金融サービス企業は APAC のデジタル面の成長により支払いモデルの再検討を迫られる
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 9 月 3 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
銀行や決済代行業者などの金融サービス機関(FSI)は、自社の断片化した従来の支払いインフラストラクチャを全面的に見直す必要に迫られています。アジア太平洋地域ではオンラインの需要が増大しつつあり、消費者はリアルタイムでパーソナライズされたサービスを求めているため、従来のインフラストラクチャでは要求に対応できません。
市場競争により取り引き手数料が 0 に近くなり、FSI がその穴を埋めるため新しい収益源を見つけることを迫られている現状において、これは喫緊の課題です。
これらの FSI は、オンラインでの採用が増大し、消費者が現金からデジタル決済に移行しつつあるアジア太平洋地域に機会を見出すことができます。
世界的なパンデミックが長引くにつれ、この傾向はさらに継続するでしょう。Visa の調査によれば、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大の懸念から接触の最小化が求められた結果、アジア太平洋地域の消費者の 91% は現金を使用せず、カードやモバイルアプリで支払いを行うようになりました。そして、75% はパンデミックの終了後もデジタル決済を続けるつもりだとしています。
このような習慣は、たとえばインドで表面化しつつあります。YouGov と ACI Worldwide の調査によれば、39% がデジタル決済方法を好んでいるのに対して、デビットカードやクレジット カードを選択しているのは 26%、現金を好むのは 26% です
同国の約 57% は、ホリデー シーズンの買い物で週に 2 回より多く、e ウォレットを含むデジタル決済を使用しており、これは 2019 年の 43% から大きく増加しています。さらに、29% はデジタル決済を最低でも毎日 1 回使用しています。昨年の時点ではこの数値は 15% でした。インドには銀行口座を持たない成人が 1 億 9000 万人存在するため、デジタル決済はさらに大きな成長の余地があります。
しかし一方で、取引の実行失敗が懸念材料となっています。ACI の調査結果では、取り引きの実行失敗を懸念するインドの消費者の割合は、2019 年の 36% から、44% に増大しています。さらに 42% は、偽アプリや詐欺サイトを懸念しており、40% は不正な本人確認(KYC)アップデートや偽のオンライン決済リンクを懸念しています。
消費者が決済方法に懸念を抱いていることは、FSI 企業にとって、よりセキュアで透明性のあるサービスを提供し、市場で差別化を行う機会となります。またこれらの会社は、お客様の好みと買い物の傾向に合わせてパーソナライズされたサービスを提供することで、競合相手より優位に立つことができます。
これを実現するために銀行は人工知能(AI)とデータ分析を適用し、お客様の金融手続きについて統合されたビューを提示できるインフラストラクチャが必要です。これらすべてを従来の決済システムで行うことはできません。
サイロを除去して一貫した支払環境を実現
従来型の銀行や決済代行業者は、プロダクトの所有権を中心に構築されており、スタンドアロンの顧客エクスペリエンスを実現するソリューションのコンポーネントがサイロにより分断されています。
今日の銀行に行くと、クレジット カードやトランザクション アカウント システムが、それぞれ独自に不正行為や犯罪検出を行う処理を実行しているのが見られます。これらは各プロダクトのレベルで開発されているため、それぞれがサイロ内に構築されており、銀行は不正行為を検出するためにいくつもの構造を必要とすることになります。多くの金融犯罪は、エンタープライズのポリシーがシステムやチャネル間で一貫して組み込まれていないために発生します。銀行は、サイロを減らすことでポリシーが適正に有効化されていることに確信を持つことができます。
一方で、消費者は円滑に買い物を行いたいと希望しています。消費者は、取り引きを安全かつ簡単に完了できさえすれば、どのような処理が使用されているかは気にしません。さらに、この買い物のエクスペリエンスによって円滑な購入の流れが中断されてはならず、リアルタイムで処理され、無料またはごく低い料金で行われる必要があります。
決済環境はお客様が望む支払い方法に合わせ、お客様から見て可能な限りシームレス、かつ複雑なトランザクション処理はバックグラウンドで行われる必要があります。
