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Google Maps Platform

inDriver が Google Maps Platform を利用して世界中の何百万人もの日々の移動を便利にした方法とは

2020年9月8日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2020 年 8 月 28 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

編集者注: 今回の投稿は、極寒の地で誕生し世界をリードする配車アプリとなったinDriver の最高執行責任者である Egor Fedorov 氏によるものです。inDriver は、利用者が公正な価格を交渉できるようにすることで、新興国に移動の自由をもたらしています。

サハ(Sakha)はシベリア奥地に住む民族です。われわれの国で生きていくには、すばやく行動し、すばやく考え、すばやく移動する必要があります。なぜなら、ぐずぐずしていると凍え死ぬかもしれないからです。この地では約 950,000 人の人々が 100 万平方マイルを超える地域に点在する村で生活しています。平均年収は $6,500 にすぎず、手頃な価格のモビリティ ソリューションは生活に欠かせません。

世界で最も寒い街であるロシアのヤクーツクの過酷な環境の中、私たちは遠く離れた村に住む人々に移動の自由を与える、という思いから独自の配車アプリを開発しました。このアプリでは、アルゴリズムで運賃を決定する代わりに、乗客と運転手が料金を交渉します。  

inDriver は大ヒットし、そこで世界中の他の新興市場にも参入することにしました。正直なところ、最初はうまくいくか疑問でした。当社が成功したのは、北極圏の独特な環境によるもの、あるいは結び付きの強い民族コミュニティであるからかもしれません。しかし、心配は無用でした。料金設定の自由と公平性を提供するという当社のミッションは世界で受け入れられ、途上国で急速に広まりました。

Google Maps Platform でソリューションを構築したことで、わずか 2 年で世界をリードする配車アプリの一つへと成長しました。顧客ベースは早期に 10 万ユーザーに拡大し、今日ではアジアからアフリカ、ラテンアメリカまで、世界 31 か国 5,000 万ユーザーに達しています。現在世界に 10 か所の拠点を持ち、成長を続ける中でさらに拠点を増やしています。

地球のすみずみまでモビリティを広げるクリエイティブ パートナー

急速な拡大は喜ばしいことでしたが、同時に大きな課題をもたらしました。1 年余りで 23 か国に参入しましたが、密集した都市部から広大な田園地帯に至るさまざまな環境、それに加えてインターネットの浸透レベルまで、地図利用に関連する要件はそれぞれの国でかなり異なるものでした。

その時点では、当社には勝利するビジネスモデルがあるとの確信を抱いていたものの、世界最高の地図ソリューションがなければ、現在のペースで拡大することはできないということもわかっていました。つまり、Google Maps Platform です。質の高い地図、正確なルート計算、所要時間の見積もり、住所による支援を組み合わせる必要があったのです。

ただし、当社を成功に導いたのは、世界クラスの Google テクノロジーだけではありませんでした。同じく重要なのは、緊密に連携してソリューションの拡大を支援してくれた Google Maps Platform チームのオープンな姿勢です。私たちは、ルールブックに従って行動する、巨大で人間味のない企業とは仕事をしたくありませんでした。そして、当社がどのような会社かを Google が理解し、北極圏で生活する弱い立場の存在として達成すべきことに純粋に投資していただいたときにはとても感銘を受けました。

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2012 年ロシアのヤクーツクの冬

私たちの物語が始まったのは、気温が -45°C を下回ったシベリアの伝説の冬でした。それはクリスマスの時期で、人々は家族と顔を合わせたりお祭りの準備をしたりする必要がありました。一方、高齢の村人や身体の不自由な人が寒波の中で出歩くには特別な支援が必要でした。

このような時期に、ヤクーツクのタクシー サービスは、記憶にある限り最も厳しい寒さが続く中で運賃を 2 倍に跳ね上げたのです。学生グループはこの値上げに反対する草の根運動を始めました。

