新しい Tau VM について知られていない 5 つの事実

Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 6 月 26 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Google Cloud コンピューティングの VM は、Google の検索エンジン、Gmail、YouTube などのサービスと同じグローバル インフラストラクチャを基盤としています。Google では、長年かけてこのコンピューティング サービスのファミリーおよび VM タイプの拡充を続け、ユーザーの皆様のワークロード要件を満たすとともに価格面でもご希望に沿えるよう努めてきました。コンピューティング サービスの種類を大別すると、以下のファミリーに分けられます。
汎用(E2 / N2 / N2D / N1): カスタマイズのしやすさ、パフォーマンス、総所有コストのすべてを重視する場合におすすめの、バランスの良い仮想マシンです。
コンピューティング最適化(C2 / C2D): パフォーマンス重視のワークロード向けに最適化された仮想マシン。高速の CPU 周波数および整合性が求められるワークロードや、高いコア性能およびコア:メモリ比率が求められるアプリケーションに適しています。
メモリ最適化(M1 / M2): 大量のメモリを消費するワークロード向けに最適化された仮想マシン。ビジネス クリティカルなワークロードに適しています。
アクセラレータ最適化(A2): GPU のパフォーマンスが最も高い仮想マシン。ML、HPC や、超並列コンピューティングに適しています。
それぞれのファミリーは、名前からわかるように、特定のワークロード向けに最適化されています。これらのファミリーは、開発とテストや、エンタープライズ アプリ、HPC、大規模なインメモリ データベースといった用途に適していますが、一方で、スケールアウト型のワークロード(大規模な Java アプリや、ウェブ層アプリケーション、データ分析など)に適したコンピューティング サービスへの要望が多くのお客様から寄せられていました。スケールアウト型のワークロードに的を絞り、しかも手頃な価格でデベロッパーの生産性も犠牲にしない、そんな VM が求められていたのです。


Compute Engine に新しく加わった Tau VM ファミリーは、スケールアウト型ワークロードに適した、コスト パフォーマンスに優れた VM ファミリーであり、x86 との完全な互換性を備えています。公式ブログの投稿と、以下の動画をご覧ください。新しい Tau VM ファミリーとその最初のインスタンス タイプである T2D について簡単に紹介しています。

私と同じく、T2D VM の用途や特長についてもう少し理解を深めたいとお考えの方のために、Tau VM について 5 つの事実をご紹介します。
1. T2D VM は、最新の第 3 世代の AMD EPYCTMプロセッサを基盤としている
AMD EPYC プロセッサは、AMD の Zen マイクロアーキテクチャ(2017 年に登場)を基盤とした、x86-64 マイクロプロセッサです。2021 年 3 月に発表された Milan と呼ばれるこの第 3 世代は、前世代を基盤としながら、クラウドでの計算密度およびパフォーマンスがさらに進化しています。Google のデータセンターではラック / ソケットあたりのパフォーマンスが向上しており、それが T2D VM 上で動作するワークロードに反映されています。
また、この VM は AMD EPYC プロセッサを基盤とし、x86 との互換性を維持しているので、技術者を駆り出してアプリケーションを再設計しなくても、すぐに x86 の処理速度および既存の幅広いエコシステムを最大限に利用することが可能です。
2. T2D VM は、クラウドネイティブのスケールアウト型ワークロードに適している
クラウドネイティブのワークロードは、分散型アーキテクチャを促進し続けています。たとえば、データ分析やメディア ストリーミングは、スケールアウト型の(水平方向にスケーラブルな)多層構造を採用しているものが大半です。つまり、処理能力を追加する必要が生じたときにスケールアウトできるような構造です。具体的には、リソースの追加や削除を静的に行うことで、アプリケーションの変わり続ける需要に対応しています。このようにクラスタのサイズが大きくなってくると、コンピューティング ノード間通信の要件が急速に高まります。AMD EPYC プロセッサの基盤である Zen 3 アーキテクチャは、最新の「Unified Complex」設計を採用し、コア間およびコア - キャッシュ間のレイテンシを大幅に削減しているのが特長です。これにより、コンピューティング ノードの急速なスケールアウトが必要になったときでも、通信の遅延を抑えられます。


T2D VM は、コストとパフォーマンスのバランスが良く、ウェブサーバーや、コンテナ化されたマイクロサービス、メディアのコード変換、大規模な Java アプリケーションなどのスケールアウト型ワークロードに適しています。T2D VM は、事前定義された VM シェイプで提供され、VM ごとに最大 60 の vCPU、vCPU ごとに 4 GB のメモリが備わっており、最大 32 Gbps のネットワーキングを提供します。
3. T2D VM は、他の主要なクラウド プロバイダに比べ絶対的パフォーマンスとコスト パフォーマンスが勝っている
具体的な例で考えてみましょう。128 GB RAM を搭載した 32 vCPU VM の価格は、us-central1 でのオンデマンド使用に対して 1 時間あたり $1.3520 です。この価格設定のもと、T2D を他の主なパブリック クラウド ベンダーの汎用 VM と比べると、絶対的パフォーマンスが 56%、コスト パフォーマンスが 42% 高くなり、スケールアウト型ワークロードにおいてコストを最小に抑えられます。このベンチマークの結果の測定方法や再現方法についてはこちらをご覧ください。


4. 最初から Google Kubernetes Engine のサポート対象である
Google Kubernetes Engine(GKE)は Tau VM をサポートしているため、コンテナ化されたワークロードのコスト パフォーマンスを最適化できます。GKE ノードプールに T2D マシンタイプを指定すれば、T2D ノードを GKE クラスタに追加できます。
T2D ノードを GKE クラスタに追加すると、GKE のクラスタ オートスケーラーの使用時に効果的です。クラスタ オートスケーラーとは、ワークロードの需要に基づいて、特定のノードプール内でノード数が調整される仕組みであり(これも水平スケーリングの一例です)、ノードプールの最小サイズと最大サイズを指定するだけで、あとは自動的に設定されます。T2D VM に関して言えば、自動スケーリングが発生したときに、スケールアウト パフォーマンスを得られると同時に、レイテンシを抑えられます。
さらに、クラスタ オートスケーラーは、各プール内のインスタンス タイプの相対的なコストを考慮し、最もコストのかからないノードプールを拡張しようとします。T2D VM のコスト パフォーマンスの良さも相まって、パフォーマンスとスケールを維持しながら、総所有コストを抑えることが可能になります。
5. 一部のお客様と連携し、Tau VM のパフォーマンスをテスト済みである
Snap, Inc. は、AR、レンズ、Spotlight、マップなどの主要機能を提供するため、スケールアウトに適したコンピューティング インフラストラクチャの改善に取り組み続けています。同社は、T2D VM と Google Kubernetes Engine を組み合わせてテストした結果、実際のワークロードにおいてパフォーマンスを 2 桁レベルで改善できる可能性を見出しました。また、Twitter からも同社のグローバル公開会話サービスを支えるインフラストラクチャに不可欠な、コスト パフォーマンスの面で重要な改善がなされたと喜びの報告を受けています。
Tau VM の試用(2021 年第 3 四半期を予定)をご希望の場合は、こちらからお申し込みください。
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-デベロッパー アドボケイト Stephanie Wong