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金融サービス

あらゆる金融サービス商品に不可欠な人間中心の発想

2021年4月27日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2021 年 4 月 15 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。 

ブランド エクスペリエンスのオンライン化が進み、デジタル ネイティブ プレーヤーが市場に参入する中、金融サービス機関(FSI)は顧客との関係を保ち、なおかつ強化していくために、人間を中心とした設計思想の採用が求められています。そのため、金融サービス プロバイダは、顧客を念頭に置いてサービスを設計する必要があります。このことは、オンラインを使用する消費者が増え、オンライン分野が堅調な成長を遂げているアジア太平洋地域でとりわけ重要です。

Temasek Holdings、Google、Bain & Company が発表した e-Conomy SEA 2020 レポートによると、2020 年には東南アジアだけで少なくとも 4,000 万人の人々が初めてインターネットに接続し、デジタル サービスの 3 つに 1 つが新規ユーザーによって使用されていることがわかりました。この地域のオンライン人口は 4 億人に達し、デジタル金融サービスや e コマースをはじめとした 7 つのインターネット経済分野では、流通総額が 1,000 億ドルになると予想されています。

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大の影響を受け、新規オンライン ユーザーの 90% がパンデミック後もこういったサービスを使い続ける予定であると表明していることから、この成長の勢いは今後も続くことが予想されています。

e-Conomy SEA 2020 レポートによると、東南アジアでは 2025 年までにデジタル決済の総取引額が 1.2 兆米ドルを超えることが見込まれています。また、社会的距離の安全措置の開始以降オンライン送金サービスの導入実績が 2 倍に増加しており、2025 年にはこうした決済サービスの総額の最大 40% をオンライン取引が占めると予測されています。

顧客が金融サービス プロバイダに期待すること

顧客のオンライン プラットフォームへの移行が進んでいるため、この地域の従来型の FSI のうち、迅速に変革してこの波に乗ることができない組織は取り残され、デジタルに精通したネオバンクとの競争で足場を失う恐れがあります。

現状では、シンガポールの消費者の 71% が、現在使用している銀行に 1 つ以上の不満を感じています。また、PwC の調査によれば、3 つ以上の不満を感じている人のうち、77% がデジタルバンクの口座の開設に関心を示しています。

消費者は、パーソナライズされたリアルタイムのエンゲージメントを求めているため、FSI は顧客の要求を理解してブランド エクスペリエンスを差別化し、ロイヤリティを高めることが求められています。

顧客セグメントが多岐にわたるアジアでは、これは特に困難な課題となりえます。オンライン ユーザーの使用言語は複数あり、先進国に住んでいるユーザーもいれば、発展途上国に住んでいるユーザーもいます。ユーザーが住んでいるコミュニティも、住民のほとんどが銀行口座を持たない場所であることもあれば、金融サービスが高度に発展した場所であることもあります。

セグメントごとに異なる消費者の要件に対応するため、FSI はターゲットとなる顧客のセグメントを特定し、提供するべきソリューションを見極めなくてはなりません。たとえば、農村部の消費者と都市部の消費者とでは、要件が異なっています。

つまり、顧客のニーズを把握し、それに応じてサービス体験を向上させるための、人工知能(AI)とデータ分析を利用したツールが必要になります。それと同時に、運用コストも削減する必要があります。

顧客満足度の向上につながる対話

このような消費者ニーズの変化を受けて、保険会社の FWD グループは、カスタマー サービスの強化、運用コストの削減、アジア展開の推進を目的として AI chatbot を開発しました。

Enzo と名付けられたこの chatbot には、絶対に実装しなければならない能力がありました。それは、顧客が質問やリクエストを入力する際の主な目的、つまり人間の意図を理解するためのより高度な能力です。

これを実現するために、FWD は Google の AI を活用したコンタクト センター ソリューションの Dialogflow と、機械学習テキスト分析ツールの Natural Language を利用して Enzo を構築しました。

特に Dialogflow は、スラングを含む複数の言語で人間の意図を解釈することができるため、必要不可欠なものとなりました。FWD には東南アジア全域に事業を展開する計画があり、多目的言語をサポートすることでこの計画をより迅速に進めることができるようになるため、このことには重要な意味がありました。

chatbot の Enzo がフィリピンに導入されてから 2 か月足らずで、4,000 人以上の顧客からの問い合わせを処理し、FWD の対応能力をこれまでより 7% 向上させました。Enzo はまた、顧客評価で 5 つ星のうち 4.5 を獲得しました。これは同社のチャット サービスと同等の評価でした。

さらにこの保険会社は、本人確認手続きに Google Cloud Vision AIAutoML を使用して、顧客の本人確認書類の有効性を迅速に判断できるようにしています。この AI ツールにより、FWD の運用効率は 20% 向上し、本人確認に費やすコストを半減できました。

FWD などの先見性のある FSI が好調な業績を達成している主な理由は、顧客をあらゆる活動の中心とすべきであることを認識しているからです。FWD の例では、言語を問わず、顧客とのやりとりを動的に翻訳して分析し、コンテキストによって示される本当のニーズを理解する能力がこの地域では特に有用であることが実証されました。

このような形で顧客を理解することは、ブランド認知度やロイヤリティを高めていくうえで大きな役割を果たします。特に、デジタル取引によって人と人との接触が減り、FSI の顧客が日常の銀行取引のニーズを満たすために複数のサービス プロバイダを使用するケースが増えるようになった場合に、大きな効果があるでしょう。

人間を中心とした設計思想を採用することで、プロダクトやサービスが、対象顧客にとって本当に適切かつ有益なものになります。また、銀行が仲介するあらゆる取引において、ユーザー エクスペリエンスを差別化することもできるようになります。

住宅ローンを申し込む人は、単にローンを受けたいのではなく、自分の家を持つことを最終的な目標としています。そのため、銀行は住宅ローンを提供することにとらわれるのではなく、家を購入したいという顧客の要望を中心にしてローンサービスを設計することを考える必要があります。Google Cloud の Lending DocAI といった、金融機関がこうした取り組みを簡単に行えるようにするためのテクノロジーもすでに登場しています。

データの活用と機械学習の導入によりコンテキストを理解するとともに、よりアジャイルな手法を採用することで、FSI は、消費者の期待が変わる中でも、デジタル ネイティブな企業に対する競争力を維持していくことができます。それだけでなく、以前よりも強固な、本物の関係を顧客と築いていくことも可能になるのです。

詳しくは金融サービス向けの Google Cloud をご覧ください。

 

-Google Cloud APAC 金融サービス ディレクター Stuart Houston

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