Parcel Shuttle の環境により配慮したラストマイル配送と、ドライバーの満足度を向上させる方法
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2020 年 8 月 13 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
編集者注: 本日の記事は、Parcel Shuttle の設立者である Simon Seeger 氏の寄稿です。同社は GLS Group 支援のもとベルリンで宅配便ソリューションを展開しています。Parcel Shuttle は「スマート マイクログリッド」システムを利用し、輸送業務で発生するカーボン フットプリントを減らすとともに、ドライバーがより柔軟に働ける機会を提供することで、この分野を再考しています。
昨年、我々が Parcel Shuttle を立ち上げたとき、私は Google Maps Platform の正確なナビゲーションによって、ベルリンで環境に配慮した配送を実現できると確信しました。ですが、何よりも尊い「赤ちゃん」という存在までをも運ぶお手伝いができるとは想像もしていませんでした。
忘れもしません。あの日、あるドライバーが我々の配送管理事務所に連絡してきて、彼の妻の陣痛が始まったためにシフトを続けられないと言ってきました。チームは大急ぎで彼のナビゲーションをリモート操作し、まずは彼の自宅に向かい、そこから病院へ行くルートへ変更しました。続いてチームは、夫婦が最短で分娩室にたどり着けるよう、ルートの最適化とリアルタイムの交通状況予測を行いました。
約 3,200 グラムの Vivien ちゃんが無事に生まれた日は、Parcel Shuttle 全体が大きな喜びに包まれました。この出来事は、そもそも我々がなぜこのビジネスに従事しているのかを思い出させてくれました。それは、必要なものを可能な限り環境に良い方法で運びながら、公正さと柔軟な働き方を通じて共に働くドライバーの満足度を高めることです。
宅配便における環境保護および公正なビジョン
我々は、配送の距離を大幅に削減し、ドライバーが自宅の近隣でのみ配達を行なうことでより柔軟に働けるという「スマート マイクログリッド」のコンセプトを通して宅配便部門の変革を行なっています。すべてのドライバーは、自分の働きたい時間帯を具体的に決めています。例えば午前中はダンス教室に通い、午後に 2 時間の勤務シフトに入ることもできます。
一般的な宅配便では、すべての配送車両が郊外の倉庫から方々へ出発し、街中で荷物を降ろしてから倉庫へ戻ります。配達のために街中を縦横に走り回っているのは言うまでもありませんが、ラストマイル配送距離の 60% は倉庫との往復に費やした追加の走行距離と工数で占められています。我々はこのプロセスを覆すことにしました。
我々のモデルでは、1 台の大型トラックが「巡回集荷」で倉庫を出て、ドライバーの自宅から歩ける距離にあるベルリン市内の各マイクログリッド内に駐車されている配送車内に荷物を降ろします。そしてドライバーは、荷物が積まれた配送車のところまで自宅から歩き、配送車で近隣を回って効率的に荷物を配達します。この方法により、ドライバーや道路、大気への負担を軽減できます。
我々のイノベーションは単純に聞こえるかもしれませんが、実際に実行するのは非常に大きな挑戦です。このプロセスを機能させるためには、最先端の Google Maps Platform ナビゲーション、ルート シーケンス、およびジオコーディング ソリューションによってフリーランスのドライバーをすばやく配達地点へ誘導する必要があります。
可能な限り効率的に正しい住所に商品を届ける
会社名、番地、郵便番号など、何もかもが間違っている住所が記入された荷物を配達しなければならないことを想像してみてください。ベルリンのような街では、干し草の山の中から針を探すようなものでしょう。住所を間違えて記入したお客様を責めたりはできません。とにかく届ける。それだけです。それができなければ、この分野で生き残っていくことはできません。
大量の位置情報を処理して不正確な住所入力を修正し、ドライバーが最小限の手間で正しい配送先を見つけられるようにするために、Geocoding API を使用しています。Geocoding API を使用することで、完全に意味不明な住所入力から、驚いたことに正しい住所を得ることができます。これはまさに救いの手です。
正しい住所は重要ですが、ドライバーはその住所にたどり着く道順を見極める必要もあります。Maps JavaScript API を使用すると、新人ドライバーをまるで何十年も前からこの仕事をしているベテランかのように各目的地に誘導できます。
我々は、距離を計算することはルート最適化ソリューションの一部にすぎないとすぐに理解しました。ボトルネックや道路工事、赤信号などのリアルタイムの交通状況を分析し、いかなるときも最適な有効ルートを見つけ、ドライバーに最も効率的な経由ルートを伝える必要があります。ここでの課題を解決するために Maps JavaScript API と API のトラフィック レイヤーを使用しています。
現在まで、励みとなる結果が出ています。独自開発の Android アプリと Google Maps Platform ツールの組み合わせにより、都心部に位置する道路の利用を 60% 以上削減することができました。また、Google Maps Platform のガイド付きソリューションを利用したラストマイル配送では 25% の時間短縮を達成しています。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が猛威を振るう中でベルリンに奉仕
COVID-19 の影響による需要の大幅な急増は、我々のビジネスモデルを試す機会となりました。ロックダウンにより、ベルリンに暮らす人々が日常品のほとんどをオンラインで注文するようになっただけでなく、中小企業が消耗品や交換部品を調達する際に、卸売業者から現地購入するのではなく宅配便を利用しなければならなくなりました。
ロックダウン中は、配送量が 25% 上昇しました。経由地をその上昇した分だけ増やすと、各巡回のルート予測が非常に複雑になります。大まかには、以前と同じ時間枠における配送件数が 25% 増えています。最先端のルート最適化がなければ恐ろしい状況だったでしょう。
COVID-19 禍においても我々の配送モデルをしっかりと維持できたことに安堵しています。そして、ベルリンの地域コミュニティに対して貢献できたことを誇り思います。環境に配慮したモデルとタイムリーな配送の取り組みにストレスを感じることはほとんどありませんでした。これは、Google Maps Platform の強力なナビゲーションとジオコーディング ソリューションがあってこそ実現できたことです。
Google ソリューションによるグローバル展開
我々のシンプルでありながら独創的なビジネスモデルと、モデルを支援する Google Maps Platform ツールの組み合わせにより、我々は無限大の成長性を秘めていると考えています。次に目指すステップは、我々のプラットフォームをより多くのドイツの都市に、そして世界に向けて展開していくことです。
世界中の宅配便を環境に配慮したものにできることを嬉しく思います。ちなみに Vivien ちゃんの近況はというと、これ以上ないくらい元気です。Vivien ちゃんの写真は事務所の壁に飾られており、「人々の玄関先にあらゆる形で喜びを届ける」という我々の使命を思い出させてくれています。
Google Maps Platform の詳細については、ウェブサイトをご覧ください。
-Parcel Shuttle 設立者 Simon Seeger