Cloud WAN: AI 時代に適したネットワークでグローバル企業をつなぐ

Muninder Sambi
VP, PM and GM, Networking, Google Cloud
※この投稿は米国時間 2025 年 4 月 9 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Google は 25 年以上にわたり、Gmail、YouTube、Google 検索などの重要なサービスを世界中の数十億のユーザーに利用いただくため、ネットワーク技術の限界を押し広げてきました。その基盤となっているのが、Google の広大なバックボーン ネットワークです。202 の 接続拠点(PoP)、約 320 万キロメートルを超える光ファイバー、33 本の海底ケーブルを有し、99.99% の信頼性 SLA に裏付けられた Google のネットワークは、堅牢で耐障害性に優れたグローバル プラットフォームを提供しています。
Google が使用する世界規模のネットワーク インフラストラクチャが Google Cloud とクロスクラウド ネットワーク ソリューションを支えています。本日、Google Cloud の新しい Cloud WAN ソリューションを通じて、すべての企業と政府機関が Google のグローバル ネットワークを利用可能となることを発表しました。
Cloud WAN は、エンタープライズ ワイド エリア ネットワーク (WAN) アーキテクチャを変革する、信頼性が高く、安全なフルマネージド エンタープライズ バックボーン サービスです。アプリケーション パフォーマンス向上のために最適化された Google の世界規模のネットワークを活用しています。Cloud WAN は、パブリック インターネットと比較して最大40% 高速なパフォーマンス1を実現し、お客様自身が管理する WAN ソリューションと比較して総所有コスト (TCO) を最大 40% 削減2 することが可能です。
エンタープライズ WAN の進化
従来、企業は拠点間の安全で信頼性の高い接続を実現するため、マルチプロトコル ラベル スイッチング (MPLS) ネットワークに大きく依存していましたが、これはコストのかかるアプローチでした。しかし、SaaS やクラウド アプリケーションの急速な普及により変革が必要となり、インターネットを利用した、より低コストの代替手段であるダイレクト インターネット アクセス (DIA) を備えた SD-WAN が登場しました。その後、アプリケーションのパフォーマンスを向上させるため、企業はコロケーション施設を利用したクラウド オンランプを構築しました。これにより、レイテンシは改善されましたが、複雑さとコストも増加しました。この発展に伴い、セキュリティ サービス エッジ (SSE) と自己管理型アプライアンスが混在するセキュリティ スタックが急増し、一貫性のないセキュリティ体制が生まれました。
その結果、企業のネットワーク接続は本質的に複雑で管理が困難になり、断片化されたセキュリティを持つ多様なネットワークが混在し、信頼性、速度、コストのバランスを常に調整する必要が生じています。
AI の急速な普及により、企業ネットワークに対する要求がさらに高まっています。多くの場合、AI ベースのアプリケーションには、複数のクラウドやオンプレミスのデータ センターにまたがる高度に分散したインフラストラクチャが不可欠で、大規模なスケーラビリティ、堅牢なセキュリティとプライバシー、効率的なリソース利用を実現しながらも、コスト効率の高いグローバル ネットワークが求められています。
こうしたニーズに対応するため、Cloud WAN は、あらゆる企業サイト、アプリケーション、ユーザーを安全かつ確実に接続し、最適なパフォーマンスを確保してコスト削減を実現する統合エンタープライズ ネットワーク ソリューションを提供します。
Cloud WAN は、地理的に分散したデータセンター間の高性能な接続と、 プレミアム ティア ネットワークを活用したブランチ間接続とキャンパス環境の接続という 2 つの主要なユース ケースに対応します。


ユースケース 1: 高性能なリージョン間接続
大規模なグローバル企業が広範なデータセンター ネットワークを運用する場合、大量のデータを確実に移動できる必要があります。Cloud WAN は、地理的に分散したデータセンターを接続するための柔軟な接続オプションを提供し、容量制限や高い運用コスト、信頼性が低い従来のソリューションの課題を解決する新たな選択肢となります。
このユースケースは、以下の主要機能によって実現されます。
Cloud Interconnect は、Google Cloud リージョンとオンプレミス データセンター間のプライベートかつ専用の低遅延接続を提供し、世界中の 159 を超えるロケーション施設からデータセンターを Google Cloud に接続できるようにします。
Cross-Cloud Interconnect は、Google Cloud とAWS、Azure、OCI などの他のパブリッククラウド環境間のマルチクラウド接続を可能にし、21 のロケーションで利用できます。
Cross-Site Interconnect により、データセンター間のアプリケーションを接続するために最適化された専用のポイントツーポイントのレイヤ 2 プライベート 10/100G 接続が実現します。これは、企業、政府機関、通信事業者向けに設計されています。Cross-Site Interconnect により、Google Cloud は自社のネットワーク上で透過的なレイヤ 2 接続を提供する初の主要クラウド プロバイダーとなります。現在、一部の国でプレビュー提供中で、2026 年にはより多くのエッジ ロケーションに拡大予定です。


Cross-Site Interconnect の主な利点は次のとおりです。
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エンタープライズグレードのパフォーマンス: Cross-Site Interconnect は、99.95% の SLA と組み込みの冗長性、そして Google の高性能グローバル ネットワークを備えた、高帯域幅 (10/100G) のデータセンター間接続ソリューションです。
