Google Earth Engine は農業生産工程のサステナビリティ向上にどのように貢献できるか
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 12 月 12 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
食料や水の安全は現在、世界的に喫緊の課題となっています。国際連合食糧農業機関(FAO)は、世界全体の食料需要が 2050 年までに 60% 増加すると予想しています。また、世界保健機関の報告によると、複数の危機的状況の影響で、飢餓に苦しむ人が 2019 年以降、1 億 2,200 万人増えています。COP 28 の 8 日目は、食料、農業、水のシステムのレジリエンスを築くにはどうすればいいのかについて重点的に取り上げられました。
気候条件の変動が続くなか、食料と水の安全を確保するという課題は極めて重大ですが、問題の大きさや深さを考えるとその解決方法は複雑です。これまで主に問題点となっていたのは、気候が農業に及ぼす影響と、逆に農業が気候に及ぼす影響を理解するためのデータ、そしてインサイトへのアクセスでした。
Google は、世界中の情報を整理し、誰もがアクセスして活用できるようにすることで、意思決定者が、ますます拡大し、複雑化するデータセットを照会できるようにすることをミッションとしてきました。Google Cloud は、農業に携わるさまざまな組織と連携し、データとインサイトへのアクセスに関する問題の解決に取り組んできました。この取り組みの中心にあるのが、地球規模のリモート センシング プラットフォーム Google Earth Engine です。この先駆的な分析プラットフォームには、世界中の衛星データが 50 年分蓄積され、分析に利用できるようになっています。また、極めて高い処理能力により、地球表面全体に対して ML モデルを実行できるため、データとインサイトにアクセスしやすくなります。
Earth Engine は、すでに世界中で、農業を含む多くの業種の大規模組織によって活用されています。たとえば、リモート センシングのスタートアップであるオーストラリアの Regrow は、顧客の環境再生型農業への移行を支援しています。Earth Engine と高度な ML モデルを使用して、世界中で 12 億エーカーの農地をモニタリングすることが可能になっています。Regrow は、農業生産工程をトラッキング、モデリング、モニタリングすることで、顧客が土壌内の炭素隔離を促進し、浅耕または不耕起によって温室効果ガス排出量を削減し、生物多様性を高め、水の使用量を最適化できるよう助けています。また、Earth Engine は、Unilever のサステナブルなソーシングというミッションにおいても中心的な役割を果たしており、パーム油のサプライ チェーンで森林伐採をなくすという目標の一端を担っています。Unilever は、Earth Engine と、Earth Engine 上に構築された Google パートナーのソリューションである TraceMark を利用して、パーム油の購入ルートをプランテーションまでたどり、森林伐採が行われている土地からパーム油を調達していないことを確認しています。
Google は、企業だけでなく各国政府とも連携し、このテクノロジーの導入と利用を促進しています。インドでは、Google Research と Google Partner Innovation が、AnthroKrishi というプロジェクトに取り組んできました。これは、精密農業のための農地を特定し、衛星画像を通じてモニタリングすることで、広範囲にわたりデータドリブンな気候介入を可能にするものです。北アメリカやヨーロッパと比べると農場の平均的規模は大幅に小さいインドですが、そのインドだけでも、モニタリングが必要な区画数が 7 億 5,000 万あると見込まれます。これまで区画レベルのデータをデベロッパーやエコシステムが利用することはできませんでした。AnthroKrishi のビジョンは、農業データを含む基本ベースレイヤーを提供することです。企業や技術チームはこの上にソリューションを構築し、自社のデータセットと組み合わせることで、独自の有用なインサイトを生み出すことができます。さまざまなステークホルダーがそれぞれ独自の農業向けソリューションを構築できます。例として、農家の資金調達手段としてのローンの審査、地域ごとの気候や土壌の質に応じた保険のカスタマイズ、食料のサプライ チェーンの効果的かつ効率的な調整、投入財に応じた適切な助成金の判断、農家ごとの精密農業に関する助言や市場へのアクセス改善などが考えられます。
AnthroKrishi API は、インド向けには来年初めに、その他の地域には来年後半にリリースの予定です。早期アクセスにご興味がある場合や、Google Research と連携してこのようなインサイトをご自身の国でも利用されたい場合は、ウェブサイトからお問い合わせください。Google Cloud の高度な ML 機能を Earth Engine とともに使用して、実際に気候に影響を及ぼしたい場合は、Google のアカウント担当者にご連絡いただくか、こちらからお問い合わせください。
この投稿にあたり、貴重な貢献をいただいた Google Research India のリサーチ ディレクターである Manish Gupta とそのチームに深く感謝します。
-Google Cloud(アジア太平洋)、バイス プレジデント Karan Bajwa
-Google Cloud(アジア太平洋)、サステナビリティ リーダー Leah Kaplan