Google Cloud VMware Engine が一般提供に
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2020 年 7 月 1 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
ワークロードをパブリック クラウドに移行するのは、必ずしも容易ではありません。また、クラウドの弾力性、経済性、革新性を最大限に活用しようとする場合、通常は新しいアプリケーションの作成が必要になります。しかし、サードパーティ製や何年も前に作成されたものなどの既存アプリケーションが存在する際は特に、新しいアプリケーションの作成ができない場合もあります。既存のアプリケーションをクラウド用に書き換える場合は、再構築したアプリケーションを障害から保護し、モニタリングしてセキュリティを確保するといった管理作業をどうするかという課題が伴います。多くの既存のアプリケーションでは、このような管理が VMware 製品 などのプラットフォームで行われます。ここで、次のような疑問が生じます。このような重要なアプリケーションを完全に再設計する明確な方法を知らない場合、それらのアプリケーションでクラウドのメリットを活用するにはどうすればよいでしょうか?
Google Cloud VMware Engine の一般提供開始
本日、Google Cloud VMware Engine が一般提供となりました。Google Cloud VMware Engine を使用すると、VMware ソリューションをベースとした既存アプリケーションを、リファクタリングや書き換えを行うことなく Google Cloud にシームレスに移行できます。このサービスは現在、us-east4(北バージニア、アッシュバーン)リージョンと us-west2(カリフォルニア州ロサンゼルス)リージョンでご利用いただけます。今年後半には、世界中の他の Google Cloud リージョンにも拡大される予定です。
Google Cloud VMware Engine には、VMware vSphere環境 (以下 vSphere 環境) を Google Cloud でネイティブに実行するために必要な機能がすべて用意されています。このサービスは、パフォーマンスと信頼性の高い Google Cloud インフラストラクチャ上にある専有環境で、VMware テクノロジー(vSphere、vCenter、vSAN、NSX-T、HCX)を含むフルマネージドの VMware Cloud Foundation ハイブリッド クラウド プラットフォームを提供して、企業の本番環境ワークロードをサポートします。専有する vSphere 環境に接続することにより、オンプレミスのワークロードをすばやく、そのままの状態で、Google Cloud に拡張または移行できます。
Google Cloud VMware Engine は Google の自社サービスであり、Google Cloud が完全に所有および運営し、サポートを提供します。アプリケーションのリファクタリングに伴う費用や複雑さに煩わされることなく、シームレスにクラウドに移行して、オンプレミス環境でワークロードを一貫して管理できます。オンデマンドのセルフサービス モデルに移行することで、運用の負担を軽減すると同時に、既存のツール、プロセス、スキルセットを使用して継続性を確保したり、Google Cloud サービスを活用して vSphere 環境を強化したりすることが可能です。
Google Cloud VMware Engine は、クラウドで vSphere 環境を実行するための Google 独自のソリューションです。a)ユーザー エクスペリエンス、b)エンタープライズ クラスのインフラストラクチャ、c)統合ネットワーキング、d)豊富なサービス エコシステムという 4 つの領域で、差別化されたエクスペリエンスを提供します。具体的に見ていきましょう。
シンプルなユーザー エクスペリエンス
完全に機能する Google Cloud VMware Engine のインスタンスを立ち上げるのは簡単です。Google Cloud Console で 4 回クリックするだけで、数分後には新しい環境を使い始めることができます。これは、新しいオンプレミス データセンターの設計に要する時間とは比べ物になりません。データセンターの設計には、ハードウェアとソフトウェアの注文、ラッキング、ケーブル設置、インフラストラクチャの構成が必要で、数日から数週間もかかる作業となります。それだけでなく、Google Cloud VMware Engine を使えば、新しい環境が本稼働した後に、ボタンをクリックするだけで環境の拡張、縮小が可能です。
ユーザー エクスペリエンスをさらにシンプルにするため、既存の Google Cloud のID を使って vSphere 環境をプロビジョニングできます。サポートは Google Cloud が統合的に提供し、問題領域が vSphere 環境か Google Cloud かを問わず、すべてのサポート対応が一元化されています。この Google Cloud サポート サービスは、VMware の完全な認定と証明を受けているものであり、VMware のサポートが完全統合されたシームレスなサービスを提供します。サポート サービス関連の利用状況は、Google Cloud Console の標準の [お支払い] ビューで確認できます。VMware のネイティブ ツールを使用する必要がある場合は、使い慣れた vCenter インターフェースにログインして、通常の方法で vSphere 環境の管理とモニタリングを行えます。
エンタープライズ クラスの専用インフラストラクチャ
Google Cloud VMware Engine は、パフォーマンスと信頼性に優れた大容量のインフラストラクチャが基盤となっているため、高速で高可用性の vSphere 環境を低コストで実現します。この環境の特長は以下のとおりです。
- 完全に冗長な 100 Gbps の専用ネットワーキング。99.99% の可用性、低レイテンシ、高スループットを確保し、特に要求の厳しいエンタープライズ ワークロードのニーズを満たします。
