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Google Cloud

COVID-19 の影響を受ける現在と収束後を見据えた、金融サービスの事業継続計画と事業復元策

2020年5月7日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2020 年 5  月 1 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が収束する見通しの立たない中、金融サービス機関は、サービスが必要なすべての人にサービスを確実に提供できるよう取り組んでいます。金融サービスは多くの国で「なくてはならない」サービスであり、COVID-19 感染拡大の影響下にあっても、国の経済活動を安全に行うといった重要な理由から、いつでも利用できるものでなければなりません。また、米国をはじめとする多くの国々では、政府の経済支援金の支払いなど、国民向けの追加対策を実施するために金融サービス機関の存在が欠かせません。

それと同時に、COVID-19 関連の変化に伴い脆弱になっているシステムを狙ったサイバー犯罪が多発していることから、これまで以上にセキュリティの必要性が高まっています。モバイル デバイスを使って重要機能にリモート アクセスする人の数が急激に増えたわけですから、実施する安全保護対策は、このような状況に十分適応できるだけの強力なものでなくてはなりません。

COVID-19 への金融サービス業界の対応が世界規模で充実してくると、さらに多くの組織が、目まぐるしく変化する政府や消費者、セキュリティの需要にすばやく応えようと、リモート機能の利用を進めることになります。安全で信頼性と柔軟性に優れたシステムやアプリケーションへのアクセスが、近い将来、ますます重要になってくるでしょう。

金融サービス業界のお客様の事業継続や事業復元を支援する Google Cloud の取り組みをいくつか次にご紹介します。

今すぐ必要なローンやその他の資金を金融サービ機関が迅速に給付できるよう支援

米国連邦小企業庁(SBA)の給与保護プログラム(Paycheck Protection Program: PPP)は、パンデミックの間も雇用を維持するという、前例のない難題に直面している膨大な数の中小企業の救済を目的としています。しかし、貸付機関やサービス機関、処理機構は現在、おびただしい数の PPP ローン申請の処理に追われています。

そこで Google Cloud は、金融機関がローン申請処理を迅速に自動で行えるように、PPP Lending AI Solution を開発しました。貸付機関は Google の AI ベースの文書取り込みツールを使用して、引き受けコンポーネントを既存の融資システムに簡単かつ安全に統合できます。

3 つの主要コンポーネントで構成されたこの PPP Lending Solution は、それぞれ個別に使うことも、相互に組み合わせて使うこともできます。

Loan Processing Portal はウェブベースのアプリケーションで、融資担当やローン申請者はこれを使って PPP ローン申請書の作成、提出、申請状況確認ができます。

●Document AI PPP Parser では、貸付機関は AI を使って、申請者が提出したローン申請書類から構造化された情報を抽出できます。このコンポーネントは 6 月 30 日まで無料でご利用いただけます。

Loan Analytics を使用すれば、貸付機関はすぐに過去の融資データにオンボーディングして、機密情報を匿名化し情報を安全に保存したうえで、データに対するクエリを実行できます。

人工知能を活用した Google のエンドツーエンドのソリューションでは、融資決定までの時間を短縮し、最初のローン申請提出から引き受けプロセス、SBA による認可までの貸付機関の流動性分析を確認できるようになっています。このソリューションはまた、Google のセキュリティ機能を装備しているため、貸付機関はポリシー要件を満たし、重要なアセットを保護できるようになっています。

銀行、貿易機関、保険会社に、すぐに使えるバースト容量を提供

従業員のリモートワーク環境を整える必要のある金融機関の数はますます増えています。なかでも優先度が高いのは、大規模な設備投資を行わずに、アプリケーションやシステムへの安全で信頼性の高いアクセスをいかに拡張するかということです。

Google の Burst Capacity Solution は、コンピューティング負荷の高いワークロードの一部を処理できるコンピューティング機能と分析機能を追加したソリューションです。金融機関はこのソリューションを使うことで、データからより多くの情報をすばやく取得し、生産性向上ツールを仮想化して、数百のコアと数テラバイトのメモリをスケールアップ、スケールアウトできます。コア AI コンポーネントを活用しているため、データ サイエンスの専門知識がなくても、さまざまな形式の構造化データと非構造化データの聴き取り、表示、理解が可能になります。同様に重要な点として、Google では物理的かつ論理的な多層防御を取り入れています。保存データはすべてデフォルトで暗号化されるほか、お客様専用のサイト信頼性エンジニア(SRE)チームが 24 時間 365 日対応でセキュリティ モニタリングを提供しています。

Google の目標は、お客様のインフラストラクチャが著しいトラフィックの急増に対処し、要件の厳しい大量のワークロードにも安全かつ効率的に対応できるようになることです。金融サービス機関へのバースト容量提供方法を次にご紹介します。

銀行: モバイル バンキングやオンライン バンキング アプリケーションの需要が増加している今、銀行は Google の Burst Capacity ソリューションを使って、信用貸付の債務不履行や差金担保の追加を予測できます。また、包括的資本分析およびレビュー(CCAR)などの流動性ストレステストや資本計画要件にも準拠しています。

貿易機関や商社: 貿易機関や商社は、Burst Capacity ソリューションを使って、市場、価値、取引先、信用、流動性、償還などのリスク増分を計算、シミュレーションすることで、市場機会を洗い出し、損失を緩和させることができます。

生命保険会社や損害保険会社: Burst Capacity ソリューションを使えば、生命保険などの保険契約および保険請求に関するオンライン サポート、動画での仲介機能、アドバイザリ サービスの需要増加に対応できます。また、保険会社はより包括的な保険数理モデリングを行えるようになります。

