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顧客事例

株式会社トーヨーホールディングス:Cloud AutoML を活用し、水耕栽培農園の育成不良レタス苗の検出を自動化

2021年3月2日
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Google Cloud Japan Team

基幹事業である建築や不動産分野に留まらず、人の暮らし、街づくりを支えるべく事業範囲を拡大しているトーヨーグループ。そんな同社が現在手掛けているのが、レタスの水耕栽培農園における、AI 技術を駆使した育成不良苗検出システムです。これまでベテランの知見とノウハウが求められていた部分に AI を導入することで、農園運営の負担を少なくするのが目的というこの仕組み。いったいどのようにして構築や運用をしているのか、開発に携わったメンバーの皆さんにお伺いしました。

利用している Google Cloud サービス:AutoML VisionVision API

AutoML Vision の活用で AI モデルを効率的に構築し、育成不良苗検知率 96.5% を達成

新しい農業形態として近年注目を集めているのが、まるで工場の様に農作物を栽培・出荷する「水耕栽培」という仕組み。環境制御されたビニールハウスで土を用いず作物を育てるため、雑菌や病害虫の影響が少なく、季節と無関係に安定して収穫できるという大きなメリットがあります。トーヨーホールディングスは、同社アグリ事業の一環として水耕栽培農園運営事業に進出。埼玉県羽生市に大規模農場を建設し、機能性レタスの栽培に取り組んでいますが(グループ企業である株式会社トーヨーエネルギーファームが運営)、より効率的な生産を実現するべく、AI 技術を大きく採り入れることを決意しました。

「具体的には、AI を利用した育成不良苗検出システムを Google Cloud を活用して構築しています。農作物は自然のものである以上、どうしても一定の比率で育成不良が発生します。これらは早いうちに適切な処置を施すことで、本来あるべき成長曲線に戻すことができるのですが、何もしないとそのまま死んでしまいます。周囲の苗に病気をまき散らす病原になるリスクもあるため、できるだけ早く、正確に見つけ出さねばなりません。そこで、これまでは一部のベテラン、それも農場長クラスにしか判別できなかった育成不良苗を AI の力で検出できるようにしようと考えました。」

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そう語るのは、トーヨーホールディングス R&D センター、センター長の高橋 優太さん。ほぼすべての一次産業で課題となっている、ノウハウに拠らない作業の平準化を技術の力で解決しようと考えた末の一手でした。なお、その開発には 2019 年末に丸紅ネットワークソリューションズ、丸紅情報システムズが参画。共同研究というかたちで開発を行っています。

システムが導入されたのは、育成工程の後半。ハウス内に設置された多段式ベンチに配置されたレタスの苗を IP カメラ(丸紅ネットワークソリューションズが提供する『TRASCOPE-AI』を使用)で撮影し、それを Google Cloud 上に構築した育成不良苗検出システムにかけることで育成不良のレタスを発見できるようにしました。

「今回の取り組みでは、特に AI モデルの構築に AutoML Vision  を利用しています。さまざまな選択肢の中から AutoML Vision を選んだのは教師データの作成、アノテーションのところからサービス開発までを同一の GUI 上でワンストップで行えるところ。加えて、撮影した写真がハウスのどこにあるのかを検知するための棚番号の認識には Vision API の OCR エンジンを使っています。実は当初はオンプレミスでの運用も検討していたのですが、まずはスモールスタートで手早く始めるべく Google Cloud を選択しました。システムの構築においては、Google Cloud が得意とするサーバーレスの仕組みを可能な限り活用し、設備投資にかかる手間とコストを低減させるように留意しています。」(高橋さん)

本格的なシステムの開発は 2020 年初頭からスタート。試行錯誤を経て、2020 年 6 月にβ 版が完成しています。当初から、育成不良苗検知率 96.5% と極めて高い成績を達成していますが、そこに至るまでには多くの工夫と苦労があったと、高橋さんらは当時をふり返ります。

「まず苦労したのはアノテーションのところですね。育成不良苗の検出はベテランの作業者でも難しいことなので、これをどのようにラベリングして教師データに落とし込むのかという問題がありました。『葉が 3 枚以上でかつ、こういう色味だったら育成不良』といった、誰が見ても明確な基準を設定するのが大変だったというか、大事なところだったと思います。」(高橋さん)