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グローバルなリーチと容量: Cross-Site Interconnect は、大西洋横断および太平洋横断ネットワーク用に国際的な容量を備えた、約 320 万キロメートルを超えるファイバーネットワークを持つ Google Cloud のグローバルバックボーン上で実行されます。
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リスクとコストの最適化: Cross-Site Interconnect は、冗長化された光インフラストラクチャを活用して、物理ネットワークと光ファイバーの障害を回避してネットワーク トラフィックを動的に再ルーティングし、一貫したサービス可用性を維持します。
注: Google Cloud は、Network Connectivity Center (NCC) を通じてスケーラブルなレイヤ 3 ルーティング ソリューションもサポートしています。詳細は次のセクションをご参照ください。
「リサーチ活動を拡大し、パフォーマンスが重視されるワークロードを Google Cloud で継続的に運用するには、スケーラブルで信頼性の高いグローバル ネットワークが不可欠です。Google の Cloud WAN がもたらす安定性と信頼性を活用して、ハイブリッド ネットワークの高まるニーズに対応していきたいと考えています。」
Citadel Securities、Cloud Platform Engineering責任者、Chris Dee氏
ユースケース 2: ブランチおよびキャンパス ネットワークの移行
Google の プレミアム Tier ネットワークは強力な クラウド オンランプとして機能し、ブランチ やキャンパスをパブリック クラウド リソース、SaaS アプリケーション、インターネットに安全に接続するのに役立ちます。Cloud WAN は、Google の信頼できるネットワークのパフォーマンスと安定性を企業に直接提供する統合フルマネージド型ソリューションです。これにより、セキュリティを確保しながらTCO を削減し、オンデマンドでの多対多接続を実現します。さらに、Google のオープンでありながら緊密に統合されたエコシステムにより、企業は最高水準のセキュリティとネットワーク サービスを柔軟に選択でき、ニーズに合わせたカスタマイズが可能です。


プレミアム ティア ネットワークによる最大 40% のパフォーマンス向上
このパフォーマンスの基盤となっているのは、アプリケーションに堅牢で耐障害性の高いプラットフォームを提供するGoogle の卓越したバックボーン ネットワークです。
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Google の プレミアム ティア ネットワーク サービスは、最適なアプリケーション パフォーマンスを実現するよう設計されています。Cloud WAN をターゲットとするインターネット ベースのトラフィックが、地理的に最も近い PoP から Google の高性能ネットワークに接続できるようになります。これにより、ネットワーク PoP 数が最小化され、レイテンシが低減し、一貫性のあるユーザー エクスペリエンスを実現します。
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5,700 以上の ダイレクト ピアリング接続と 6 万以上の自律システム番号 (ASN) への到達可能性を備えた Google は、クラウドプロバイダー第 1 位、グローバル ピアリング第 6 位にランクインしています。この広範なピアリング ネットワークにより、他のネットワークとの効率的なトラフィック交換が実現され、アプリケーション パフォーマンスがさらに向上します。
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Google Cloud の検証済みピアリング プロバイダープログラムにより、お客様は最高レベルの可用性を持つ ISP を選択できます。このプログラムは、現在世界中のすべての ISP に公開されており、冗長性と多様性を備えた接続を提供しています。
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Lumen Technologies との連携による専用光ファイバー アクセス(2025 年時点では一部の地域で利用可能)により、データ センター、支店、倉庫、空港など、お客様が運営する拠点から Cloud WAN へのラスト マイル接続が可能になります。
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BT は、Global Network-as-a-Service (NaaS) を通じて、Cloud WAN を使用して BT のお客様に Google Cloud への直接接続を提供しています。
Cloud WAN のアーキテクチャは、現代の企業の多様な接続要件に対応する柔軟なオプションを提供します。Network Connectivity Center は、企業が Cloud VPN または任意の SD-WAN ソリューションを使用してブランチ接続するための中央ハブとして機能し、キャンパスやデータセンターは高帯域幅 (10G、100G) の接続に Cloud Interconnect を利用できます。さらに、Network Connectivity CEnterによるサイト間データ転送が、現在世界 20 か国で利用可能です。これにより、企業ネットワークの到達範囲と信頼性をさらに拡張できます。
「Cloud WAN は、エッジとクラウド間のギャップを埋めることで、当社のアプリケーション パフォーマンスを最大 40% 向上させ、コストを削減し、エンドツーエンドのデジタル化のための拡張性に優れた基盤とサポートを提供しています。」
Nestle、グローバル IT プラットフォーム責任者、Ralf Huebenthal 氏
Cloud WAN は、これらの強力なネットワーク機能を組み合わせることで、アプリケーション 体験を大幅に向上させ、企業はユーザーが期待するパフォーマンスを提供できるようになります。
Cloud WAN は TCO を最大 40% 削減
