AI を活用した従来のオンライン学習アプローチの変革
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 10 月 21 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
多くの企業で IT スペシャリストが欠かせない存在になる一方で、デジタルスキルにはギャップがあり、生涯学習の重要性が高まっています。新たなスキルの習得には、専門能力の向上だけでなく、同僚や同業者とのつながりの構築、創造性の向上などさまざまなメリットがあります。私が 2020 年に Krishna Deepak Nallamilli 氏とともに KIMO.ai を立ち上げ、特に発展途上国の人々向けに学習へのアプローチ方法の変革に取り組んだのはそのためです。当社は、高品質かつ幅広いデジタル学習コンテンツを活用して、一人ひとりに合った学習プログラムを作成するために必要な人工知能を構築しています。
Google Cloud と Google Cloud のスタートアップ プログラムのおかげで、ビジネスの成長に必要なツール、人材、プロセス、ベスト プラクティスを獲得することができました。
既存の学習プラットフォームでは学習が継続しない
MOOC(大規模かつオープンなオンライン学習コース)は、多くが大学の教育課程をモデルとしており、既存の教育機関とは別に、スキルアップや新たなスキルの獲得が可能な柔軟性の高いコースを安価に提供できます。しかし、MOOC プログラムに参加した受講生のうち、コースを修了できるのはわずかです。当社の調査によれば、既存の学習プラットフォームの課題は、コースを継続させる魅力に乏しいということです。その主な理由は、多くの受講者が必要とする AI、フィンテック、ブロックチェーンなどの分野で、学べるスキルの方向性が限られていることです。
また、企業学習管理システムの多くが、従業員のスキルアップを目的とするオンライン トレーニング システムとして開発されており、設計の使い勝手が悪く、操作に時間がかかるという意見もありました。
全般的に、ほとんどの既存の学習プラットフォームが抱える大きな課題は、専門性に乏しいという点にあります。たとえば、AI について学びたい受講者は、自身が携わる業界や、取り組みたい業務に活かせる AI 関連のコースワークを必要としています。医療で使用される AI と金融サービスで活用される AI は、大きく異なるからです。しかし、現在一般的に提供されているオンライン学習コースは画一的で、学習者がキャリアを形成するために本当に必要なコースとは差があります。
将来を見据えた学習プラットフォームの構築
KIMO.ai は、ユーザーそれぞれに最適にパーソナライズされ、アクセスしやすい学習プラットフォームの実現を目指して生み出されました。私たちは、このプラットフォームを未来の教育のあり方だと確信しています。AI を活用した当社のプラットフォームは、ユーザーの目標、すでに持っているスキル、地域などさまざまな要素を考慮して、必要なスキルを習得するためのコースワークと、そうしたコースワークがどこで受講できるのかを特定します。さらに、ポッドキャスト、MOOC、書籍、記事、動画、学習コース、出版物などへのユーザーの嗜好も考慮して、学習方法をさらに最適にパーソナライズして提案します。
また、協力(cooperation)と競争(competition)を組み合わせ、「coopetition(協争)」と名付けた方法で、独自の自動評価に基づき、学習者に最適であれば、他社の定評のあるオンライン学習システムのコースを定期的に提案します。また、無料コンテンツのみを利用することも可能です。
Google との文化的な連携で信頼を育む
当社のプラットフォームは、1 人のデベロッパーが NLP モデルと Google API に出会ったことがきっかけで生まれました。その後会社の規模が拡大し、発展途上国で 11 万人のユーザーにベータ版を公開すると、多くの人が当社のプラットフォームに興味を持ってくださいました。そこで、当社のプラットフォームが、大きな変化をもたらせると確信しました。フィードバック フォーラムでは、ベータ版のテスターの 99% がモバイル デバイスを使用していたため、学習者のエンゲージメント向上のためには、モバイル向けサービスに集中して取り組む必要があることがわかりました。
当社は Google Cloud ソリューションに絶大な信頼を寄せていますが、Google との文化的な連携にも感謝しています。また、デベロッパーを中心とした Google のアプローチを高く評価しており、Dataflow をバッチデータ処理に、Cloud TPU を Google Cloud 上で機械学習モデルと AI サービスを安定して運用するために使用するなど、さまざまなツールを活用しています。また、Google Kubernetes Engine(GKE)上ですべてのデプロイメントを作成しており、これによってコンテナ ワークロードの管理が容易になっています。
フロントエンドでは、Google App Engine により、アプリやテストを容易にデプロイできます。また、Firebase とのシームレスな統合により、認証などの機能が利用できます。受講者に合った必要なコースワークを提案するための分析を行う際には、数百万規模の記事や動画など、さまざまな学習リソースが必要ですが、当社ではそれに対応するために、BigQuery を効率的なスケーリングが可能なサーバレス データ ウェアハウスとして使用しています。
ビジネスが成長するなかで、信頼の置けるアドバイザー ネットワークの存在価値は計り知れません。2020 年度 Google Cloud グローバル販売パートナー オブ ザ イヤーを受賞した DoIT Internationalとの緊密な連携を通じ、DoiT International のクラウド、Kubernetes、機械学習に関する専門知識を活用できるようになりました。DoIT 社のおかげで、IT に関する問題をすばやく解決し、分析ダッシュボードを作成してサービスの継続的な改善に役立つインサイトを得ることができています。
成長業界向けプラットフォームの構築
EdTech 市場は変化が激しく、急速な成長のさなかにあります。2025 年までには業界規模が 110 億ドルに達すると予想されています。教育のパーソナライゼーションの新たな波では、受講生のニーズと学習方法の嗜好に合った的確なコースワークで発展途上国をはじめとするさまざまな人々のスキルアップをお手伝いできる可能性を秘めています。当社がこうした動きの一端を担えることは非常に幸いです。今年、新しく当社のプラットフォームの利用を開始するユーザーの数は、少なくとも 40 万人以上になります。ユーザーの皆様が当社のプラットフォームを活用してキャリアを切り拓く姿を楽しみにしております。
Google Cloud がスタートアップにどのように役立つかをもっと知りたい方は、こちらのスタートアップ プログラムの申し込みページでプログラムの詳細を確認し、コミュニケーションに登録すると、コミュニティ活動、デジタル イベント、スペシャル オファーなどの情報を入手できます。
- KIMO.ai CEO Rens ter Weijde