チップ用の現金が不要に。TackPay が Google Cloud 上にチップ支払い用デジタル プラットフォームを構築
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 2 月 23 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
社会のキャッシュレス化が進んでいます。消費者にとっては便利な反面、チップを受け取る労働者の収入が激減しています。この問題に対応するのが TackPay です。TackPay は、チップの送受信と管理を完全にデジタルな方法で行うことができるモバイル プラットフォームです。チップ労働者は仮想のチップ入れを使い、直接キャッシュレスでチップを受け取ることができます。
チップ処理をデジタル化することで、個人が現金を介さずにチップを受け取ることができるだけでなく、レストランやホテルなどでありがちな、不公平かつ不明瞭で非効率的なチップ処理を合理化することができます。TackPay のアルゴリズムにより、店舗は分配のルールを定義し、チップ管理プロセスを自動化することで、時間を節約できます。チップが企業の帳簿を経由せず、Tackpay を介して支払われるので、企業の税務も簡素化されます。
来店客は QR コードでアクセスできる簡単で迅速なウェブベースのエクスペリエンスを使用して、透明性と柔軟性に優れた方法でキャッシュレスのチップを支払うことができます。
TackPay のテクノロジー
主な競合相手はもちろん現金です。当初から TackPay は、現金のチップと同じように簡単かつ迅速にデジタルチップを使用できるよう取り組んできました。そのため、基盤となるテクノロジーには、最高レベルのパフォーマンスで顧客満足度を確保し、チップを受け取る可能性を増やすことが求められます。
たとえば、リクエストの混雑を避けるため、各国のピーク時にリクエストの読み込みを調整できることが必要です。数ミリ秒でページが開くようにすることで、ドロップアウト率を低く抑え、ユーザーの不満を回避できます。トランザクションが通信状況の悪い離れた場所で発生する場合もあるため、強力でアクセス可能なサービスを提供して、オフラインでも使用できるようにすることが非常に重要です。TackPay が Google Cloud を選んだ理由はいくつかあります。
機能コンポーネント
TackPay のインターフェースにはウェブサイト、ウェブ アプリケーション、モバイルアプリがあります。ウェブサイトは情報提供が主で、登録、ログイン、メーリング リスト購読やパートナーシップのフォームが掲載されています。ウェブアプリはアプリケーションの機能的なインターフェースです。パートナー、チップ支払者、チップ受領者、グループのいずれかのユーザー ペルソナに応じて、4 つの異なるユーザー エクスペリエンスがあります。
パートナーには、カスタマイズされたウェブ ダッシュボードがあります。
チップ支払者には、チップを支払うページが表示されます。これが、このアプリケーションのコア機能です。チップ支払者が効率的かつ頻繁にチップを払いやすくなるようにするため、軽量で低レイテンシのトランザクションを提供するように設計されています。
チップ受領者は、チップを受け取る人で、アプリケーションを使用してシステムにオンボーディングし、チップ金額を確認し、ダッシュボードでトランザクションを追跡できます。
グループは、組織として、複数のサービスにわたる複数のチップ受領者のチップをまとめることができます。
モバイル インターフェースでは、チップ受領者とグループのペルソナ用にウェブ インターフェースと同様のエクスペリエンスが提供されます。複数のペルソナに対応したユーザー ダッシュボードには、チップ受領者向けのフィードバック、ウォレット、トランザクション、ネットワーク、プロフィール、設定、銀行口座の情報、引き出し、ドキュメントの機能があります。これらの機能に加えて、ダッシュボードにはグループのペルソナ向けの店舗の詳細もあります。
キャッシュレスのチップを可能にする技術的なアーキテクチャ
技術的なアーキテクチャの概要を下の図に示します。
取り込み
ウェブ アプリケーション、モバイルアプリ、サードパーティ製金融アプリケーション API、Google アナリティクスからデータを取り込みます。ウェブ アプリケーションとモバイルアプリは主要なビジネス機能を実行します。ウェブサイトと Google アナリティクスはビジネス分析とマーケティング データのエントリ ポイントとして機能します。
アプリケーション
ウェブ アプリケーションとモバイルアプリはプラットフォームのコア機能を提供し、同じデータベース(Cloud Firestore)を共有します。
チップ支払者のペルソナは通常、モバイルアプリをインストールする必要はありません。QR コードでスキャンしたウェブ アプリケーションを操作して、サービスに対するチップを支払うことができます。モバイルアプリは主にチップ受領者とグループのペルソナ向けです。
いくつかの重要な機能のトリガーが、Google Cloud Functions Gen 2 を使用してデータベースとアプリケーションの間で有効になっています。このアプリケーションは、Firebase Authentication、Cloud IAM、Logging も使用します。
データベースとストレージ
機能データを保持するために、Firestore コレクションが使用されます。コレクションにはビジネス、チーム、チップ受領者、チップ支払者向けの支払いデータと、ユーザー、パートナー、フィードバック、ソーシャルなどのデータが含まれます。BigQuery は Google アナリティクスとウェブサイトのすべてのデータを保存し、処理します。Cloud Storage for Firebase は、アプリケーションで生成されたユーザーデータの保存と提供を行います。
分析と ML
BigQuery データを分析に使用し、Vertex AI AutoML を ML に使用します。現段階では、データポータルを使用して、複数のデータセットにわたったオンデマンドでセルフサービスのレポート作成や分析、データ マッシュアップを行っています。最終的な目標は、Google Cloud の Looker と統合して、セマンティック レイヤを取り込み、TackPay のすべての分析において単一のデータアクセス レイヤを標準化することです。
デジタルチップの今後の展開
TackPay 製品がリリースされてから数か月が経過し、イタリア、ハンガリー、英国、スペイン、米国など多くの国で実際にチップを処理しています。このソリューションは最近ヨーロッパのホスピタリティおよび飲食業界の大手企業にも採用され、パートナーとして信頼を得ています。今後は世界的にさらに展開していく計画です。
世界展開を可能にするには、特定の国を対象としてプロダクト エンゲージメントを検証し、チームと製品を育成してスケールアップする必要があります。Google Cloud との技術的な提携によって、スケーリング処理が簡単に行えるでしょう。スタートアップ向けの技術的な考慮事項、Google Cloud を使用したデータベース設計の基礎、その他のデベロッパーやスタートアップに関するトピックにご興味がある場合は、私のブログをご覧ください。
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- TackPay、戦略責任者 Francesco Derchi 氏