公益事業会社が AI 仮想アシスタントを使って人事部業務をモダナイズした例

Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 11 月 14 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
ACCIONA は、「効率」について熟知しています。1997 年から、再生可能エネルギーおよび民間のインフラストラクチャの開発に取り組む同社は、近年、化石燃料を使用しない世界最大の公益事業会社となりました。また、2016 年からカーボン ニュートラルを継続しており、現在 40 か国で事業を運営し、年間収益は約 120 億ドルに達しています。
同社はここ最近、社内の業務プロセスの自動化に集中的に取り組み、スピードと効率のアップを目指しています。まず人事(HR)業務の自動化に着手し、従業員が各自で疑問を解決できるように最新のセルフサービス方式を導入して、給与、契約、休暇、医療などの問題について調べられるようにしました。
ACCIONA の HR アドミニストレーション シェアード サービス プロジェクト責任者である Azahara Medina Anguiano 氏は、次のように述べています。「現場の作業員たちと人事部を直接つなげる仕組みを提供したいと考えていました。契約や給与などの重要な事柄について疑問が生じたときに、会社にサポートされている、大事にされていると感じてもらいたかったのです。それと同時に、人事部のルーチンワークの負担を減らしてくれるツールを求めていました。」
この新しいソリューションのために利用可能なテクノロジーを検討した結果、ACCIONA は Google Cloud およびパートナーの Emergya と提携することに決めました。
NLP を使って人事部への問い合わせに自動対応
ACCIONA は、従業員の質問に対応する HR 仮想アシスタントを構築することを望んでおり、その基盤として自然言語処理(NLP)の必要性を認識していました。そしてその目的のためには Google Cloud のテクノロジーが最適であると感じていました。
ACCIONA の IT マネージャー Raúl Morueco Gómez 氏は、次のように語ります。「Google Cloud は、NLP とデータ セキュリティにおいて抜群の信頼性とアジリティを誇ります。それに加えて、スケーラブルで、将来に対応可能なアーキテクチャも提供してくれます。また、当社は開発および導入プロセスをサポートしてくれる専門的パートナーを求めていましたが、その点で Emergya の存在は際立っていました。」
Emergya はまず、ACCIONA のビジネス目標を理解し、専門的知識に基づいてソリューションを設計、開発しました。最初のシステムは Dialogflow に基づき、ビジネス要件と技術要件をすべて満たすものでした。仮想アシスタントは当初、電話での問い合わせにのみ対応していましたが、その後 WhatsApp とも統合し、人事部とのやりとりの自動化が進められました。
「Emergya は経験豊富な、信頼できるパートナーです。当社が複雑な環境の中で HR 自動システムに求めていることに機敏に対応してくれました」と Gómez 氏はコメントしています。
ACCIONA の HR ソリューションは現在、第 3 フェーズに突入しています。この最新版では、完全な機能性、安全性、信頼性、スケーラビリティを兼ね備えた環境のもと、Google Cloud AI を取り入れた仮想アシスタントを各種業務に利用できます。また、データ ダッシュボードを組み込んで、従業員と chatbot のやりとりを人事マネージャーが追跡、管理、最適化できるようにしました。同時に、人事チームがニア リアルタイムで問題の監視、解決にあたっています。
人事部と従業員の双方へのメリット
Google Cloud と Emergya は、ACCIONA の人事業務の多くを自動化できるように支援し、スタッフが繰り返し作業に煩わされることなく、価値の高い業務に専念できるようにしました。従業員がこれまでにこのツールを電話または WhatsApp で利用した会話の数は 41,000 件にのぼります。
これらの会話には 33,000 件の問い合わせが含まれており、90.33% はすでに解決済みです。そのうち、人事部スタッフの介入が必要だったものはわずか 0.89% でした。結果として、人事部スタッフは企業戦略とはあまり関係のない、時間のかかる各種タスクから解放されました。
かつては、従業員が上司の許可を得たうえでチケットを作成し、人事部に対応してもらうという流れになっており、問題が解決すると、上司経由でリクエストが戻されていました。このような手順は全体で、数日から数週間かかることもあります。Emergya が Google Cloud 上に構築した新しい環境では、仮想アシスタントを使って、わずか数分で人事関連の質問への回答を得ることができます。
Anguiano 氏は次のように述べています。「従業員はこのソリューションに大変満足しており、会社とのつながりや、人事部からのサポートを実感しています。また、人事部スタッフが従業員のエンゲージメントを高めるような戦略的事柄に時間を費やせるようになったことも重要なポイントです。テクノロジーのおかげで、人事部のプロセスにアジリティとセキュリティがもたらされました。」
ACCIONA は今後を見据え、Dialogflow の次世代版である Dialogflow CX への移行をすでに完了しています。これにより、既存のコンポーネントを再利用しながら、コンテンツのメンテナンス、フロー、トレーニングを促進することが可能となります。こうした取り組みによって、従業員と人事部のやり取りをきめ細かく管理できるようになっただけでなく、AI を使った最新イノベーションに対応しうる強力な基盤を得ることができました。
「テクノロジー、Google Cloud、そして Emergya のサービスのおかげで、当社は進化を続け、ユーザーや従業員に最高のサービスを提供できます。現在の目標は、新しいソリューションの導入に引き続き取り組み、長期的な成功を収めることです。具体的には、人事業務だけでなく、他の業務へのソリューション導入も視野に入れています」と、Gómez 氏は語っています。
企業が最新のテクノロジー ソリューションを最大限に活用するために Emergya をはじめとする Google Cloud パートナーが提供している支援についてご覧ください。
-Google Cloud フィールド営業担当者 Inmaculada Granado
-Google Cloud、パートナー マーケティング マネージャー Inés Blanco