銀行がコアシステムに復元力を導入し、2021 年にイノベーションへの復帰を加速する方法
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2020 年 12 月 11 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
銀行にはパンデミック後の景気回復で果たすべき重要な役割があります。EY Future Consumer Index(EY の今後の消費者指数)調査によると、10 人中 8 人以上が自分の経済状態に不安を覚えており、25% は安定した状態に戻るまでに何年もかかると考えています。銀行は支援の一環として、企業が重要なローンや資金提供を利用できるようにし、ロックダウン後に再び門戸を開き新しい安全対策を実施しながら、オンラインでの銀行取引に難色を示す可能性があるユーザーを含め、誰でも使える、よりパーソナライズされたサービスやデジタル チャネルを消費者に提供できます。
しかし、こうした差別化されたサービスを提供し、顧客がより早く立ち直れるように支援するのは、銀行がシステムに復元力を構築し、イノベーションへの復帰を加速することに集中する必要があることを意味します。Google Cloud と Intel がスポンサーになった IDC のホワイトペーパー Crisis is Accelerating Digital Transformation in Banking, Again(危機が銀行のデジタル変革を再び加速させている)では、IDC Financial Insights のバイス プレジデントである Jerry Silva 氏が、銀行が回復を早めるために投資をどこに集中すべきかについて説明しています。また、同氏は銀行が発展的な強い立場を取り戻すのに役立つ重要なテクノロジーも紹介しています。重要なポイントをいくつかお伝えいたします。詳細については、ホワイトペーパーの全文をご覧ください。
重要なバックオフィス システムの弱点がパンデミックで露呈
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のために、多くの銀行は基盤となるインフラストラクチャの復元力について真剣に検討することを迫られています。「社会的距離」措置の義務付けの結果、数多くの人が支店に足を運ばなくなり、多数の支店が完全に閉鎖され、対応する準備ができていなかったコアシステムやコンタクト センターに大きな負担がかかっています。
さらに、信用ニーズは大幅に増大しました。特に中小企業はパンデミックに伴うビジネス機会の喪失の影響を受けました。その後、銀行は新しい融資機能を実装して融資申し込みの大幅な増加に対処しなければならない課題に直面しました。多くの場合、レガシー システムには必要な柔軟性やスケーラビリティがありませんでした。
現在でも、IDC が 2020 年 10 月に行った COVID-19 Impact on IT Spending Survey(COVID-19 による IT 支出の影響に関する調査)によると、「ニューノーマルまで回復した」と回答した世界中の金融機関は 20% 足らずです。重要な銀行システムに合わせたバックオフィスのモダナイゼーションやクラウドの採用は復元力を高め、将来の混乱に適応するために必要なアジリティを提供するのに役立つ可能性があります。
COVID-19 以前にデジタル変革に投資した銀行は回復の加速を実現
IDC はまた、回復のさまざまな段階を調査し、世界中の銀行の進捗状況を追跡しました。IDC が 2020 年 7 月に実施した調査 COVID-19 Impact on IT Spending Survey では、北米の銀行の 89% と EMEA の銀行の 83% が事業の継続、コストの最適化、業務の復元力の構築を引き続き重視していることが判明しました。逆に、ウイルスの影響が早くから感じられたアジア太平洋リージョンの 77% の銀行は、すでに長期的な変革プロジェクトを加速しており、イノベーションに焦点が戻ってきています。
考慮すべき重要なことは、COVID-19 の前にすでに変革に投資していた一部の銀行は、回復の後期に飛躍し、変革を優先しなかった他の銀行との間にいわば「情報格差」を生み出すことができた点です。IDC Financial Insights のバイス プレジデントである Jerry Silva 氏は、Road to Recovery and Growth in Banking(銀行の回復と成長への道)のウェブキャストで「情報格差」の概念について詳しく説明しています。
今後の銀行をサポートするテクノロジー
私たちが学んだのは、COVID-19 がデジタル テクノロジーの採用をさらに促進するということです。つまり、銀行も同様にデジタル変革を加速する必要があります。オープン API、マイクロサービス、柔軟なデプロイモデルなどのテクノロジーを活用すると、銀行はパンデミックによって明らかになった前述の重要な課題をいくつか克服できます。
一つの方法は銀行がオープン API とマイクロサービスを活用して、柔軟性に欠けるレガシー バンキング システムのモダナイゼーションやモジュール化を行い、今後新しいサービスや機能をはるかに迅速に構築することです。Google Cloud は金融機関と協力して、オープン API を通じて革新的なプロダクトやサービスを提供し、銀行が新しいデジタル配信チャネルで利用客にリーチできるようにします。
さらに、Google Cloud は Temenos などの信頼できる金融サービス ソリューション プロバイダの成長するエコシステムと提携して、銀行がミッション クリティカルなコアバンキング、フロントオフィス、支払いアプリケーションの復元力とアジリティを高められるよう支援しています。たとえば、Temenos のコアバンキング アプリケーションである Transact は Anthos で実行されます。これにより、銀行は独自のペースでアプリケーションのデジタル変革を行い、異種混合環境全体でアプリケーションを柔軟に管理できます。銀行のお客様からは、ハイブリッド クラウドやマルチクラウド環境全体で重要な銀行アプリケーションのバーストと障害復旧を単純化するソリューションについてよく尋ねられます。こうした主要なユースケースをサポートするために、Temenos は Transact コアバンキングを Anthos にデプロイする方法を詳しく説明したガイドを提供しています。
IDC による 2020 年の CloudPath 調査では、銀行の 89% が運営でハイブリッド クラウド戦略をすでに採用しているか、採用を計画していると回答しました。また、Silva 氏は最近のブログ投稿で、「2029 年までに、最高水準の銀行はクラウドベースのインフラストラクチャとパートナーが提供するサービスで構成されるハイブリッド アーキテクチャによってサポートされ、利用客に既存および新しい源泉から価値をもたらす」と述べています。したがって、銀行は異種混合環境全体でワークロードのオーケストレーションと管理を簡素化できるソリューションを検討することが重要です。
明るい兆し: 危機によって改善に向けた変革を余儀なくされている
2020 年は、銀行業界はもちろん、誰にとっても厳しい年であったことは間違いありません。明るい兆しは銀行がテクノロジーへの投資を続けていることです。IDC は、世界の銀行業界が今後 5 年間で IT 支出を加速し、年間成長率が 5.9% になり、クラウドへの投資が IT 支出全体の 2 倍になると予測しています。適切なデジタル変革の戦略とソリューションを実施すれば、変革された金融機関はカスタマー エクスペリエンスを向上させ、運営を効率化し、将来何が起ころうとも耐える復元力を構築できます。
詳細については、IDC のホワイトペーパー Crisis is Accelerating Digital Transformation in Banking, Again をご覧ください。また、Road to Recovery and Growth in Banking のウェブキャストで会話をご視聴ください。
-Google Cloud 業界 ISV パートナー マーケティング担当シニア マネージャー Tina Liu