Vida Health、Google Cloud ソリューションで仮想医療を推進
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 6 月 23 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
編集者注: このゲストブログでは、医療業界のスタートアップである Vida Health がどのように Google Cloud 上に仮想プラットフォームを構築し、コストとオーバーヘッドの削減と、医療提供者の貴重な時間の節約を実現したのかをご紹介します。また、機械学習を活用し、データを通じて患者の健康状態を改善する同社の試みについてもご紹介します。
Vida Health の仮想医療プラットフォームは、全人的医療の提供を目的に設計されており、心と身体のさまざまな病状に対して総合的な治療を提供しています。当社は、デジタル変革を実現するために Google Cloud を選択し、マネージド プラットフォームから Google Kubernetes Engine(GKE)に切り替えることで、コストを 60% 削減できました。現在は、BigQuery ML などの Google ソリューションを使用して、患者や臨床医を支援する革新的な製品を開発しています。
デジタル変革をさらに推進
従来、医療業界は、リスク回避と現状維持という態勢に偏りがちで、進化に時間がかかっていました。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックにより、このような考え方の見直しが必要となり、多くの医療機関がデジタル変革の計画をさらに推進するようになりました。この変革の最前線に立っているのは、仮想医療と遠隔医療です。仮想医療と遠隔医療により、医療機関は対面の場合と同様にウェブやモバイル上で高品質の患者体験を提供できるようになります。
このパンデミックの時期において、Vida Health では、需要の拡大に対応するために、新たにクラウド プロバイダを導入し、従来のインフラストラクチャをスケールしなければならないという課題に直面していました。また、従来の CSP の機械学習(ML)サービス スイートからは、当社が求めていた付加価値が得られていないと感じていました。競合のクラウド テクノロジーについて調査を行った結果、柔軟性、安全性、スケーラビリティに優れたソリューションである Google Cloud を選択しました。Google Cloud では、シームレスな統合によって、運用オーバーヘッドを削減することができました。また、ML を活用した革新的な製品を構築するためのツールが用意されていました。
医療市場における Vida の主な差別化要因は、当社のプラットフォームにあります。多くの競合他社が単一の病状をターゲットにしたソリューションを提供していますが、当社は、水平的なアプローチを採用し、心と身体のさまざまな病状に対して総合的な治療を提供するプラットフォームを構築しました。米国人のほぼ半数が、複数の慢性疾患を有しています。当社はそのような状況を踏まえた全人的なヘルスケア ソリューションを提供したいと考えています。
当社のプラットフォームは、ビジネス インテリジェンス、データ アプリケーション、組み込み分析向けのエンタープライズ プラットフォームである Looker など、さまざまな Google ソリューションを基盤としています。統合型のダッシュボードでは、Looker によってすべてのデータが集約され、各患者の全体像を把握できます。また、人工知能(AI)と ML テクノロジーを活用するために、Google のサーバーレス データ ウェアハウスである BigQuery を使用し、すべてのデータを 1 か所に保存しています。BigQuery のデータセットがより広範囲に及んでも、当社の ML エンジニアやデータ サイエンティストはデータを簡単に使用して実験を行うことができます。実験を行ったデータは、BigQuery ML を使用して本番環境に取り込むことができるため、SQL のスキルだけで ML モデルを構築できます。
ML で新しいユースケースに対応
当社プラットフォームでは、AI / ML を活用し、さらにはそれらの可能性を探求するために、AI ツールのみに依存するのでなく、人間参加型のプログラムや治療も組み込んでいます。たとえば、コーチ、セラピスト、栄養士がそれぞれの患者に対応し、ヒント、戦略、アカウンタビリティを提供しています。患者と医療提供者のやり取りはデジタル化および保存され、堅牢なトレーニング データセットとして活用できるようになります。当社では、利用可能なすべての Google ツールを使用することで、それらのトレーニング データセットを運用できるようになりました。医療提供者とのやり取りのデータを使用することで、患者に対する治療の進捗状況を追跡し、減量、ストレス軽減、血糖値の管理など、患者の健康状態が改善しているかを確認できます。
