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Public Sector

追跡や特定に成功: ユタ州野生生物資源局が野生動物の保護に Google Cloud を活用

2023年5月25日
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Google Cloud Japan Team

ユタ州 DWR の Wildlife Tracker

※この投稿は米国時間 2023 年 5 月 2 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

数年前なら、ユタ州天然資源省(DNR)、ユタ州野生生物資源局(DWR)の職員がロッキー マウンテン エルクを追跡するには半日以上かかったでしょう。追跡には、超短波(VFH)アンテナを持ち運び、エルクに付けた発信機付き首輪からの信号を拾える場所を探します。そして、エルクを取り囲む複数の地点から信号を受信し、エルクのおおよその位置を推定します。この作業は複雑で多大な労力を求められるため、ユタ州 DWR が発信機を付けた動物 1 頭を追跡できるのは、2 週間に 1 回、あるいは月に 1 回に限られていました。

その後 2023 年に入ると、ユタ州 DWR の職員は事務所にいたまま、数千頭の動物のリアルタイムの位置情報を確認できるようになりました。さらに、野生動物の生息地や個体数を改善するために、現在の位置情報と過去 20 年分のデータを重ね合わせ、データドリブンな意思決定ができるようになりました。これを可能にしたのが、Google Cloud 上で動作するユタ州独自の Wildlife Tracker アプリケーションです。このアプリケーションにより、DWR は野生動物の地勢との長い時間をかけた関わりを把握するだけでなく、新たな移動経路の特定、生息地の改善が必要な地域の評価、衝突事故の危険が高い地域で動物が道路を横断しないようフェンスや横断構造を設置する場所の判断ができます。経時的な動物の移動に関するこうした通知により、山火事や干ばつが個体数や移動パターンに及ぼす影響など、リアルタイムの状況分析も可能になっています。

ユタ州 DWR の GIS プロジェクト マネージャーを務める Jessie Shapiro 氏は次のように述べています。「現在、野生動物のことをより深く知り、理解できるようになりました。移動のパターンや死因を理解し、数千頭の動物の個々のデータポイントを確認できます。動物がどのように地勢を利用しているのか、その安全と保護のためにどのように介入すべきなのかについて、新たな発見がありました。」

1 回のクエリで懸念を緩和

ユタ州 DWR の職員は、Google Cloud に移行するまで、州内の野生動物の行動に対する理解はほとんど進んでいなかったと述べています。たとえば、受信機を付けた動物が死んだ場合、職員がその現場に駆け付けたときには、死体がすでに腐敗し、死因を特定するのは不可能に近い状態でした。Shapiro 氏は「データの可能性を最大限に活用できていなかったので、その状況を変える必要がありました」と語ります。

数千頭の動物の受信機から集められた GPS データを処理していたバックエンドのレガシー システムも非効率性に満ちていました。クエリを実行するとシステムが完全にクラッシュすることも多く、過去のデータをわかりやすく対処しやすい形にするには何日もかかりました。スタッフはこれらのツールを必要としていましたが、効率よく使用できないことに不満を持っていました。データベース内の GPS 位置情報が 2,000 万件を超えることが予想され、天然資源省がスケーリングとデータドリブンな意思決定を行うためには、システムのモダナイズが不可欠でした。

2021 年に Google Public Sector の協力により、ユタ州 DWR は Wildlife Tracker アプリケーションを Google Cloud 上で再構築しました。このプロジェクトの目標は、迅速なスケーリングを可能にし、限られたリソース、ハードウェア、その他の管理ツールに関する懸念を払拭するサーバーレス データ ウェアハウスを作成することでした。DWR の職員は、完全にサーバーレスのエンタープライズ データ ウェアハウス ソリューションである BigQuery により、過去データのデータベースを迅速に検索し、動物の行動パターンを確認できるようになりました。また、ソリューションはクラウドベースであるため、データ ウェアハウスは無制限にスケーラブルで、データセットが急速に拡大しても、ハードウェアのアップグレードを心配する必要がありません。

新たな標準の設定

2020 年 8 月に実運用が始まってから、DWR は Google Cloud により発信機追跡システムとのタイムラグをなくすことができました。DWR の職員は現在、1 回のクエリで過去 20 年分のデータを検索できます。以前は数日かかっていたことがわずか数分で可能です。また、データの理解と活用も促進され、データに基づく個体数管理の判断、移動や気候パターンの影響の評価、野生動物の誕生や寿命の正確な追跡もできるようになりました。

ロッキー マウンテン エルクの追跡に関しては、1 回のクエリで 1 分もかけずに、正確な位置を把握し、それ以前の位置を確認し、移動パターンを判断できるようになりました。  

DWR の先進的な取り組みは、ユタ州の野生動物の今後何世代にもわたる維持、繁栄、保護という使命を支える新たなデータドリブンのアプローチにつながっています。


- 米国州政府、地方行政機関および教育機関担当マネージング ディレクター Brent Mitchell
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