Chalo、Google Maps Platform を利用してバスの乗客体験を変える
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 4 月 27 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Chalo はインドを拠点とするバス輸送テクノロジー企業です。この投稿では、同社の共同創業者兼 CTO である Vinayak Bhavnani 氏が、Google Maps Platform を利用して地理空間データを可視化し、インドの通勤客とバス事業者の視認性を高めている状況を紹介します。
効果的な公共交通網は、地域経済に貢献し、安全で快適、かつ持続可能な都市づくりに寄与します。インドでは、公共交通機関の約 90% をバスが占めています。しかしながら、毎日乗っている人に話を聞くと、改善の余地がたくさんあることがわかります。交通量が多いので、決まった時刻表はほとんどなく、乗りたいバスがいつ来るか正確に知ることはできません。当社は、人々が 1 日に最大 30 分もバス停で待たされ、多くの不満と無駄な時間が生まれていることに気づきました。
創業時の目標は、毎日の都市通勤をよりポジティブな体験にすることでした。信頼性は視認性に類似しています。バスがいつ来るのかが正確にわかれば、その日の計画はもっと良いものになります。たとえばオフィスで、次のバスが 10 分後に来ることがわかれば、バスが来る時間にバス停に到着すれば良いので、待ちぼうけをする必要がありません。これを実現するために、私たちは Google Maps Platform が提供する詳細な地理空間データをベースとしたソリューションを利用しています。
地理空間データで待ち時間をなくし、収益を上げる
インドでは、バスユーザーがもつリソースは(他のユーザーに比べて)少なめです。無料でダウンロードできる Chalo App では、バスのルート上の位置や最寄りの停留所への到着時刻を正確に把握できます。また、モバイル技術の普及が遅れていることもあり、あらゆる年齢層や環境に対応した、使いやすく安心感のあるインターフェースを構築する必要がありました。Google Maps Platform を採用した大きな理由のひとつは、インドをはじめとする新興国での存在感が大きく、ユーザーにとってなじみがあり、信頼感を与えることができるからです。同時に、Google Maps Platform は豊富な地理空間データを提供しながらも、導入や動作がシンプルである点も気に入っています。位置情報の検索やルート検索を可能にするために、Geocoding API、Reverse Geocoding、Directions API を使用しています。
また、MediaAgility と協力して、当社のニーズに最も適した Google Maps Platform プロダクトを特定し、従うべきベスト プラクティスを明確にしました。これにより、当社のビジネス目標を効率的に達成できました。
また、Chalo App でも、スマートフォンを持っていない人のための決済カード Chalo Card でも、デジタル チケットの決済が可能です。他の国々と同様、インドでも現金決済からの脱却が徐々に進んでいますが、公共交通機関での普及が遅れており、バスに乗る際にはまだ現金が必要な状況です。デジタル チケットは通勤を便利にするだけでなく、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の健康危機が生じた際、身体的接触を制限することで乗客、運転手、車掌を保護できます。
また、Chalo はバス事業者向けに、サービスや収益の向上を支援するソリューションも提供しています。インドの主要都市では、バスは公共機関、民間機関、民間の小規模な個人バス事業者の組み合わせで運行されていますが、後者の大半は 1~2 台のバスを運行しているにすぎません。市場は非常に細分化されていて、バス事業者にとっては、車両がその時点でどこにいるのか、1 日に何キロ走行しているのか、どれくらいの経費がかかっているのかがほとんど見えないため、インフラストラクチャや顧客体験に投資するインセンティブがほとんどありません。
Chalo のダッシュボードでは、地図上でバスの位置をリアルタイムに把握できるほか、スケジュール機能、路線、チケット、乗客の統計情報などが提供されます。地理空間情報および乗客の需要に関する分析情報があれば、事業者は新たな収益源を開拓し、乗客のニーズに合わせて路線やサービスを提供できます。Chalo のパートナーになった事業者からは、バス車両の運用が平均で 10%~30% 改善されたと報告されています。
Chalo は現在、37 都市で 15,000 台のバスを走らせ、月間約 1 億回の乗車を実現しています。今後数年で乗車回数を 10 倍にしていきたいと考えています。そのために、今後は提供するサービスの幅を広げ、国内の他の地域や国境を越えて展開する予定です。バンコクで試験運用を開始し、東南アジア、アフリカ、中東への展開も検討しています。Google Maps Platform を通じて、世界中のどこにいても詳細な地理空間データにアクセスできるようになれば、技術スタックへの大きな投資や変更が不要になり、展開はかなり容易になります。
同時に、スケジュール機能の精度を高めるために人工知能や機械学習を模索し、バスでの人数カウントに動画を使ったソリューションを導入しています。当社の目標は、提供するサービスを継続的に改善し、最適化することです。その目標を実現するために、Google と密接に協力していきたいと考えています。
Google Maps Platform について詳しくは、ウェブサイトをご覧ください。
- Chalo、共同創業者兼 CTO Vinayak Bhavnani 氏