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デベロッパー

コスタメサ衛生管理区域が機械学習によってマンホールのメンテナンスを改善

2021年6月3日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2021 年 5 月 14 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

地方自治体で、コミュニティをサポートするスケーラブルな近代的方法が活用されています。コスタメサ衛生管理区域(「CMSD」)では、時間と資金をどちらも節約する試みとして、マンホールのメンテナンスの自動化と合理化のために機械学習が使用されました。マンホールのメンテナンスは、街を維持するために不可欠な作業です。マンホールは、地下の公共設備にアクセスして点検、メンテナンス、システム アップグレードを可能にするための、重要なアクセス ポイントです。マンホールの維持に不備があると、道路の障害から下水管の詰まりまで、多くの問題が生じる可能性があります。また、作業員が地下の公共設備にアクセスするのが困難になり、安全に関わるその他の問題につながる可能性もあります。マンホールのメンテナンスはコスタメサ衛生管理区域のメンテナンスの中で非常に重要な部類に入りますが、このプロセスには外部コンサルタントの仕事が必要であり、CMSD には 10 万ドル以上の費用がかかります。

ML で可能になった対策

CMSD は、SpringML および Google Cloud と提携して、機械学習(ML)の力を活用して下水管マンホールを検出および状態評価することでマンホールのメンテナンスを合理化するプロジェクトを考案しました。このソリューションによって CMSD は年間 4 万ドルを節約し、他の公共サービス プロジェクトに資金を回せるようになっています。

四半期ごとに、CMSD のスタッフの 1 人が、GoPro カメラ搭載の車を運転します。この車は、コスタメサ市やカリフォルニア州ニューポートビーチの一部を含む区域全体(路面の総延長およそ 218 マイル分)を移動し、道路を撮影しておよそ 5,000 個のマンホールを検出します。撮影が終わると、CMSD のスタッフが画像と動画を GoPro の SD カードからローカル サーバーに移します。その後、これらのファイルは自動的に Google Cloud Storage に取り込まれて処理されます。ここから、機械学習アルゴリズムが、補修の必要なマンホールを検出します。

このプロジェクトでは、Google Cloud のプロダクトが各所で使用されています。画像と動画が Google Cloud Storage に取り込まれた後は、Cloud Scheduler でのワークフローによって VM が毎夜起動し、Cloud Storage で新しい動画の有無を検出します。あった場合には、クラウド機械学習がトリガーされ、無数の画像と動画の確認、各マンホールの評価、メンテナンスの必要性の判断が行われます。

機械学習でマンホールを検出および格付け

SpringML は、マンホールの検出と格付けに、非常にシステマチックなアプローチを適用しました。まず、プライバシーの問題が生じるのを避けるため、画像処理によって、対象部分が車両の前の道路部分のみとなるよう徹底します。次に SpringML は、機械学習を使用してマンホールの検出と格付けを行う 5 段階のプロセスを適用しました。

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  1. SpringML は、TensorFlow をベースにした異なる 2 つのカスタム Mask R-CNN モデルを開発しました。Mask-R-CNN は画像セグメンテーション作業、つまり、画像または動画中の各種オブジェクトの分離に使用される、ディープ ニューラル ネットワークです。1 つ目の Mask-R-CNN モデルは、画像に示されたものがマンホール カバーであるのか正確に検出するために作成されました。下水管マンホール カバーは水道管カバーと似ているため、必要不可欠な手順になります。モデルの精度のためには、誤検出をなくすことが重要でした。SpringML は、約 50 の下水管マンホール画像やその他の画像を使って、トレーニングを行い、アルゴリズムが下水管マンホール カバーの検出に成功することを確認しました。

  2. マンホールが正確に検出されたら、画像処理を使って周囲部分をマスキングし、対象をマンホールに絞れるようにします。その後、切り抜いた画像を 2 つ目のモデルに送り、それを使用して、エプロンと呼ばれるマンホール周辺部分の損傷を検出します。処理時間を削減するために、2 つ目のモデルは、マンホール カバーが検出された場合のみ推論を行うようにしています。

  3. 2 つ目の Mask-R-CNN モデルでは、CMSD ガイドラインを使用して、どのタイプの損傷が評価システムに影響したか判断します。トレーニング用に、SpringML は Google Cloud 上の仮想マシン内で TensorFlow-Keras を使用しています。初期のモデルをトレーニングして、Keras ウェイトを Google Cloud Storage に保存しました。この手順は、モデルの継続的な改良と合わせた、モデルのバージョン付けシステムの作成に寄与しました。

  4. 次に、検出の重複を除去して、各マンホール カバーが一意に検出されている状態にします。

  5. 最後に、マンホールを 1~5 の格付けで評価します。5 は重度の損傷を表し、1 は軽度の損傷を表します。

良好な道路状況

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クラウド機械学習によって新規の動画と画像が分析されると、最終スコアが BigQuery に格納されます。その後、シンプルなウェブ アプリケーションを通じて CMSD のスタッフに結果が提供され、スタッフは、どのマンホールにメンテナンスが必要か、そのアプリケーションで確認できます。2 人のスタッフが ML の結果を考察し、補修の優先順位を決めます。このプロジェクトで最も興味深い特長の一つとして、ウェブ アプリケーションで送信されるフィードバックに基づきモデルの再トレーニングが継続的に行われるという点があります。たとえば、モデルによるマンホール検出が不正確だった場合には、CMSD のスタッフがそれをウェブ アプリケーションにマーキングでき、直ちにフィードバックを使用してモデルを改良します。

このソリューションは、機械学習の活用によって、地方自治体の必要プロジェクトを合理化し、資金と労力を節約しながら容易に拡張可能であることを示す一例となっています。このシステムは、マンホールのメンテナンス プロセスを合理化するだけでなく、マンホールの状態を確認する頻度を増やすことができ、区域のマンホールの経時的変化の履歴も確認可能にします。

Google Cloud 機械学習についてさらに詳しく知るには、このチュートリアルで TensorFlow と Keras について学び、Google の AI Platform でその他の機械学習ツールをご確認ください。

-デベロッパー アドボケイト Bukola Ayodele

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