- ハイエンドのオールフラッシュ NVMe デバイス上の VMware vSAN スタックによるハイパーコンバージド ストレージ。これにより、分散ストレージ システムの規模、可用性、信頼性、冗長性を備えた超高速のパフォーマンスが可能になります。
- 最近の世代の CPU(第 2 世代 Intel Xeon Scalable プロセッサ)。非常に高い(定格 2.6 GHz、バースト時 3.9 GHz)性能でワークロードを処理できます。
- 1 ノードあたり 768 GB の RAM、19.2 TB の元データ容量。vSphere 環境ではコンピューティングのオーバープロビジョニングが許可されているため、既存環境内の多くのワークロードでメモリやストレージに制約があることがよくあります。メモリとストレージ容量が多い Google Cloud VMware Engine のノードなら、1 ノードにより多くのワークロード VM をデプロイできるため、全体的な費用削減につながります。
コンピューティングとストレージのインフラストラクチャはシングル テナント方式で、他のお客様と共有されることはありません。VMware vSphere クラスタ内の他のホストへのネットワーク帯域幅も、各お客様が専有できます。そのため、専有環境のプライバシーとセキュリティが確保されるだけでなく、高い精度でのパフォーマンス予測が可能になります。
統合されたクラウド ネットワーキング
Google Cloud VMware Engine 内の vSphere 環境は、VPC サブネット上に直接構成されています。したがって、他の Google Cloud サービスに接続する場合と同様に、Cloud Interconnect や Cloud VPN などの標準メカニズムを使用して VMware ソリューションをベースとしたサービスに接続できます。これにより、費用が高く、帯域幅が制限された接続を追加で確立する必要がなくなります。
Google Cloud で実行されているワークロードやサービスにプライベートで直接アクセスするレイヤ 3 ネットワーク接続も提供されます。プライベート アドレスを利用した高速で低レイテンシの接続を使用して、VMware 製品によるワークロードと Google Cloud のその他のサービスを接続できます。これにより、ハイブリッド アプリケーション、バックアップ、集中パフォーマンス管理などのさまざまなユースケースで、高速アクセスと高水準のセキュリティを確保することができます。ネットワーキングの複雑さが大幅に解消されることで、Google Cloud に統合された、シームレスで安全なエクスペリエンスが実現します。
豊富なサービスのエコシステム
VMware のユーザーは、vSphere 環境のネイティブ機能に加え、障害復旧、バックアップ、モニタリング、セキュリティなど、考えられる IT ニーズに応える充実したサードパーティ エコシステムのプラットフォームにも価値を感じています。このサービスは、ネイティブの VMware プラットフォームを提供するため、変更を加えずにこうしたツールを使い続けることができます。
Google Cloud VMware Engine には、エコシステムの各ツールを有効にする独自の機能が装備されています。システムの権限を昇格させることにより、オンプレミスの場合と同じように、サードパーティ製ツールをインストールして構成できます。Zerto などのサードパーティは、障害復旧などのミッション クリティカルなユースケースのために、この統合を有効活用しています。
また、VMware ソリューション ベースのアプリケーションと併せて、ネイティブの Google Cloud サービスや Google のエコシステム パートナーも活用できます。たとえば、Cloud Storage と、Veeam、Dell、Cohesity、Actifio などが提供するサードパーティ製データ保護ツールを一緒に使用して、バックアップの可用性や費用をさまざまな選択肢から選ぶことが可能です。サードパーティの KMS ツールを Compute Engine VM で外部から個別に実行して保存データを暗号化し、環境のセキュリティを強化できます。
さらに、ネイティブの Google Cloud サービスもあります。Google Cloud VMware Engine 内で実行されている VMware vSphere ベース (以下 vSphere ベース)のデータベースやアプリケーションを、クラウド ネイティブのワークロードとともにオペレーション ファミリー(旧 Stackdriver)を使って管理できるようになりました。vSphere ベースのワークロードを Google Kubernetes Engine や Cloud Functions などのサービスと相互運用することができます。vSphere 環境のストレージを拡張する場合は、NetApp Cloud Volumes などのサードパーティ ソリューションが使用可能です。また、サービス内に直接デプロイされた Anthos によって、Google Cloud VMware Engine のプライバシーとパフォーマンスを活用しながら、VMware ソリューションによるワークロードのすぐ隣でクラウド ネイティブのワークロードを実行できます。その他にも、BigQuery を使って VMware vSphere データソースの分析を強化したり、AI や機械学習のサービスを活用してインテリジェント化を促したりすることができます。
クラウドへの移行は必ずしも難しいチャレンジではありません。vSphere環境を Google Cloud に移行することにより、オンプレミスのアプリケーション環境の利点を維持しながら、次世代のハードウェアやアプリケーション サービスを活用することが可能になります。Google Cloud VMware Engine の詳細については、スタートガイドをご覧ください。7 月 27 日の週に開催される Google Cloud Next ‘20: OnAir セッション Google Cloud VMware Engine のご紹介もぜひご視聴ください。
- By Google Cloud VMware Engine グループ プロダクト マネージャー Manoj Sharma