自社実践: Google Cloud コンサルティングにおける AI 主導ビジネスの構築
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2024 年 4 月 12 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Google にはプロダクトを自社実践する文化が根付いています。つまりプロダクトを社内で使用し、テストすることで、自社のチームやお客様の体験を向上させています。この慣行は、プロジェクト LEAP(Google Cloud コンサルティング(GCC)内で Vertex AI をビジネスのあらゆる部分に活用する社内の取り組み)の中核をなしています。
今週開催される Next ‘24 では、AI を活用したサービスのビジネスを創出するために、社内で Vertex AI プロダクトをどのように利用しているのかをご紹介します。ここでは、この取り組みの中で開発してきた注目すべきアプリケーションを 2 つ取り上げます。
1. GCC Assist: AI 搭載の情報ハブ
Google Cloud コンサルティングには、実践的なデリバリー体験、アーキテクチャ モデル、ベスト プラクティスのガイダンス、デリバリー ガイド、テンプレートなどの充実したデータが大量に蓄えられています。驚くべき知識のリポジトリを築き上げたものの、それをすぐにユーザーに活用してもらえるような簡単な方法は用意していませんでした。
そこで、簡単な自然言語のやり取りで情報を要約したり合成したりするために Vertex AI のベクトル検索と生成 AI を活用したところ、Google のチームの全員がデータの価値を引き出せるようになりました。アイデアはシンプルで、データに基づいて自然言語クエリを直感的に理解し応答することができる、一元化された AI 搭載アシスタントを作成する、というものでした。Vertex AI により、GCC ユーザーが AI による対象分野の個人向けエキスパート機能をオンデマンドで利用できるようになりました。これはサービス提供に関する分析情報や、ベスト プラクティス ハンドブック、お客様のユースケースに基づくサービス、その他の重要な運用リソースを探すために役立ちます。
Google のチームはすでに、Vertex AI で情報検索、お客様とのミーティングの準備、サービスの提供にかかる時間を短縮できることを実感しています。この情報ハブをすぐに利用できるようにしたことで、チームメンバーが答えや情報を素早く見つけて、お客様に適切なサポートと効果的なガイダンスを提供できるようになりました。
たとえば、Google Cloud コンサルティングのディレクター Dan Roiter はこのように述べています。「Teradata から BigQuery への移行をどのように実現するかについて、重要なミーティングをお客様と行いました。その際、この分野に詳しい技術エキスパートとして GCC Assist にいくつか質問をしたところ、サンプル プロジェクト、リファレンス アーキテクチャ、メリットの例、ウォッチポイントを確認できました。そうしてお客様とのミーティングの準備を整え、プログラムを進めることができました。」
2. GCC Scribe: 生成 AI による契約書起案パートナー
Google のチームは、お客様とのプロジェクト計画を把握し文書化するために、顧客エンゲージメントの範囲設定や作業明細書(SOW)の作成もサポートします。調査や起案には何時間もかかることがあり、多くの場合、専門分野の異なる複数の人員が必要になります。
このプロセスを加速させるために、Google は GCC Scribe を作成しました。Vertex AI のベクトル検索を活用したこのツールを使用することで、チームは契約書や SOW を素早く作成し、提供することができます。Scribe により、ユーザーは自然言語で SOW を検索して特定の実装シナリオを記述したり、テンプレートや承認済みの前例に基づいて SOW の草案を生成したりできます。Scribe では契約書の自動レビューも利用できます。これは AI を使用して提出前の契約書のレビューを行う機能であり、問題を報告したり、承認プロセスを加速させたりするために役立ちます。
取り組むにあたっての課題
Google はお客様とのやり取りや日頃の経験から、生成 AI のテストが通常は迅速であり、素早い概念実証を実現できるものであると認識しています。しかし、本番環境に対応できる有用な生成 AI アプリケーションを開発するには、明確な効果のある有益な機能を構築し、データ品質、データの可用性、セキュリティ、プライバシーについて入念に検討する必要があります。
Assist と Scribe の両アプリケーションを開発するにあたり、Google は大きな課題に直面しました。AI プロジェクトの実装を開始する際は、こうした点に注意することをおすすめします。
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データの準備: 優れた生成 AI 体験を実現するには、関連性の高い充実したデータが必要です。Google はアップストリームのデータオーナーと提携することで、適切なデータを取得して正規化し、正確な引用のためにメタデータで補強しました。この評価は、データに関する現在と今後の機会を示すために役立ちました。
