Google Cloud と Fitbit、クラウドの分析とインサイトを使って、病院に健康管理のよりよい全体像を提供

※この投稿は米国時間 2022 年 9 月 27 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

優れた技術はいつも、世界の新しい見方や向き合い方を示してくれます。顕微鏡の登場により、科学への新たな理解が深まりました。電車や電話は、形は違えど、どちらも物理的距離への認識を変えました。今日、クラウド コンピューティングは、人類の健康を向上させる方法を大きく変えようとしています。

従来、医療システムと聞いて思い浮かぶのは、通院や、時には数日間の入院などでした。もちろんそうしたことは、今でも非常に重要です。検査を行い、患者の情報を集め、診療を設定するのですから。ただ、構造面を考えた場合、やはり限界があります。患者にとって、何度も病院に足を運ぶのは大変ですし、大きな負担がかかります。医療システムにとっても費用がかかりますし、どれだけ上手く行ったとしても、患者の健康状態をある時点のみでしか把握できません。

では、その健康状態のスナップショットに、医師の診察による患者情報のストリームを含めることができ、病気の予測や予防に役立つとしたらどうでしょうか。体温や心拍数、酸素濃度などを感知するウェアラブル デバイスの進化と、クラウドや人工知能（AI）技術の力を組み合わせることで、患者の健康状態へのより正確な理解が深まります。

こうした広い視野を持つことを目標に掲げ、ハーグの Haga Teaching Hospital の心臓専門医、活動、睡眠、ストレス、心拍数などを記録する世界有数のウェアラブルである Fitbit、そして Google Cloud はコラボレーションを行いました。

まず、心臓病のリスクがあると診断された 100 名を対象に、パイロット スタディ（ME-TIME）を行いました。病院の心臓専門医が、初診の際に、患者に心電図モニター1付きの Fitbit の最新アクティビティおよびヘルス トラッカーである Fitbit Charge 5 を渡し、家で装着してもらいます。

ユーザーの同意のもと、デバイスは特定の患者の行動指標に関する情報を、暗号化された状態でクラウド経由で病院に送信します。

このデータは、（Haga Teaching Hospital が承認した）医師と病院のデータ サイエンティストのみがアクセスでき、研究期間中、医学研究の目的以外には使用しません2。ユーザーの同意を得て、患者の身体活動量を含むデータを Haga の医師がモニタリングし、診察で事前に収集したその他の個人の臨床情報と比較します。

Haga Teaching Hospital は、ユーザーの同意を得て、こうしたデータを自身の持つ仮名化されたエクスペリエンス データと比較します。こうすることで、特定の心臓疾患の潜在的なパターンや異常について理解を深めることができます。これを可能にしたのが Google Cloud のインフラストラクチャです。暗号化されたデータを大規模に保存し、人工知能（AI）とデータ分析ツールによってほぼリアルタイムの解析を行います。たとえば、このデータを予測分析することで、心臓発作や脳卒中などの命に関わる病気の初期兆候を特定できるようになります。これにより、症状が出る前でも医師が詳しく調べたり、予防的治療を行ったりできます。

Haga は、Google Cloud の新しいソリューションである Fitbit 用デバイス接続をトライアルの一部として使用しています。このソリューションは、医療およびライフ サイエンス企業向けに提供されています。ビジネス リーダーや臨床医は、Google Cloud を利用して、分析を加速させ、同意した患者の Fitbit データからより深い情報を取得することができます3。

このプロジェクトは、Haga のデプロイおよびデータ処理と分析をサポートした、パートナーである Omnigen とのコラボレーションによって行われます。

オランダの他の病院も、同様のプロジェクトへの参加に興味を示しています。長期的には、医療従事者が国民全体の健康状態をより深く理解し、不必要な通院を減らし、より広範な医療システムの運用を改善するのに役立てることができると考えています。早ければ年末には、プロジェクトの暫定的な結果が得られる見込みです。

「健康はかけがえのない財産です。病を得ればなおさら、その価値が身に沁みます。病気を予防、または、治療ができる時期に発見することができれば、大きな成果が期待できます」と、このコラボレーションを主導してきた Haga Teaching Hospital の心臓専門医である Ivo van der Bilt 博士は語っています。「Google Cloud や Fitbit が提供するようなデジタルツールやテクノロジーにより、医療の可能性が広がり、医療がさらに身近なものになる新しい時代が実現するでしょう。」

「このコラボレーションは、公衆衛生のイノベーションにおいて、Fitbit がどのような支援ができるかを示しています。医療システムやケアプログラムは、プライマリー ケアやセカンダリー ケアに限らない、より効率的で効果的な治療計画を構築できるようになるのです。さらに、患者様には、毎日の健康と生活の質の向上に寄与するツールと、医療チームのチェックに役立つ指標を提供します」と、Fitbit Health Solutions ヨーロッパ、中東、アフリカ担当責任者である Nicola Macwell 氏は述べています。

このコラボレーションは、病院が人間の健康について、よりダイナミックに、豊かに、全体的に理解するという目標に向けた重要なステップです。さらにこのステップでは、透明性を非常に重要視しています。このプロジェクトに参加できることを誇りに思います。また、患者や医療従事者の方々のお役に立てることを今から楽しみにしています。Fitbit やクラウド コンピューティングのようなデジタルツールを活用した医療の可能性は、これからさらに広がっていきます。

^{1. 現在、Fitbit の心電図アプリは特定の国でのみご利用になれます。利用対象年齢は 22 歳以上です。詳しくは、fitbit.com/jp/ecg をご覧ください。}

^{2. Haga Teaching Hospital は、このデータへのアクセス、保存、その他の処理を許可するために必要とされる、同意、通知、その他特定の条件について責任を負うものとします。Google Cloud はこの研究で用いられるデータに対して管理権限を持っていません。これらのデータは Haga Teaching Hospital に帰属します。一般的に、Google と Fitbit のやり取りは、厳格な法的要件に従って行われます。これには、Google が関連性のある Fitbit の健康とウェルネスに関するデータにアクセスし、取り扱う方法も含まれます。これらの義務に関して詳しくは、こちらをご覧ください。}

^{3. これは、デバイス接続のインテグレーションが構築されている Fitbit Web API で利用可能なデータと同じものです。}