リーグ再開へ: 新シーズン開幕を控えた MLB をベアメタル版 Anthos がサポート
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 3 月 26 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
これまでに経験したことのない予想外の長い 1 年が過ぎた後、長くて寒い冬が続きました。2020 年の野球シーズンは、世界規模のパンデミックによる影響を受け、今年もどうなるか危ぶまれていました。しかし、ついに春季トレーニングが始まり、幸先の良い新しいスタートを切ることができました。今シーズンも楽しみでなりませんが、それに加えてベアメタル版 Anthos を使用した新しいアーキテクチャにも大いに期待しています。
MLB ではすでに、Google Cloud のサービスを幅広く活用しています。Google Cloud からの mlb.com のブロードキャストや、Compute Engine、Google Kubernetes Engine(GKE)、Cloud SQL、負荷分散、Cloud Storage の利用などが、例として挙げられます。また、テストと開発には GKE を、そして分析には BigQuery を使用しています。また、Anthos 導入から 2 期目となる今シーズンは、パフォーマンス上の理由により、球場内で実行する必要があるアプリケーションをホストするために、球場で Anthos を実行します。たとえば、MLB のベースボール指標プラットフォーム Statcast では、カメラが収集する球速、ボールの軌道、選手の姿勢といったあらゆるデータがリアルタイムで Statcast パイプラインに送信されます。Statcast はそれらのデータをわかりやすい分析情報へと変換して画面に表示し、アナウンサーはその一部を試合の実況解説に利用します。そのため、バットにボールが当たってから、そのデータが画面に表示されるまでの時間を最短にすることがファンの視聴体験にとって非常に重要であることは言うまでもありません。
2020 年は VMware で Anthos サーバーを実行していましたが、かねてからベアメタル版 Anthos の実行を計画していました。こうすることで、31 か所の球場で維持しなくてはならないスタックを簡素化することができるからです。そこで、11 月に ベアメタル版 Anthos が一般提供されて以来、パートナーである Arctiq と協力して次期シーズンに向けたベアメタル版 Anthos のデプロイを進めてきました。ベアメタル版 Anthos では、仮想化レイヤを排除することで、ハードウェアの障害発生時にサーバーを簡単に交換できます(球場は、温度管理されたデータセンターとして設計されていないため、想像以上にハードウェア障害が頻繁に発生します)。障害が発生したら新しいサーバーに入れ替え、Ubuntu と Anthos でイメージを作成するだけで、クラスタは自動修復してアプリを自動的にデプロイします。
このようなリモート オペレーションは、パンデミックへの対応において特に役立ちます。2020 年のシーズン最盛期、地域の法令によってほとんどのベンダーや技術者がオンサイトで作業することができなくなり、置き換えのしやすさがますます重要になりました。2021 年も、多数の同じような制約を受けることになるでしょう。しかし、ベアメタル版 Anthos により、私たちもアジリティを増しています。たとえば Toronto Blue Jays は、フロリダ州のダニーデンで今シーズンの開幕を迎えることになっています。チームが今年中に本拠地トロントに戻ることができれば、ベアメタル版 Anthos を使用してチームを簡単にフォローできます。
今後の Anthos には大きな計画があります。Anthos クラスタはいずれ、マルチテナント リソースとなり、食品ベンダーやエンターテイメント プロバイダなど、球場で低レイテンシのコンピューティングにアクセスする必要があるすべての人に提供できるようになります。各ベンダーが独自のサイロを提供するのではなく、MLB が Anthos をサービスとして提供します。
2020 年の MLB シーズンは異例のシーズンとなりましたが、2021 年のシーズンもそれなりに思いがけない展開になるかもしれません。しかし、球場内のサーバー インフラストラクチャに関しては、Google Cloud とベアメタル版 Anthos のおかげで大きな安心感と期待に満ちています。プレーボールの掛け声が待ちきれません。
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-メジャーリーグ ベースボール テクノロジー インフラストラクチャ担当バイス プレジデント Kris Amy