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Google Maps Platform

Google の新しい Solar API で未来の発電を切り開く

2023年9月6日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 8 月 29 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

編集者注: この投稿は、世界規模で開催されるインスピレーション、イノベーション、教育に関する展示会「Next '23」から Google Maps Platform に関する最新のニュースをお伝えするシリーズの一部です。Google Maps Platform の新機能の詳細は、 8 月 30 日の午前 11 時から 11 時 45 分(米国太平洋夏時間)に行われた「Google Maps Platform の新機能」のセッションでもご覧いただけます。


世界的なエネルギー危機、電力価格の上昇、政策の推進、費用削減などにより、再生可能エネルギーは前例のない成長を遂げています。中でも、2023 年の世界の再生可能エネルギー量で予測される増加量の 3 分の 2 を占めているのが、太陽光発電です。実際に、昨年 Google での「屋上太陽光発電」に対する検索インタレストは約 60% 増加しました。太陽光発電が導入しやすくなるにつれ、世界中の太陽光発電企業や開発者に情報とテクノロジーを提供できる可能性や、このような提供に対する需要が高まっています。このような状況を背景に、このたび Google は Solar API を発表しました。Solar API は、Google Maps Platform の新しい Environment API 群に含まれています。Solar API は、クリーンで再生可能な太陽光発電への移行を促進する目的で、重要な建物、屋根、日陰、パネル構成に関するデータを提供します。このデータは、世界 40 か国(アメリカ、イギリス、ドイツ、日本など)の 3 億 2,000 万棟の建物をカバーしています。

Solar API の開発

Google のチームが以前に立ち上げた Project Sunroof は、屋上太陽光発電システムを設置することで、どの程度節約できるかを把握できるようにするものでした。当然ながら、企業は太陽光発電技術の計画と導入を改善するために、この情報を利用することを希望しました。特定のビジネスニーズに合わせてプロダクトを調整するため、世界中の太陽光発電業界のリーダーたちと協力し、数年をかけて総合的な太陽光発電データ ソリューションのテストと開発に取り組みました。 

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Solar API は、太陽光発電のマーケットプレイス ウェブサイト、太陽光発電設置業者、SaaS 開発者、そして特定の場所で屋上太陽光発電のポテンシャルを把握したいと考えているユーザーにとって有用な機能を多数提供します。Solar API は 2 つのエンドポイントを提供します。

Building Insights エンドポイントは、建物の位置、面積、太陽光発電のポテンシャルに関する詳細情報を提供します。屋根のサイズと傾斜、屋上太陽光発電アレイのモデル発電量などの情報が含まれています。この情報は、太陽光発電システムを設置することで得られる可能性がある恩恵を評価する場合や、住宅や建物のオーナーがさまざまな太陽光発電の構成を調査および比較できるように太陽光発電専門家が支援する場合に使用できます。

Data Layers エンドポイントは、ある地点の周辺における太陽光発電についての、より詳細な未加工情報を提供します。この詳細情報には、システムのパフォーマンスに影響する可能性がある日陰や、詳細なシステムの配置とレイアウトを容易に進めるための屋根の数値表層モデルなどがあります。この情報を利用することにより、太陽光発電設置業者はそれぞれのニーズに合わせてカスタマイズされた太陽光発電システムの提案を作成でき、SaaS 開発者はより効率的なパネル配置の設計を自動化できます。

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Solar API Data Layers エンドポイントによる画像データ。上から下の順に、フラックス マップ、建物マスク、数値表層モデル(DSM)、および RGB(航空写真)

このデモで、Solar API で太陽光発電の導入をどのように促進できるかをご覧ください。

太陽光発電の設置販売業務の向上

住宅向け太陽光発電システムの設計と設置のプロセスが何段階にもわかれ長期にわたることは、特に珍しいことではありません。太陽光発電企業は通常、不動産オーナーに情報を提供し、屋根を手作業で測定し、(しばしば不完全な太陽光発電ポテンシャル情報に基づく)複数の設計案を作成し、金額面の情報を準備するという一連の作業に時間をかける必要があります。さらにこのすべての作業を、設置契約の締結前に完了しておかなければなりません。
太陽光発電企業は Solar API を利用することで、太陽光発電に関心のある不動産オーナーに対するカスタマー エクスペリエンスを強化し、現場を訪問しなくても信頼性の高いプロジェクト提案を策定し、設置業務全体を迅速化できます。これらの各要素が、屋上太陽光発電システムの導入促進と、二酸化炭素排出量の軽減に寄与します。

カスタマー エクスペリエンスの向上

Solar API により、企業は特定の住所での屋上太陽光発電システムのポテンシャルに関する高品質の視覚的な分析情報を利用して、見込み顧客に情報を容易に提供し、積極的にアプローチできるソリューションを開発できます。これにより、顧客はパーソナライズされた関連情報をすぐに確認できます。企業は Solar API を使用することで、現場を訪問せずに、推定される費用削減額、太陽光発電パネルの設置アレイの設計、信頼性の高い見積もりを提供できます。消費者は、オンライン上にある意思決定に必要な情報に自動的にアクセスできるようになっているため、セールス 活動が効率化され、顧客の満足度と信頼度が大幅に向上し、労力と費用の削減とコンバージョンの増加が期待できます。

