Google Maps Platform を使い取引や銀行業務の透明性を高める
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2020 年 10 月 22 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
編集者注: 本日の投稿では、Snowdrop Solutions の CEO である Ken Hart 氏に、さまざまな質問に回答いただいています。Snowdrop Solutions は、Google Cloud プレミア パートナーであり、2014 年初めに欧州で Google Maps Platform との連携を開始し、最近ではスタンダードチャータード銀行と協業して、アジアでもビジネスを拡大しています。
金融サービスのお客様をサポートするうえで、Snowdrop の開発したロケーション ソリューションがきわめて重要な役割を果たしている背景を教えていただけますか?
支出の方法や場所についての消費者の疑問や不安を解消するには、実際に支出した場所を消費者に明示することが重要です。また、当社は新規のデジタル カスタマーのオンボーディングや不正行為の早期発見など、その他のロケーション ベースのユースケースにも取り組んでいます。これらのすべてのステップにおいて、詳細なロケーション データと私たちの専門知識が、透明性、信頼、顧客満足に基づく革新的なデジタル バンキング エクスペリエンスの構築の核心部分となっています。どこでどのようにお金を使っているかを把握することは、現在利用者が銀行に求めていることの中心にあります。
Snowdrop Solutions が、金融サービス業界向けのソリューションを開発することを決定した理由と、お客様が直面していた早期の課題はどのようなものでしたか?
3 年ほど前、英国で業界をリードしているいくつかのデジタルバンクと緊密な連携を開始しました。このような企業が直面していた課題は、ユーザー エクスペリエンスに関するものでした。多くの利用者は、自身の銀行取引が取引コードと取引 ID で表示されているため内容を理解してはいませんでした。その内容は、実際の販売者の名前や場所に基づいていないため、利用者が直感的に理解できるものではありませんでした。そのため、利用者は、銀行のカスタマー サービス センターに問い合わせて、個々の取引についての説明を求めなければなりませんでした。そこで、私たちは、取引データの品質と充実度を向上させ、コールセンターへの問い合わせを減少させることにより、全体的な費用を削減することができると考えました。
Snowdrop の Merchant Reconciliation System(「MRS」)とそのシステムによってお客様にメリットがもたらされる仕組みを教えてください。
MRS は、Google Maps Platform を使って構築しており、銀行から整理されていない取引データを入手し、「クリーンに」して、販売者のロゴ、販売者の名前、販売者のウェブサイトなどを含む、簡単に使用し理解できるリストを提供します。Places API と Maps API を使用して、MRS は取引ごとに展開されたビューを利用者に提供します。そこには、会社や店舗名、インタラクティブな 360 度ストリートビュー画像、取引が行われた場所などの豊富なローカルデータが含まれています。これにより、利用者はカード取引に間違いがないと確信でき、カスタマー サービスへの電話や取引についての問い合わせを減らすことができます。
この分野での先行ユーザーのお客様事例と、それらのお客様が自社のサービスを開始するために Snowdrop Solutions を選んだ理由を教えてください。
早期のお客様である Dozens は、差別化されたカスタマー エクスペリエンスを提供するために当社の MRS を通じてすでに行っている取り組みから効果を得たいと考えていました。Dozens は、利用者がより賢く支出や節約ができるようにすることを目指していました。つまり、Dozens が Snowdrop と連携することを選択したのは、支出についての分析情報を利用して、市場に最初に参入するという目的があったためです。Snowdrop の MRS 製品と専門知識を活用することにより、Dozens は利用者が自身の支出の額、場所、日時、方法を詳しく理解できる仕組みを迅速に提供することができました。そのために、Dozens は、Google Maps Platform の場所に関する豊富なデータをアプリに統合しました。これにより、アプリ利用者は取引の位置データを可視化して、自身の支出の状況を確認し、支出の習慣と傾向を把握できるだけでなく、金融商品について起こりうる不正行為や不正使用の不安を減らすことができます。
新しいフィンテック企業と従来の金融サービス企業との間で、Snowdrop のソリューションの受け入れ方に違いはありましたか?
