスタマイズ可能な葉の密度マップをほぼリアルタイムで作成する LEAF ツールボックスを開発しリリースしました。ピクセル処理はすべて EE で行い、EE の API を使用した独自の関数を統合する機能を活用しています。EE と Google Cloud を組み合わせ、出力されたデータセットの処理と管理を行っています。幸いなことに、EE には入力データのほとんどがすでに存在するので、先ほど述べた 100 倍ものデータ量に対応する必要はありません。


LEAF は現在、そして将来にどのような影響をもたらすと考えていますか?

カナダの連邦政府も州も、永久凍土、作物の状態、水資源モデルの入力として私たちのデータ プロダクトをすでに使用してしています。カナダ農務省は従来の地理情報システム(GIS)を使っていましたが、データ管理の方法について私たちに相談してきました。農務省は LEAF を使って、地域経済や世界の食糧供給に影響を与える作物の生育状況を把握したいと考えていました。現在、私たちは EE を作物の状態評価に適用するための試験運用を農務省と共同で行っています。

また、アルバータ州では、油田やガス田および鉱山の再生状況をモニタリングするシステム内に LEAF ツールボックスを統合しているのも興味深いところです。鉱物やガスの採掘場として開発された場所を回復させる方法を探っているのです。これも素晴らしいユースケースの一つですが、他にも実現できることが数多くあります。技術そのものが優れたものではありますが、核心はそこではありません。ML アルゴリズムは常に進化し、改善され続けています。新しい ML アルゴリズムは、間違いを検出してその場で更新する能動的学習を利用しています。5 年後、それどころか 5 か月後には技術は違ったものに変化しているでしょう。ですから、これらのツールを今すぐ利用可能かつ有用なものにすることが何より重要なのです。

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LEAF で樹木の林冠を前年と比較

気候研究のための最先端技術はなぜ重要なのでしょうか?

変化し続ける複雑なエコシステムに最適なソリューションを提供するためには、科学研究は高い透明性と厳密性を維持した、実証に基づいたものでなければなりません。気候変動対策には、社会の意識のさらなる向上が必要です。意識を向上させるためにはより多くの知識が必要であり、知識を増やすには最適なデータが求められます。誰もが情報を利用して意思決定を行えるようにすることで、官民パートナーシップによるオープンなエコシステムを作り上げることができます。高度な研究に参入しやすくし、科学者が成果を検証および再現できるよう支援します。なお、科学者は、高度に特殊化されたカスタム ソリューションに対応するソフトウェア エンジニアになることを望んでいません。彼らが求めているのは、分析に集中でき、その分析情報を世界と共有できるユーザー フレンドリーなツールです。それが、私にとっての Google Cloud リサーチ イノベーター プログラムの大きな魅力の一つです。LEAF を同僚と共有し、新しいツールを新しい方法で使っている他の研究者と共同で研究したいと考えています。


ご自身のミッションについて、最後に一言お願いします。

私たちは幸運にも、カナダの納税者とカナダ政府から資金援助を受けることができています。過去 20 年にわたり、多くの科学者と協力して、私たちが使用するアルゴリズムの開発と検証を行ってきました。なかでも、アルゴリズムと知識、そしてデータへの自由でオープンなアクセスという考えを支持するフランス国立農学研究所(INRA)の Fred Baret 氏と Marie Weiss 氏には、多大な協力をいただいています。

私は情報への自由なアクセスの大切さを心から信じています。Google サービスの利用規約によって、マップだけでなく実際の処理システムを自由でオープンな形ですべての人に提供できるという点が気に入っています。EE がモバイル デバイスでも動作する簡単で使いやすいユーザー インターフェースを提供している点にも好感が持てます。LEAF は専門家のためだけではなく、個人向けにも設計されています。私の母は、タブレットで近くの公園のマップをリアルタイムに作ることができました。環境に関する重要な情報へのアクセスを拡大することで、自分たちの行動が身近な場所と遠い場所の両方にどのような影響を及ぼすのかについての集団的意識を高め、それが持続可能な未来に向けた積極的な行動につながっていくよう願っています。


示唆に富んだお話をいただき、誠にありがとうございました。

お招きいただきありがとうございました。


再生可能エネルギーに対する Google の取り組みについて詳しくは、こちらをご覧ください。ご自身で LEAF ツールボックスをお試しいただくことも可能です。



- Google Cloud 気候変動対策担当戦略ビジネス エグゼクティブ Franco Amalfi