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アプリとプラットフォーム: 長期的な価値を最大限に高めるために、新しいアプリを個別に構築するのではなく、構築するためのプラットフォーム アプローチを採用することにしました。一度取り込まれたデータは、複数の目的やユースケースに利用できます。プラットフォーム アプローチには事前の計画が必要ですが、最終的には将来の機能開発を加速させることができます。
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大規模なパーソナライズ: インターフェースには毎日のように、生成 AI を活用したチャット機能などの新しいイノベーションが起きています。Assist でユーザーはさまざまなボタンをクリックして、特定の分野の質問を行うことができます。これにより、(1)ユーザーの期待する目標を定め、(2)データセットごとにプロンプト エンジニアリングを提供して、(3)ロールタイプに基づいたシンプルなレベルのアクセス制御を行うことができます。
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セキュリティとプライバシーの考慮: エンタープライズ アプリケーションにおいて、データと AI に関するセキュリティとプライバシーは重要なコンセプトであり、計画の初期段階で考慮する必要があります。当初からこうした問題に対処しておくことで、セキュリティとプライバシーを、機能の設計やアーキテクチャの決定の基礎とすることができます。
プロジェクト LEAP から得た最大の収穫
GCC で AI を導入した経験に基づくと、Google がその過程で得た最大の教訓は、同じ主要テーマに帰結します。つまり、データの課題、ユーザー中心設計の重要性、そして専門的な観点から AI に特有な考慮事項を深く理解することです。
ここで、生成 AI の導入を成功させるために役立つ 4 つの推奨事項を紹介します。
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必ずライブデモを行い、早期のフィードバックを求める: AI のデプロイは、「理論上」ではうまくいきません。経営陣の賛同を得たり、アイデアや新しいプロダクト機能について正確なフィードバックを集めたりするには、実際の対面デモや仮想デモを行うことが重要です。
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ユーザーと話す: ユーザー エクスペリエンスが優れているということは、つまりプロダクトのユーザーについてよく理解しているということです。ユーザーが建設的なフィードバックを提供できるようなプロセスを確立し、作業が進行中のものであってもユーザーがテストできるようにしましょう。
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投資し、最初の一歩を踏み出す: 生成 AI を使用して今作成するものは出発点にすぎなくても、投資する価値はあります。生成 AI をうまく使用したり取り入れたりできれば、将来的に差別化要因になる可能性があります。早ければ早いほどよいでしょう。
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自分のために解決し、他者のために解決する: どのようなプロジェクトにも、別の部門、部署、会社に展開する機会があります。自分にとって有用なものを作れば、拡大するチャンスが生まれます。
詳細については Google Cloud Next でお伝えします。また、この 2 つのソリューションの技術的な実装や基盤について詳しく説明する記事を投稿する予定です。
Google Cloud コンサルティングでは、Vertex AI を使用した生成 AI のユースケースをテストする方法や本番環境に導入する方法について、ガイダンスを提供しています。Google は、クラウドへの独自の取り組みを行うすべてのお客様に対して、適切なサポートを行いたいと考えています。Google Cloud コンサルティングが学習、構築、運用、成功にどのように役立つかについて詳しくは、こちらのページをご覧ください。
これらの取り組みでリーダーシップを発揮し協力をしてくれた Kaitlin Ardiff、Gautam Bajaj、Daniel Massarsky、Robin Singh、Crispin Velez、Vineet Verma に感謝します。また、イノベーションを熱心に支援し、Google Cloud AI プロダクトの最前線で活躍してくれた Sunil Rao と Lee Moore にも感謝します。
-GCC LEAP、AI プロダクト リード Bob Greenlees
-GSD コアサービス - ディレクター、GCC 自動化およびツールリード Ashutosh Gupta