ライフ サイエンスの研究開発向けに構築できる 4 つのエージェント ワークフロー
Pranav Mehrotra
Head of GTM & Partnerships - New Frontiers, Google Cloud
Joe Ledsam
Google Health JAPAC
※この投稿は米国時間 2025 年 11 月 22 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
生成 AI を活用した AI エージェントは、目標を解釈し、複数のステップから成るアクションを計画し、システム全体で独立して動作できるインテリジェントなコラボレーション パートナーとして機能することで、業界を急速に変革しています。これにより、企業がデータを見つけ、理解し、行動する方法に大きな変化がもたらされています。最近のブログでは、AI エージェントが複数の業界をどのように変革しているかを概説しています。
以下では、マルチエージェント システムを通じて、新しい治療薬候補の発見と前臨床最適化を加速するモジュール型のエンドツーエンド プラットフォームを作成する方法について説明します。このシステムは、どのような疾患や治療法であるかにかかわらず、疾患概念の概要から、成功の可能性が高い有力候補群を導き出せるように設計されています。
Google の専用オープンウェイト モデルを基にした特化型 AI エージェントが、少数ですが重要な役割を果たしています。こうしたエージェントは、より特化した用途に合わせてさらにチューニングやトレーニングを施すことができます。以下のエージェントはすべてオープンウェイト モデルをベースとしているため、モデルに対してさらにチューニングやトレーニングを施し、強力なエージェントを構築することもできます。
ライフ サイエンス向けに構築できる 4 つのエージェント
1. MedGemma: 「戦略的インテリジェンス エージェント」
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専門知識: 非構造化生物医学テキスト、医療画像、臨床データ、科学文献の深い理解と統合。
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機能: 専門知識を持ったエージェントとして機能します。認知オーケストレーターの指示に従って、生物医学コーパス(例: PubMed、テキストの患者記録、胸部 X 線などの他のモダリティ)をディープ検索して統合してから、所見を抽出し、コホートを構築して、知識を要約します。MedGemma が特に有効なのは、厳格なバージョン管理(規制対象製品など)や推論費用の削減が必要なユースケースです。特定のユースケースへの適応に大幅な変更が必要な場合にも特に有効です。また、高速でコスト効率も優れているため、速度とコストが重要なボリュームが多い医療のユースケースに非常に適しています。これらのユースケースの多くは、ライフ サイエンスで非常に一般的です。
2. TxGemma: 「前臨床アナリスト」
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専門知識: 治療用分子の機能性特性と安全性特性の予測
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機能: 新薬候補の薬物動態、透過性、毒性、有効性などの前臨床特性をコンピュータを利用して予測します。
3. Gemini 2.5 Pro: 「認知オーケストレーター エージェント」
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専門知識: 高度なマルチステップの推論、動的プラニング、コンテキストの理解によって創薬ワークフロー全体を管理。
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機能: 目標の概要を解釈し、タスクを順序付け、結果を評価し、ワークフローを動的に適応させることで特化型 AI エージェントに指示を出し、科学者が最終的な治療目標を達成できるようにします。このオーケストレーターは、さまざまなツールにもアクセスします。ツールは特化型の完全なエージェント(MedGemma など)や特定のモデルのエンドポイント(AlphaFold など)になる場合があり、その機能に関する明確な自然言語の説明が付けられます。たとえば、MedGemma ツールは「与えられた病状に基づいて、潜在的な疾患の標的を特定するために、生物医学文献を検索して統合するツール」として使用できます。
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注: バージョンがロックされたモデルや変更管理が必要なユースケースでは、このオーケストレーションに Gemma(オープンソース)を使用できます。
4. AlphaFold-2 と分子ドッキング ツール: 「分子アーキテクト」
