生成 AI でコンタクトセンターを進化させる - 丸紅情報システムズ「MSYS Omnis」の挑戦
Google Cloud Japan Team
「ゼロに夢と情熱を重ねて1にする」という企業理念のもと、コンタクトセンターの業務効率化を実現するソリューション「MSYS Omnis」を提供する丸紅情報システムズ株式会社。今回は、同社が Google Cloud をどのように活用し、生成 AI 機能で「MSYS Omnis」を進化させているのか、その詳細について、エンタープライズソリューション事業本部 サービス企画部 部長の樋口健一郎氏と、同部 エグゼクティブスペシャリストの梅村光雄氏にお話を伺いました。
Google Cloud で実現する、コンタクトセンター業務の進化
丸紅情報システムズが提供するコンタクトセンター特化型 SaaS「MSYS Omnis」(以下 Omnis) は、オペレーターやスーパーバイザー(SV)の業務を支援する様々な機能を搭載しています。音声のリアルタイムテキスト化やコールセンターに特化したテキスト分析などの機能を提供し、業界を問わず多くの企業に利用されています。
「Omnisではサービスの基盤として Google Cloud を活用しています。当初は Google CloudのSpeech-to-Text に魅力を感じたのがきっかけで活用を始めたのですが、今ではマネージドサービスの使いやすさや、セキュリティ面など、Omnis を支える重要な基盤として重宝しています。」と梅村氏は語ります。
Google Cloud を活用するポイントについて、樋口氏は次のように話します。「サービス提供開始当初から、Omnis の基盤として Google Cloud を活用しているのですが、プロダクトのアップデートや保守性を鑑みて、アーキテクチャの見直しを行うこともあります。元々 Google Cloud の様々なプロダクトを組み合わせてサービスを実装していましたが、今では App Engine を中心に、シンプルな構成で実現してます。自分たちの必要な機能を見極め、コア技術を正しくインテグレーションしていくことも、Google Cloud を活用するうえで重要なポイントだと考えています。」
生成 AI でプロダクトを進化させ、顧客対応を効率化
丸紅情報システムズ株式会社(以下、丸紅情報システムズ)が提供するコンタクトセンター向けソリューション「Omnis」は、 Google Cloud の生成 AI を活用することで、FAQ 機能の強化と後処理の自動化を実現し、顧客対応業務の効率化を推進しています。
従来のキーワード検索ベースの FAQ システムでは、類義語や表現の揺らぎに対応できず、オペレーターが必要な情報に迅速にアクセスできないケースがありました。 また、FAQ の作成・メンテナンスに多くの時間と労力を要することも課題でした。
これらの課題を解決するため、Omnisは Google Cloud の Vertex AI Search と Gemini API を活用した FAQ システムを構築しました。
まず、社内マニュアルや過去の通話履歴などを元に、Gemini で FAQ コンテンツを自動生成します。 生成されたコンテンツは、ナレッジ管理者によるスクリーニングと承認プロセスを経ることで、生成 AI による誤った情報生成(ハルシネーション)のリスクを回避し、情報の正確性を担保しています。
FAQ の検索には、Vertex AI Search を利用しています。 意味を理解した検索が可能で、ローマ字とひらがなの違いなどの表記の揺れや、誤字があっても精度の高い検索を行うことができます。 これにより、オペレーターは顧客対応中でも使いやすい FAQ 検索を実現しています。
丸紅情報システムズの樋口氏は、構築やプロダクト選定の過程について次のように述べています。「元々は検索部分をオープンソースの機能で実装しようと試みていたのですが、構築の手間や運用性を鑑みて、Vertex AI Search を利用する判断をしました。 マネージドサービスなので楽ですし、他社製品などと比べても検索の精度が高いので、大変助かっています。」
さらに、Omnis は顧客対応完了後の後処理時間の削減にも Gemini を活用しています。 従来、オペレーターは顧客対応後、手動で CRM に対応履歴の要約を入力していました。 これは多くの手作業が発生する上、要約の精度もまちまちでした。
Gemini を活用した自動化により、後処理時間を 2~3 割削減し、要約や情報入力などのアウトプットの品質向上を実現しました。 例えば、電話番号や住所などの項目を、通話の書き起こしデータから抜粋し、決まったフォーマットで出力することが可能になっています。
現在この機能は PoC を含め7 社で利用されており、顧客対応の効率向上に貢献しています。 削減された時間でより多くの顧客に対応できる体制を整えることも可能になっています。
さらなる進化へ:生成 AI が切り拓くコンタクトセンターの未来像
丸紅情報システムズは、Google Cloud の生成 AI の活用をさらに進め、「Omnis」の機能強化を継続していく予定です。現在検討中の機能として、オペレーターが会話する際に関連 FAQ を能動的に表示するオプションがあります。これにより、オペレーターはよりスムーズに顧客対応を行うことができ、顧客満足度のさらなる向上が期待されます。
例えば、顧客との会話から重要なキーワードを抽出し、それに関連する FAQ を自動的に表示することで、オペレーターは必要な情報を瞬時に確認できます。また、顧客の感情を分析し、状況に合わせた FAQ を表示することで、より的確で丁寧な対応が可能になります。
丸紅情報システムズは Google Cloud と共に、生成 AI の力を最大限に活用することで、コンタクトセンターの未来を創造していきます。
丸紅I-DIGIOホールディングス株式会社
丸紅I-DIGIOホールディングス株式会社は、丸紅グループのICT事業を担う中核企業です。
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