私たちは医療提供者に超人的な能力を提供したいと考えています。つまり AI / ML を使用して、会員と直接的には関連しないすべてのタスクを管理および自動化し、医療提供者の時間とエネルギーを患者に集中させるということです。現在、Google のツールを使用し、医療提供者の診断記録を書き起こしてデータ分析を適用することで、患者の健康状態を改善するための知見を明らかにするという実験を行っています。医療提供者向けのロードマップには、時間を節約するためのソリューションが他にも存在します。たとえば、チャット機能の標準的なフィールドに事前入力するソリューションや、1 日の終了時の承認を管理するソリューションなどが例に挙げられます。
当社は現在、BigQuery ML を「次のアクションのレコメンド機能」に使用しています。これは、モバイルアプリの会員向け機能であり、患者から提供されている過去の情報データセットに基づいて、治療の次のステップを患者に推奨するものです。お客様が治療を開始する際は、診断のスケジュール設定、健康トラッカーの追加、健康に関する動画の視聴など、基本的なステップが推奨されます。そして、患者が当社のプラットフォームを使用する期間が長くなるほど、推奨システムはより高度になります。
医療提供者側には Vidapedia が用意されています。これは、医療提供者が参照できる治療プロトコルの包括的なリストです。当社は過去 1 年間に Vidapedia カードに投資してきました。このカードには、それぞれ固有の臨床プロトコルが記載されており、全カードは体系的にまとめられています。150 枚のカードが存在しますが、医療提供者はこれらの情報をすべて頭に入れておく必要はありません。当社が BigQuery ML を使用して、患者がこれまでの治療で行ってきたアクションを抽出します。そのデータを使用して、特定の病状に最も関連性の高いカードを医療提供者におすすめします。その情報はすぐに入手できるため、各会員に対してオフラインで費やす時間が短縮されます。結果的に、効率性が向上し、治療にかかるコストを削減できます。
また、当社は ML を顧客の獲得プロセスにも使用してきましたが、これは従来、医療のスタートアップにとってはコストのかかる取り組みでした。企業はまず、市場に参入して保険会社や医療提供者に製品を販売する必要があります。次に、患者ベースの獲得できる可能性のある最大の市場規模(TAM)を理解し、それから自分たちのプラットフォームを使用することが最適な判断であることをそのセグメントに納得してもらう必要があります。当社は、このプロセスに ML をうまく適用し、数百種類ものデータ入力を選別して、プラットフォームを使用する可能性のあるユーザーをより適切に予測し、時間とコストを節約しました。
Google Cloud ソリューションで仮想医療を推進
当社が現在使用している Google Cloud スタックの残りの部分は堅牢であり、BigQuery スロット自動スケーリングが備わっています。これは、パフォーマンスを犠牲にすることなく、コストを最適化し、トラフィックの急増に合わせてスケールできるプレビュー機能です。データのレポートやダッシュボードには Looker を使用し、データを迅速かつアドホックに可視化するためにはデータポータルを使用しています。当社のリレーショナル データベースは Cloud SQL for PostgreSQL であり、データの検出や検索には Data Catalog を使用しています。Google スタックでは他にも GEK、Dataflow、Data Fusion、Cloud Scheduler、AI Platform などの Google サービスを使用しています。
Google の製品とサービスをシームレスに統合することで、時間を大幅に節約することができました。当社の臨床プロトコルの多くは Google Docs で作成されており、そのデータは BigQuery に直接インポートできるため、時間と労力を大幅に節約できました。また、Looker を使用して組織全体がデータにアクセスできるようにし、BigQuery ML を使用してデータに基づいた ML アプリケーションを構築しました。これは、競合他社と一線を画す秘密兵器のようなものです。
世界の需要の変化に対応する医療業界を支えるため、当社は Google Cloud と協力して、患者や医療提供者のニーズを超える最先端のソリューションを提供していきます。
詳細については Vida Health をご覧ください。スタートアップ企業向けプログラムにお申し込みいただくと、スタートアップのための財務、ビジネス、テクニカル サポートを利用できます。また、Looker および BigQueryを使用してビジネス インテリジェンスのモダナイゼーションを達成した他の組織についての記事もお読みいただけます。
-Vida Health エンジニアリング担当バイス プレジデント Amol Kher