Burst Capacity ソリューションのプロビジョニングには約 1 週間かかります。また、必要に応じてスケールアップすることも可能です。このソリューションはコンピューティングの使用時間(秒数)に応じた料金のみをお支払いいただく仕組みになっているため、柔軟にお使いいただけます。

信頼性の高い復元力のあるインフラストラクチャを提供し続ける(インフラストラクチャのモダナイゼーション)

金融サービス機関が新しい現実に適応しようとすれば、IT 構造のモダナイゼーションがこれまで以上に重要になってきます。クラウドベースのインフラストラクチャでは、さらに柔軟な演算能力が得られるうえ、メインフレームから特定のワークロードを新しいクラウド アーキテクチャにオフロードすれば、柔軟なトラフィックやアクセスのパターンに対応できるようになり、ネットワーク設計の新しいアイデアが生まれるかもしれません。分析、リスク管理、サイバーセキュリティの向上を支えるデータと AI ツールは、この新しいモデルに不可欠な要素です。最後に、ホステッド データセンターへの依存度が減るため、事業継続に向けた企業と技術パートナーとの間の協業が増えることが考えられます。

インフラストラクチャのモダナイゼーションを図る金融機関を支援するために Google が提案する方法の 1 つは、メインフレームのアプリを自動化して、メインフレームのワークロードをできるだけ迅速にクラウドへ移行できるようにするというものです。ミッション クリティカルなワークロードの多くはメインフレームのアーキテクチャで実行されていますが、クラウドへ移行することで、すばやい変革を可能にする新しいテクノロジーにアクセスできるようになります。今年初めに Google Cloud が Cornerstone を買収したことで、Boa Vista のようなお客様に、移行ロードマップの作成、変換の柔軟性、データの自動移行を提供できるようになりました。Cornerstone のアプリケーションへの自動移行ツールを使えば、Cobal や PL4 の専門知識を必要とすることなく、メインフレームのモダナイゼーションの差し迫った課題を解決することができます。しかしながら、COVID-19 が収束した後も、企業にとってメインフレームの包括的なモダナイゼーション戦略が必要なくなるわけではありません。

Google が提案する、インフラストラクチャのモダナイゼーションを図るもう 1 つの方法は、マネージド クラウド ネイティブ プラットフォーム、Anthos を使用する方法です。このアプリケーション プラットフォームにより、企業がハイブリッド クラウド環境の開発、セキュリティ確保、運用の手法をモダナイズできるようお手伝いします。非依存型の Kubernetes ベースの環境を提供することで、クラウドとオンプレミスのどこででも実行できます。このプラットフォームは、HSBC や KeyBank などの大手金融機関ですでに利用されています。

金融サービスなどの「なくてはならない」業界にとって、今回ほど信頼性に優れた復元力のあるインフラストラクチャが必要とされる局面は未だかつてありませんでした。

リアルタイムで価値をつなげる金融サービス機関を支援

リモートワークを支えるためにはオンライン プラットフォームが必要です。AI ベースのエージェントとビデオ会議を利用して顧客をサポートし、リアルタイムで経済面の相談に応じることができます。AI とロボティック プロセス オートメーション(RPA)を使って、ローンの変更、住宅ローンの借り換え、格付け変更、信用供与などの業務の効率を上げ、貴重な行員が複雑な業務にもっと時間を割けるようにし、カスタマー サポートを適時提供できるようにします。

アルゼンチンの銀行、Banco Santander は、Google Cloud とそのパートナーである NubeliU と連携して、COVID-19 の感染拡大で財政的な影響を受けて苦しむ企業向けの低金利ローンを高速処理するソリューションを 24 時間以内に開発しました。このソリューションでは、Google Vision AI を使用して PDF 形式のドキュメントを自動検証できるので、急増する需要に対応しながら、中小企業救済ローンを記録的なスピードで提供できます。

リモートでのやり取りが必要な場合には、Google の安全で信頼性の高いグローバル インフラストラクチャ上に構築されたエンタープライズ クラスのセキュリティと信頼性を兼ね備えた、手間いらずのビデオ会議、Google Meet で対応できます。ファイナンシャル プランニングなど、仮想アドバイザリ サービスを通して顧客との関係を安全に構築して、生命保険などの保険契約を、動画での仲介により成立させることができます。

Atom Bank の CTO である Rana Bhattacharya 氏は、次のように述べています。「在宅勤務のための機能強化に積極的に協力してくれている Google Cloud と連携でき、非常に心強いです。この困難な時期に事業を運営してお客様をサポートするうえで、この連携は不可欠なものとなっています。ありがとうございます。」

最後になりましたが、複数のデジタル チャネルを通して急増する顧客からの問い合わせに対処している金融サービス機関が、シンプルなカスタマー サービスのやり取りを自動化できるよう、Google は Contact Center AI Rapid Response Virtual Agent プログラムを開発しました。これは、コールセンターのスタッフがより複雑なケースに専念できるようにするプログラムです。このプログラムを導入すれば、問い合わせてきた顧客からの一般的な質問と COVID-19 に関する懸念に対して即座にセルフサービス型の応答を返せるため、スタッフは、付加価値が高く、個人的な対応を必要とする顧客の対応に専念できます。

混迷を極めるこの時期が収束した後も金融サービス機関に対する支援を継続するために

Google では、今後も金融サービス業界を支えるシステムの状態を維持できるよう努めてまいります。また、お客様の事業継続計画や復元策を強化するために微力を尽くしてまいります。さらには、最新のテクノロジーを活用して、現状を改善していく方法を引き続き模索していきます。

詳しくは金融サービスのための Google Cloud をご覧ください。

- Google Cloud グローバル ファイナンシャル サービス戦略およびソリューション部門 Christin Brown

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