お客様が管理する WAN ソリューションと比較して、Cloud WAN は TCO 2を最大 40% 削減します。また、さまざまなニーズに合わせて使用量ベースと固定価格の両方のオプションを柔軟に選択できるため、固定の初期コストを大幅に削減できます。高帯域幅のインターネット データ転送を実行する組織向けに、Cloud Interconnect の固定価格モデルを拡張し、今四半期に一般提供を開始予定です。Cloud WAN を使用することで、企業はキャリア ニュートラル施設の展開をより少ないクラウド リージョンに集約し、コストを削減できます。
柔軟性と選択肢を提供する緊密に統合されたオープン エコシステム
Cloud WAN は、オープンで柔軟性があり、緊密に統合されたエコシステムを備えており、堅牢で適応性の高いネットワークを構築するために必要なツールを企業に提供します。Cloud WAN は、幅広い ISV エコシステムからのネットワーク サービスとセキュリティ サービスの容易な統合を実現します。
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Cisco、Fortinet、Juniper Networks、Netskope、Velocloud などの主要ベンダーが参加する強力な SD-WAN パートナー エコシステムを展開。企業は、自社で管理するか、パートナーによる管理型オーバーレイ接続を利用するかを選択できます。
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NCC Gateway を使用する Cloud WAN (第 2 四半期にプレビュー提供予定)は、プライベートおよびパブリック アプリケーションにアクセスするユーザー向けにセキュリティ サービス エッジ(SSE)の管理型統合を提供する初の主要クラウド ソリューションです。SSE ソリューションは、Broadcom、Menlo Security、Palo Alto Networks から提供されます。
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柔軟なセキュリティ オプションにより、Cloud Next Generation Firewall (NGFW) を使用するか、ネットワーク セキュリティ統合を通じて Check Point、Fortinet、Palo Alto Networks の NGFW 仮想アプライアンスを統合することが可能です。
また、パートナー ソリューションを活用して Cloud WAN のメリットを拡張し、俊敏で安全かつ自動化されたブランチ ネットワークを構築して、以下の機能を備えた新しいブランチやサービスの迅速な展開が実現します。
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Infoblox ユニバーサル DDI は、インフラ不要のクラウドベースのドメイン ネーム サービス(DNS)、動的ホスト構成プロトコル(DHCP)、IP アドレス管理 (IPAM)を提供することで、ブランチ ネットワークをモダナイズし、簡素化します。オプションの DNS セキュリティ コンポーネントにより、フィッシングやマルウェアからの保護を提供し、ユーザーは重要なアプリケーションに安全に接続できるようになります。
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Juniper Networks Mist は、ユーザー エクスペリエンスを最適化するための包括的な分析と自動化を提供し、AI を活用したキャンパスとブランチの変革を実現します。この統合には、Wi-Fi、有線アクセス、SD-WAN、ネットワーク アクセス制御 (NAC)、屋内位置情報サービス、IoT 分析などのクラウド提供型の重要なネットワーク サービスが含まれます。
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Google Distributed Cloud (GDC) との接続構成での統合により、レイテンシの影響を受けやすいアプリケーションのエッジに Google Cloud のコンピューティングの利点を拡張します。GDC は、コンテナ化されたアプリケーションと VM ベースのアプリケーションをサポートするフルマネージド プラットフォームであり、Cloud WAN を使用して Google Cloud リージョンに自動的に接続されます。
パートナー管理型サービス
エンタープライズ バックボーンのニーズにすでにマネージド サービス プロバイダーを活用している企業は、Cloud WAN への移行時に、引き続き既存の優先パートナーと連携することができます。また、Cloud WAN の移行、導入、運用支援を必要とする企業は、Google Cloud のグローバル システム インテグレーター(GSI)パートナーと連携することが可能です。サービス開始時点では、Cloud WAN パートナーには Accenture、HCLTech、Wipro が含まれ、これらのパートナーはサービス アーキテクチャの設計、移行、継続的な管理サービスを提供します。
Cloud WANの詳細について
Cloud WAN は、企業がグローバル インフラストラクチャを接続して保護する方法を変革します。シンプルさ、高いパフォーマンス、豊富な接続性とセキュリティ サービスの選択肢に加え、大幅なコスト削減を実現することで、クラウド内外でのイノベーションと成長に集中できるようになります。
Cloud WAN の詳細については、Cloud WANに関するセッション およびCross-Cloud Network ソリューション ページをご覧ください。Google Cloud Next 2025 で開催するネットワーキング関連の ブレイクアウト セッション もぜひご覧ください。
1. テスト中、ターゲットへのトラフィックがクロスクラウド ネットワーク経由で移動した場合、同じターゲットへのトラフィックがパブリック インターネットを経由して移動した場合と比較して、ネットワーク レイテンシが 40% 以上低下しました。
2 アーキテクチャには SD-WAN とサードパーティのファイアウォールが含まれます。マルチサイト コロケーション施設を使用するお客様管理の WAN と、Google Cloud によって管理およびホストされる WAN を比較しています。