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専門知識: 分子標的の正確な 3D 構造を予測し、候補分子が物理的にどのように相互作用(ドッキング)するかをシミュレートします。
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機能: 薬物と標的の相互作用に関する基本構造のブループリントを作成し、構造ベースの設計、バーチャル スクリーニング、特異性分析を可能にします
手順は次のとおりです。
フェーズ 1: 標的を見つける
科学者がシステムにプロンプトを入力します(例: 「パーキンソン病の新しい標的を見つけて」)。MedGemma エージェント(「AI リサーチ アナリスト」)は、数百万件の出版物と臨床データを瞬時にスキャンして、有望な生物学的標的を特定します。オーケストレーターが簡潔なレポートを生成し、科学者が最終的なターゲットを承認します。
フェーズ 2: 候補を生成する
AlphaFold エージェント(「分子アーキテクト」)は、ターゲットの 3D モデルを構築します。次に、TxGemma エージェントがバーチャル スクリーニングを実施し、数千もの潜在的な薬剤の「鍵」をテストして、ターゲットの「錠」にどのように「適合」するかを確認し、最終候補のリストを作成します。
フェーズ 3: 「設計、テスト、改良」のループ
これは、候補を迅速に改善するための要です。
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予測: TxGemma(「前臨床アナリスト」)は、各候補についてバーチャル シミュレーションを実行し、実際のパフォーマンス(効力、毒性など)を予測します。
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トリアージ: オーケストレーターがそれらを分類します: 「促進する」(非常に優れている)、「アーカイブする」(行き詰まり)、「最適化する」(有望だが欠陥がある)。
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改良: 「最適化する」候補は、特定の欠陥を修正するために自動的に改良され、すぐにループに戻されます。
この設計 -> ドッキング -> 予測 -> 改良のサイクルは、Google Cloud のハイ パフォーマンス コンピューティングで数千回実行され、物理的なラボでは不可能な速度で薬物設計を繰り返します。
フェーズ 4: ラボでテスト可能な有力候補を選定する
ループの後、オーケストレーターは、最適化された最終的な有力候補を人間の科学者に提示します。科学者が最終的な選択を行い、MedGemma が再び関与して、実際のラボテストに最適な戦略を設計します。
発見のために「試行錯誤する」という費用のかかる部分を、この迅速なコンピュータを利用したワークフローに移行することで、ラボのリソースを成功の可能性が最も高い候補に集中させることができ、新しい治療法へのより迅速でインテリジェントな道が開かれます。
リファレンス アーキテクチャ
この図は、基盤となるサービスと、サービス間のデータの流れ、サービスの連携方法を示しています。


この高度で反復的なワークフローを実行するには、堅牢でスケーラブルかつ安全なクラウド プラットフォームが必要です。Google Cloud は、各 AI エージェントのニーズとワークフロー全体に直接対応する包括的なサービス スイートを提供し、データの完全性、コンプライアンス、コンピューティング能力を確保します。
Google Cloud の使用を開始する方法
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Vertex AI Search は、このエージェントの機能のコアサービスです。内部の研究ドキュメント、PubMed の文献、臨床試験データなど、非公開の生物医学データのコーパスに対して、高度な検索拡張生成(RAG)システムを構築できます。これにより、エージェントは自然言語のクエリに回答し、引用付きで情報を統合できるようになります。
Vertex AI。Google Cloud は、最適化されたマネージドの AlphaFold 環境と統合機能を提供します。GPU または TPU のアクセラレーションを備えた Vertex AI Training を使用することで、数千ものタンパク質のフォールディングとドッキングのシミュレーションを並行して実行でき、高スループットのニーズにも対応できます。エージェントを作成するには Vertex AI Agent Builder を使用します。
ご協力いただいた Ryan Ye Min Thein 氏(Google Cloud、カスタマー エンジニア)と Justin Chen 氏(Google Health、医療従事者スペシャリスト)に感謝いたします。
-Google Cloud、GTM およびパートナーシップ責任者 - ニュー フロンティア担当、Pranav Mehrotra
-Google Health JAPAC 担当、Joe Ledsam