このためには、決済インフラストラクチャをスケーラブルで機動性のあるものにし、季節による需要の急増や、計算リソースのリアルタイムの変動に対応可能とする必要があります。このようなインフラストラクチャは、マイクロサービスとアプリケーション プログラミング インターフェース(API)に対応するクラウドネイティブのアーキテクチャによってのみ実現可能です。このレベルの相互運用性と粒度があれば、社内で、または社外のパートナーとともに新しいサービスを開発可能です。API により、銀行は各種の従来型システムとマイクロサービスを活用するアプリケーションを構築できるとともに、このデータと機能をパートナーと共有し、銀行業界において各種のサイロ化したシステムに付きものの、多くの作業を必要とするシステム統合の課題を排除できます。
FSI は自社のシステムを再構築し、お客様に特化したデジタル決済環境を実現して、ネオバンクや他のフィンテックの競合会社に負けないようにする必要があります。たとえば、若いお客様と年上の世代では、金融サービス プロバイダへのエンゲージメントの方法が異なるというのは、何年にもわたって真実でした。FSI がこれらの消費者ベースとの関係を維持して、成長していくことを希望するなら、決済方針について再検討し、従来型システムへの依存を続けるのではなく、機動性があるクラウドベースの、API ファーストの手法に切り替える必要があります。
銀行が競争力を維持するため Google Cloud をどのように活用可能か
シンガポールに拠点を置くフィンテック企業FOMO Pay は、市場のギャップを見てとり、販売者が Visa QR、WeChat Pay、Alipay などあらゆるモバイル決済オプションを受け付けられる、デジタル決済処理プラットフォームを立ち上げました。FOMO Pay は Google Cloud 上で実行され、毎月 300 万を超えるトランザクションを処理して、サービス中断なしに毎秒 5 つまでのトランザクションを扱うことができます。
同社は Google Cloud のデータ分析、機械学習、AI 機能を使用し、各種のデータソースから分析情報とインサイトを生成して、顧客の期待により的確に対応するため役立てています。また、FOMO Pay がクラウド プラットフォームを選択したのは、Google が機密性の高い決済データ、顧客データの保管と処理を監督するセキュリティと規制の要件を満たせるためです。
オーストラリアの電子請求書決済プラットフォームの BPAY Group も、お客様に影響する課題を解決するため API に切り替えました。同社は 22 年以上にわたって事業を続けてきた結果、以前の方式の再エンジニアリングが必要なことを認識しました。たとえば、従来はバッチ処理システムを使用して請求会社と銀行との間のリスクを処理してきましたが、この方法では 1 つのリクエストにエラーがあるとバッチ全体が拒否され、サービスが中断する結果になりました。また、バッチ処理は完了に時間を要するため、ネオバンクはリアルタイムのトランザクションの使用を好む傾向にあります。
BPAY は、Google の Apigee API 管理プラットフォームを選択して API の開発を推進し、4 つの基本的な API をリリースしました。これにより、各ビジネスはバッチファイルの提出前に支払い情報を検証でき、エラーの可能性が大幅に減少しただけでなく、各銀行に適した形式でバッチファイルを自動的に生成できます。
また、BPAY のパートナーの Zip も、これらの API を使用して、BPAY ロゴのある請求書に対してお客様が後払い(BNPL)サービスを利用できるようにしました。
このような革新的なデジタル決済サービスは、銀行や FSI が次のような品質で定義される適切なインフラストラクチャを設置したときのみ可能になります。
クラウドネイティブで機動性がある
ストリーミング用に構築され、バースト容量を処理可能
堅牢なセキュリティ機能と統合されている
データのインサイトを AI により提供可能
クラウドにより、FSI は支払いフローを収益化し、新規のフィンテック企業などのパートナーと協力するための適切なツールを持ち、革新的な支払いソリューションの開発を推進できます。
Google Cloud は、Apigee や機械学習機能などの包括的なポートフォリオにより、競争が激しく、常に進化し続けている支払い市場において FSI が成功するため、必要なインフラストラクチャを提供できます。
詳しくは、金融サービス向けの Google Cloud をご覧ください。
-Google Cloud APAC 金融サービス ディレクター Stuart Houston