東京電力ホールディングス株式会社(TEPCO)は、長期にわたるパイロット ユーザーであり、現在 Solar API を利用しているお客様です。TEPCO が開発した屋上太陽光発電システムのオンライン シミュレーション Suncle では、太陽光エネルギー導入のプロセスが非常に簡単になり、かつ楽しみながらできるようになります。

「住宅オーナー様は住所を入力するだけで、地図上で自宅の位置を確認し、要望に応じて電気代や設置する太陽光発電システムの容量を調整できます。設置費用、利用可能な補助金、費用削減額、損益分岐点、太陽光発電システム設置による CO2 削減量など、すべての情報を数秒で確認できます。この情報を取得するのに Suncle を利用しないとすれば、設置業者に自宅まで来てもらう必要があります」と TEPCO の ESG 推進室ディレクター、ジェンキンズ真佐美氏は語ります。「Suncle の無料オンライン太陽光発電シミュレーションは、この初期の問題を解決し、再生可能エネルギーを消費者にとってより身近なものにします。このシミュレーションは、すべての建物の屋上太陽光発電のポテンシャルを計算して提示する Solar API によって実現しました。これにより、太陽光発電システムへの移行に興味がある住宅オーナー様に、この分析情報を瞬時に提供できます。」

より適切な提案の作成、費用削減、機会拡大

太陽光発電の専門家は、高度なデータと画像を利用できることで、カスタマイズされた詳細な太陽光発電システムの設計と提案を作成できます。稜線、屋根貫通部、障害物、経時的な日陰パターンを示す鮮明な画像を使用して、太陽光エネルギーを最大限に収集するパネルのレイアウトを容易かつ迅速に作成できます。これにより精度が向上し、屋根のリフォームや元の見積もりの変更が発生する可能性が減少します。

Solar API から提供されるデータと分析情報で重点を置いているのは、費用がかかる手作業のプロセスから、時間を節約できる自動化された手法に置き換えることです。各パネルのエネルギー ポテンシャルを最大限に引き出す太陽光発電システムを屋根に設置できるかどうかの可能性とその要件を判断するプロセスの自動化です。設置業者の時間と費用が節約でき、販売契約成立への障壁が取り除かれます。

さらに、Solar API の対象地域は広範囲にわたっているので、専門家は周辺地域や地方を全体的に確認して、設置場所、投資、事業成長の機会の優先順位を見極めることができます。

太陽光発電設置企業 Mona Lee の創業者兼 CEO、Walid Halty 氏は「Mona Lee Solar では、AI を利用して住宅オーナーのエネルギー ニーズに対応した最適な太陽光発電システムの設計を瞬時に作成しており、太陽光発電施工業界を大きく変革しています。Solar API は重要なインプットです。屋根を解析して日射量を計算し、同じワークフローで顧客への提案を作成するために必要なデータが、Solar API から瞬時に提供されます。これをリモートで瞬時に実行することで、費用削減額が増加し、より優れたカスタマー エクスペリエンスを提供でき、この業界での当社の急速な成長が促進されます」と述べます。

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平均的な 1 年間の屋根の日照と日陰を示す Solar API Data Layers エンドポイントからの月次フラックス画像。

クリーンな未来へ向けて

大規模な二酸化炭素排出量を低減するクリーン テクノロジーの導入を促進することは、Google の最優先課題の一つであり、Solar API はその肝要な役割を果たします。クリーン エネルギーへの移行は気候変動対策における重要なステップであり、個人、自治体、お客様が協力して 2030 年までに年間 1 ギガトン分の炭素換算排出量を削減する取り組みに Google が積極的に協力するうえでの重要な点です。Google は、他に類を見ない革新的な建物レベルの太陽光発電情報をこの業界に提供することで、費用削減と効率化を実現するソリューション、そして最終的にはより多くの人々に対して太陽光発電エネルギーへの移行を促すソリューションが実現することを期待しています。

Google は将来を見据え、短期の進展と長期の飛躍的な進歩の両方を促進することを目指しています。企業がどれほど意欲的であっても、気候変動のような深刻な課題を単独で解決することは不可能です。Google ができる有効な取り組みの一つは、Google とその顧客、そして世界中の人々が有意義な行動を起こすためのテクノロジーを構築することです。Google は、Solar API を含む Environment API 群の大きな可能性を信じています。

まずは、Solar API ウェブページドキュメントをご覧ください。Google の新しい Environment API 群の詳細については、 8 月 30 日の午前 11 時から 11 時 45 分(米国太平洋夏時間)に行われた「Google Maps Platform の新機能」のセッションでもご覧いただけます。


- Google Maps Platform、プロダクト マネージャー Saleem Van Groenou

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