Emaar の Apigee 導入事例 : API でカスタマー エンゲージメントを向上
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2020 年 1 月 28 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
編集部注 : 今回は、Emaar の CIO である Binoo Joseph 氏と、同社インテグレーション アーキテクトの Venkadesh Sivalingam 氏による投稿記事を紹介します。ドバイに本拠を置く Emaar は、不動産、ショッピング モール、ホスピタリティ、エンターテインメントなどの分野で事業を垂直展開している不動産開発会社です。API を使った新しいカスタマー エクスペリエンスの開発について、同社の事例を見ていきましょう。
Emaar は豪華な不動産とコミュニティで世界的に知られています。不動産のうち最も有名なのは、世界で一番高い建造物(829 メートル)であるブルジュ ハリファでしょう。また、ホテル、レジャークラブ、ショッピングモール、イベント、エンターテインメントなど多くの分野で事業を展開しています。
こうした Emaar の多様なビジネスを結び付けているものの 1 つは、イノベーションへの取り組みと卓越したカスタマー エクスペリエンスの提供です。これは、かつては、お客様とのやりとりを行うミドルウェアを搭載した多彩なフロントエンド アプリケーションを作ることを意味していました。不動産のオーナーがサービス料の支払いを行うウェブ ポータル、レストランやホテルの予約サイト、ドバイ モール周辺のガイド情報をビジターに提供するモバイル アプリケーションなどです。他の事業者も、こうしたカスタマー エクスペリエンスの提供に必要な API を作成、管理する独自のワークフローを持っていました。しかし私たち Emaar は、テナント、不動産オーナー、顧客、パートナーなどの皆様にもっと多くの情報とサービスを提供できるようにしたいと考えていました。
イノベーションを加速させるためには、リソースをプールしてチーム間でマイクロサービスを共有することが必要でした。すべての垂直部門で、API の開発、デプロイ、セキュリティ確保の方法を一本化するのです。私たちはその目標に沿って、柔軟なハイブリッド アーキテクチャのもとでセキュリティとスピードを提供できる API 管理ソリューションを探しました。
そして、すべての要件を満たしていたのが Apigee でした。当地の Apigee チームのすばらしいサポートも相まって、Apigee は私たちにとって理想のソリューションになりました。
標準環境での API 開発
Apigee は、API の扱いを改革することに役立っています。今の私たちは、API の設計およびセキュリティ確保のための統一的な仕組みを有しており、その一貫性によって、データとの接続や展開の形が従来よりもずっとセキュアになっています。開発者はマイクロサービスに集中し、開発グループ全体の作業は Apigee によって完全に可視化されています。新しいカスタマー エクスペリエンスごとに API をいちいち作り直すのではなく、API の共有や再利用によって従来よりも迅速に API を提供することができます。
実際、本番稼働からわずか数か月で、Apigee を通じて約 250 の API を提供しました。一部は社内システム用ですが、多くの API は外部のお客様とつながっています。
重要情報をお客様に提供
現在の API 利用で最も大きな割合を占めるのはお客様とのつながりです。不動産管理用の旗艦アプリケーションを使用すると、不動産オーナーはどこからでも資産を管理できるようになります。オーナーの皆様は、サービス リクエストを表示し、サービス料を支払い、Emaar からの最新情報を知ることができます。Apigee の導入により、私たちはオーナーの皆様とのつながりを保ち、より多くのセルフサービス機能の提供に向けて新しいアプリケーション機能を継続して追加できるようになりました。
また、ショッピング モールのテナントを新しい API とつなぐことも開始しました。私たちのドバイ モールは、1,300 の店舗、レストラン、娯楽施設(映画館、アイスリンク、水族館など)を擁する世界最大のショッピング センターです。ビジターの皆様とはドバイ モール アプリケーションでつながっていますが、そうした人々にテナントの最新情報を提供するにはテナント各店とのやりとりが必要です。テナントの皆様からイベント、混雑状況、セールなどの最新情報を提供していただき、それをビジターの皆様にお知らせすることでショッピングに誘導するのです。
開発者ポータルは API ドキュメントを使いやすく一元管理しており、テナントの皆様に API を活用していただくにあたって大きな役割を果たしています。テナントとの連携を始めてからまだわずかですが、すでに 60 の小売業者にご利用いただいています。開発者ポータル開設以前と比べ、インテグレーションのスピードは 5、6 倍にアップしました。今後数か月のうちに、さらに多くの小売業者に参加いただけるものと確信しています。
API の今後への大きな展望
Apigee の導入により、API のデプロイやセキュリティ確保のためのツールが手に入るだけでなく、API を最終的に収益化することも視野に入ってきました。たとえば、ホテルやレストランの予約、イベントやアトラクションのチケット購入など、Emaar が運営する事業において広く使用されているアグリゲータ アプリケーションやサービスへの API の提供です。収益化の体制が整ったときに、それを実現するテクノロジーがすでに存在するというのはとてもすばらしいことです。
Apigee は、新しい事業展開のためのチャンスも与えてくれます。魅力的で有益なエクスペリエンスを将来にわたってお客様に提供できるよう、API の新たな活用方法に期待しています。
- By Binoo Joseph, CIO, Emaar and Venkadesh Sivalingam, Integration Architect, Emaar