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「画像の撮像をした際も、得られた画像を丸紅さんにお渡しして、どのような画角で撮影するのが最も効率的かを洗い出すところから始めています。撮影は他の作業者のいない夜間帯に行っているため、照明の明るさや位置についても細かく調整する必要がありました。」(トーヨーホールディングス 菊地さん)

「丸紅ネットワークソリューションズでは、そうして得られた画像データが確実に、間違いなくアップロードできるようなソフトウェアをしっかり作り込みました。この仕組みの肝はやはりインプットの部分なので、避けられない想定外を見据え、エラー処理のところから気をつけています。」(丸紅ネットワークソリューションズ 市川さん)

「育成不良苗を AI に検知するにあたって工夫したのは、検知を 2 段階の AI モデルに分割したこと。レタス苗の検知と育成不良の分類を行う AI モデルを分け、段階的に判断することで精度向上につなげています。」(高橋さん)

「AIモデルの検知結果を実際の栽培現場で活用いただくために、作業者にわかりやすいユーザインターフェースの作りこみなど、実用に沿ったシステムとなるよう意識しました。」(丸紅情報システムズ 小見山さん)

育成不良苗の検出に費やしていた工数を 98% 削減

その後、育成不良苗検出システムは、2020 年 9 月に正式発表。水耕栽培農園の生産性を大幅にアップする新技術として、多くのメディアに取り上げられるなど大変な注目を集めました。今後は、同社の施工する全国の農園に導入し、生産効率と歩留の工場を目指していくということです。

「実は当初は Google Cloud を導入することに若干の不安がありました。しかし、もしゼロベースで AI モデルを作っていたら、開発工数が膨れあがり、費用も納期もとてつもないものになっていたでしょう。今回、Google Cloud の AI ソリューションを活用したことで費用に関しては、想定の半分くらいで済みました。精度的にも満足いくものを短い時間で作りあげることができ、企業価値を大きく高めることができたと考えています。」(高橋さん)

もちろん、育成不良苗検出システムは今後もアップデートされていく予定。

「現在はレタス限定のシステムとなっていますが、今後は対象とする作物を増やしていく予定です。特に今回の知見を生かしやすいのは葉物野菜ですので、そのあたりから拡げて行きたいと考えています。また、AI を利用した出荷予測についても実現の可能性を検証中。正しく需要を予測できれば廃棄ロスにも繫がるため、重要なテーマだと考えています。将来的にはこの育成不良苗検出システムを含めた、水耕栽培農園運営の仕組みをソリューションとして外部に提供していくことも検討中です。」(高橋さん)

さらに今回の成功を受け、Google Cloud をそれ以外のソリューションに活用していくことも検討していきたいと高橋さんは言います。

「我々のグループでは多岐にわたった事業を展開しておりますので、それらを 1 つのクラウド プラットフォーム上で運用することでデータの共有など、新たな価値を生み出せるのではないかと考えています。たとえば、エネルギー事業と農業事業のデータ連携などですね。今後は、そういうことを Google Cloud でやっていけたら面白いのではないかと考えています。」(高橋さん)


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(写真左から)
・R&D センター センター長 高橋 優太 氏
・R&D センター 菊地 海砂 氏

株式会社トーヨーホールディングス

建築や不動産事業を主力とした総合街づくり企業グループ(1971 年創業)。2011 年の東日本大震災を受け、2012 年にエネルギー事業、アグリ事業にも進出しており、それらが相互に補完するかたちで安心安全で住みやすい街づくりを目指す。従業員数は 260 名(グループ連結 / 2019 年 12 月時点)


・モバイルソリューション事業本部 市川 達也 氏

丸紅ネットワークソリューションズ

丸紅株式会社の 100 % 子会社として、自社通信インフラを活用した高品質通信サービスと、高いネットワーク構築能力を組み合わせることで、ネットワーク基盤をワンストップで提供するネットワークインテグレーター。従業員数は 258 名(2020 年 4 月 1 日時点)


・AI・IoTソリューション部 AIビジネス推進課 課長 小見山 晃輔 氏

(Google Cloud パートナー)

丸紅情報システムズ株式会社


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