Earth Engine とクラウドの接続性が深化した 1 年を振り返って
Sheba Rasson
Senior Product Manager
Emily Schechter
Senior Product Manager
※この投稿は米国時間 2024 年 12 月 11 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
2024 年は Google Earth Engine にとって、プラットフォームの管理、クラウド インテグレーション、コア機能における大きな進歩を遂げた記念すべき年となりました。Google Cloud のツールやサービスと Earth Engine 間での相互運用性が向上したことで、ユーザーの皆様に新しい強力なワークフローとユースケースを利用いただけるようになりました。ここでは、今年の主要な Earth Engine リリースのまとめをご紹介します。多くは Geo for Good 2024 サミットで取り上げられたものです。
管理: ワークフローの合理化
今年に入って、Google は、Cloud コンソールで新しい Earth Engine [概要] ページを立ち上げました。これは Earth Engine リソースの中央ハブとして機能し、他のクラウド サービスの管理およびモニタリングに使用するのと同じコンソールから Earth Engine を管理できます。
このコンソールには、新しく [タスク] ページも導入しており、使用量の管理や請求とともに、Earth Engine のエクスポート / インポート タスクの表示とモニタリングが可能です。この [タスク] ページには、各タスクについて、状態、実行時間、優先度など有用なフィールドが表示されます。この新しいインターフェースでは、単一または一括でのタスクのキャンセルがこれまで以上に簡単になりました。
Google Cloud 全体で Earth Engine の相互運用性を高めるのに伴い、Cloud コンソールにより多くの情報と制御を追加しており、Earth Engine の管理を他のサービスと合わせてさらに一元化できるようになります。
インテグレーション: クラウド相互運用性の高度化
Earth Engine ユーザーは数多くのクラウド サービスやクラウドツールとのインテグレーションが可能で、カスタムの ML やロバストなデータ分析を必要とする高度なソリューションを実現できます。今年、既存の相互運用性を改善する機能をリリースし、そのようなソリューションの実現とデプロイを容易にできるようにしました。
Vertex AI インテグレーション
Earth Engine と Vertex AI を合わせて使用することにより、作物の分類などディープ ラーニングを必要とするユースケースを実現できます。Vertex AI でモデルをホストし、Earth Engine のコードエディタ内で予測を行うことが可能となります。今年 、プレビュー版の Vertex コネクタの大幅なパフォーマンス改善を発表しており、これにより現行の Vertex コネクタよりも高い信頼性とスループットを実現できるようになります。
Earth Engine のアクセス
Earth Engine のすべてのユーザーがこれらの新しいインテグレーションの改善内容と管理機能を利用できるよう、全 Earth Engine ユーザーを Cloud プロジェクトに移行しました。この変更によって、Google Cloud のインフラストラクチャ、セキュリティ、そして成長を続けるツールのエコシステムがもたらすパワーと柔軟性を、Earth Engine のすべてのユーザーが利用できるようになり、よりよい世界を作るための科学、研究、運用上の意思決定を推進できます。
セキュリティ: 制御性の強化
今年、Earth Engine の VPC Service Controls のサポートをリリースしました。これは、組織の Google Cloud リソースを取り囲むセキュリティ境界の定義に役立つ重要なセキュリティ機能です。プロフェッショナル プランとプレミアム プランでご利用いただけるこの新しいインテグレーションによって、データの制御性が強化され、不正なアクセスやデータの引き出しの防止に役立ちます。VPC-SC の使用により、お客様はきめ細かいアクセス ポリシーの設定、承認済みのネットワークやユーザーへのデータアクセスの制限、データフローのモニタリングと監査が可能になり、内部のセキュリティ ポリシーや外部の規制を遵守できます。
プラットフォーム: パフォーマンスの改善
ゾーンの統計情報
画像内のリージョンの統計情報を計算することは、Earth Engine のコア機能の 1 つです。Earth Engine でのバッチ処理によるゾーンの統計情報のエキスポートついて、大幅なパフォーマンス改善を最近リリースしました。大規模なコレクション内の全リージョンの統計情報を生成するエキスポートなど、ゾーンの統計情報のエキスポートの並列処理方法を最適化しました。これは、ReduceRegions() を使用したときに、バッチタスクあたりの同時実行コンピューティング能力が大幅に拡大することを意味します。
このリリースにより、大規模なゾーンの統計情報のエキスポートが昨年の同時期と比較して数倍も速くなり、結果をより速く取得できるだけでなく、Earth Engine で従来以上に大規模な分析が可能になりました。たとえば、米国大陸部のすべての国勢統計区における樹木エリアの割合の平均値を、1 メートル スケールで 7 時間で演算できます。大規模なゾーンの統計情報の演算を高速化した方法について詳しくは、技術的内容のブログ投稿をご覧ください。
Python v1
昨年は、Earth Engine Python の使いやすさ、信頼性、透明性に重点を置いてきました。クライアント ライブラリが Google にあるオープンソース リポジトリ内に移動したことで、変更を GitHub に即座に同期し、リリース間の変更点を常に最新状態に保つことができるようになりました。また、プレリリース版も共有していますので、Python ライブラリのリリース候補を正式リリース前に確認し、操作できます。静的ローディングのクライアント ライブラリを用意していますので、Python ライブラリのビルドが容易になり、テストやエラー メッセージを改善できます。geemap や xee などのインテグレーションの改善についても、引き続き取り組んでいます。
このようなさまざまな変更を経て、Earth Engine Python の成熟を表す「v1」として、Python クライアント ライブラリを発表できることを喜ばしく思います。ぜひこちらのブログ投稿で詳しい改善内容を読んでいただき、Python をフルに活用して Google のクラウドツールと統合する方法をご確認ください。
COG ベースのアセット改善
Google Cloud Storage(GCS)に Cloud-Optimized GeoTIFF(COG)形式でデータを保存している場合、Cloud Geotiff ベースの Earth Engine アセットによって簡単に Earth Engine で使用できます。全バンドの投影と型が同一である単一ファイルの GeoTIFF が必要であった従来のエクスペリエンスから改善されました。
複数の GeoTiff ファイルをベースとする Earth Engine アセットを作成できるようになりました。投影、解像度、バンド型が異なっていても、Earth Engine が面倒な部分に対応するので問題ありません。前述の機能も、大幅にパフォーマンスを改善しています。Cloud GeoTiff ベースのアセットでも、ネイティブな Earth Engine アセット同等のパフォーマンスが得られます。さらに、GCS COG をオープンソース・パイプラインやその他のツールなど別の場所で使用する場合も、データは 1 回保存するだけで、プロダクト間でシームレスに使用できます。
2025 年に向けて
サステナビリティと気候変動レジリエンスの改善を目的とし、より高度なツール、強化されたセキュリティ、シームレスなインテグレーションを Earth Engine のユーザーに活用していただくことを楽しみにしています。来年は、クラウドの相互運用性をさらに改善し、地理空間データを通じて行動につながるインサイトをより得やすくすることで、サステナビリティに関する意思決定への活用を促進していきます。
-シニア プロダクト マネージャー Sheba Rasson
-シニア プロダクト マネージャー Emily Schechter