当社はソーシャル ネットワークのグループとしてスタートし、個人ドライバーと乗客をマッチングして乗客が運賃を交渉するという仕組みを作成しました。それはあっという間に爆発的にヒットしました。私たちは過酷な環境の中でシステムと戦う弱き者であり、お客様と同じ立場に立っていました。それがケープタウンからメキシコシティまで、当社が世界中に受け入れられた秘訣でもあります。

Google Maps Platform チームは、最初から当社を軽く見ることはありませんでした。彼らはパートナーとして問題を解決するために一緒に働いてくれる有能な人たちの集まりでした。 

全世界の地図をカバーする世界クラスの地図ツール

当社のアプリがカバーする地域は、モスクワのような巨大都市からカリブ海の小さな漁村にまでおよびます。そして場所ごとに地図利用に関連する要件は異なります。Geocoding API から Maps Static API まで、Google Maps Platform を利用することで場所ごとの固有のニーズを満たすことができました。たとえば、メキシコシティでは Google Maps Platform の API のフルパッケージをデプロイできても、人里離れたインドネシアの露頭では安定したインターネット アクセスがなく、Google マップがまだ整備途中であるため、同じアプローチは役に立ちません。そこで見つけた回避策が、Maps Static API を介してアクセスした衛星画像を使用するという方法です。

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衛星画像を使用したアプリ内エクスペリエンス


詳しい住所がない場合でも、乗客は「赤い屋根の寺院」といったように、待ち合わせ場所をドライバーに説明できます。Maps Static API を組み込むことで、ドライバーは Google マップの衛星画像を利用してスポットを見つけることができます。配車を依頼するには、乗客がインターネット アクセスのある最も近い場所(多くの場合、少額の料金でオンライン アクセスを提供する村のお店)に向かい、ドライバーからの電話を受けて詳細を伝えます。

一方、にぎやかな大都市では、これとはまったく異なる課題があり、この場合も、Google Maps Platform で対処しました。開発途上国の大都市では、1 つの目的地へのルートがほぼ無限にあることも珍しくありません。最良ルートは、道路、交通、天候などの状況によって異なります。一方、ドライバーは乗客を見つけるために正確な住所情報を必要とします。ドライバーを目的地に導けるように、Directions APIPlaces APIGeocoding API などのさまざまな Google Maps Platform の API をデプロイしました。ここから先が当社独自の工夫です。運賃を設定するアルゴリズムを通してデータを実行する代わりに、ドライバーと乗客がこれらの要素を利用できるようにして、両者に取引の情報をリアルタイムで提供するようにしたのです。

可能性に満ちた未来

Google Maps Platform で実現されたデジタル ソリューションにより、単純に公正な取引を提供することで影響を生み出すことができました。そしてこのことが、常に気にかけてきた別のプロジェクトにも息を吹き込みました。2013 年の創業以来、養育を放棄された子どもたちにデジタル教育を提供するプログラム、BeginIT を実施してきました。デジタル リテラシーは当社を成功に導いた道であり、それこそが社会に還元する方法だからです。今日、BeginIT はグアテマラから南アフリカ、インドネシアまで、世界中の 89 を超える孤児院、保護施設、僻地の学校へと広がっています。Google Maps Platform で達成したビジネスの成長が、当社のグローバルな教育に対する影響も可能にしたのです。

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インドネシアで BeginIT プログラムに参加している学生

現在、当社は Google Maps Platform とともに、発展途上国向けのさらに革新的なソリューションを作成すべく取り組んでおり、Distance Matrix API を使用した新しい相乗りサービスを始めることを計画しています。また、現在「スーパーアプリ」(配車、光熱費の支払い、食料品の購入などの複数のソリューションを提供するプラットフォーム)を開発中で、AI やデータ ソリューションを使用するにあたり Google Cloud との創造的なコラボレーションを深めています。

Google Maps Platform を活用することで、新興国のモビリティの未来を構築するという私たちのミッションを達成できると確信しています。

Google Maps Platform の詳細については、ウェブサイトをご覧ください

 -inDriver 最高執行責任者 Egor Fedorov


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