「チャレンジャー バンク」や「ネオバンク」などと呼ばれることもあるデジタルバンクは、一からソリューションを構築しているため、よりアジャイルになれる立場にあります。多くの場合、デジタルバンクは明確な価値提案を持ち、利用者のエクスペリエンスの向上が自社のサービスの基礎であると考えています。従来型の銀行は、旧来の IT インフラを考慮する必要があります。つまり、革新的な新しいカスタマー エクスペリエンスの促進や新しい技術の統合のために必要なデータへのアクセスと提供についてより多くの要件を検討しなければなりません。
一般にデジタルバンクは、より実用的かつアジャイルであり、事実としてカスタマー エクスペリエンスの向上に集中的に取り組んでいます。また多くの場合、すべてを社内で一から構築する必要はないと認識しています。
スタンダードチャータード銀行(SCB)が、Snowdrop Solutions と提携した目的と、ソリューションからどのようにメリットを得ようとしているかについて教えてください。
革新的な銀行である SCB は、サービスの最前線でより良い消費者エクスペリエンスを提供し、イノベーションおよび、ロンドンにあるチャレンジャー バンクが一部を開発したベスト プラクティスの迅速な採用により、シンガポール市場をリードすることに注力しています。そのため、SCB は当社と提携し、Standard Chartered Places(SC Locate)をリリースしました。これは、MRS と Google Maps Platform を使用して構築した新しいバンキング強化機能で、ユーザーが支出を行った場所をマッピングします。SC Locate により、SCB のリテール クライアントは、デジタル バンキング プラットフォーム上でインタラクティブかつ直感的な方法で支出を可視化します。シンガポールを手始めに、この新機能は、複雑な取引情報をリアルタイムな通知とともに Google マップ上に示されるクリーンで簡単に特定できる場所に変換し、オンライン販売者と店舗販売者の両方の主要ブランドの関連するロゴとカテゴリーを提供します。利用者は自身の支出の習慣を確認し、海外旅行の際にも取引を認識することが可能です。
シンガポール市場に進出を決めた理由と、この地域でそれが重要であった理由を教えてください。
銀行の視点からは、シンガポールはバンキングのハブで、そこでは取引データのより深い分析情報により利用者にインパクトを与えられることは明らかでした。取引と関連付けられた位置情報の固有のメリットは、現在少数の主要な企業のみが銀行サービスを提供している市場において差別化のポイントをもたらします。
シンガポールの銀行の利用者の視点からは、より良いバンキング エクスペリエンスを得られるというメリットがあります。そのために重要なのは、認識しにくい取引から生じる不安を解消することです。もちろん、このメリットはシンガポールに限定されるものではありません。アジアと世界には、このメリットを得られる多くの主要な金融ハブがあります。Google Maps Platform は世界中の 2 億以上の地点の豊富な位置情報を提供してくれるので、MRS により世界中のバンキングのお客様と一般利用者をサポートできます。シンガポールはロンドンと同様、主要な金融ハブです。これら 2 つの都市で起こることは、その多くが数年をかけて周辺地域に波及します。
今後 3 年から 5 年で、フィンテックのお客様による位置情報の利用方法はどのような方向に向かうとお考えですか?
デジタル バンキングは誕生したばかりです。モバイルとクラウド コンピューティング技術が成長を続け、ますます多くのロケーション ベースのデータセットが相互接続されることでしょう。そうした中で、Snowdrop は、Google Maps Platform を活用し、さらに幅広いプロダクトとサービスとの連携を継続して、消費者のものの見方や行動を変えていくお手伝いをしたいと考えています。過去において、銀行取引明細書は、シンプルで固定的な PDF にすぎませんでした。Google Maps Platform が提供する豊富な位置情報により、現在では取引明細情報をもとに、消費者は世界中のどこにいても金融上のおすすめ事項の保存、共有、取得ができるようになりました。
Snowdrop は、お客様各社と多くの興味深い協議を進めていますが、しばらくは内容を明かさないことにいたします。
Google Maps Platform の詳細については、ウェブサイトをご覧ください。
-Snowdrop Solutions CEO、Ken Hart