マルチコアファイバー技術で海底ケーブルを強化
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 9 月 13 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
世界のデジタル化が進むにつれて指数関数的に増加する帯域幅への要求にあわせて、大陸間をまたいでデータを伝送する光海底ケーブルの帯域幅の拡張も求められています。そのため 、私たちのようなクラウド企業と世界中の人々にサービスを提供するネットワーク事業者は、常にネットワークの耐障害性と容量を向上させる革新的な方法を模索してきました。本日は、海底ケーブルにおける最新のイノベーションのひとつであるマルチコアファイバー技術について解説いたします。
まず、簡単な歴史からご紹介します。従来の海底ケーブルでは、電力は岸側から供給され、専用のポンプ・レーザーが各ファイバーの光信号を増幅することで、データを配信しています。近年、空間分割多重(Space-division multiplexing)技術が導入されると、ひとつのケーブル内のファイバー数を拡大することができました。これにより、ビットあたり、よりコスト効率の良いレートで大容量の海底ケーブルを提供でき、増加しつづける需要に対応できるようになりました。
ところが、昨今では空間分割多重技術でも、拡張性の問題に直面し始めています。各ケーブルのファイバー数を増やすためにケーブルの外径を広げると、様々な原材料や重量が増加するため、海上での運用やメンテナンスに負担をかけることになります。さらに、ファイバーを増やすには、製造、試験、修理に要する時間が大幅に増加します。
そこで、現在のシングルコア光ファイバーを進化させたマルチコアファイバー技術の登場です。Google と NEC は、台湾、フィリピン、グアム、カリフォルニアを結ぶ台湾-フィリピン-米国海底ケーブル(各国の通信事業者である、中華電信、Innove、AT&Tと共同で構築予定)に、業界としては初めてこの技術を採用することを決定しました。
マルチコアファイバーは、光を閉じ込め伝搬させるためにガラスコアをガラスクラッドで囲む、従来のシングルコア光ファイバーをベースにしています。マルチコアファイバーでは、コア数を2倍に増やすことで、同じファイバー素線のまま、ビットあたりのコストを抑えながら、より多くの光と情報を伝送することができるようになります。また、マルチコアファイバー技術は、従来のシングルコア光ファイバーで実装された同等のコア数と比較して、ファイバー心数を減らすことができるために、より迅速な製造、試験、保守作業を可能にします。
NECの技術戦略担当 ディレクター、Eduardo Mateo氏は以下のように述べています。「今回、業界で初めて海底ネットワークにマルチコアファイバーを導入したことは、より大容量で効率的な接続、かつビットあたりのコスト低減を実現する、次世代システムに向けた大きなマイルストーンとなるでしょう」
Google Cloud の グローバルネットワーク担当 VP Brian Quigleyは次のように述べています。「Google は NECと過去10年にわたり緊密に協力し、業界を変える光ファイバーケーブル技術を発展させてきたので、今回、台湾-フィリピン-米国のケーブルシステムにマルチコアファイバーを導入できたことを大変嬉しく思います。シングルコア光ファイバーケーブルがマルチコアファイバーへと進化することで、業界全体にマルチコアシステム機能を提供できるサプライチェーンのエコシステムができることを期待しています。」
オンラインコンテンツ、クラウドサービス、AI アプリケーションなどが増え続ける中、マルチコアファイバーは世界の通信インフラにとって重要な技術です。マルチコアファイバーは、ケーブルの容量拡張のための新しい方向性であり、業界で求められる帯域幅への要求を満たすことを目指し、今後ファイバーあたりのコア数をさ求らに拡大するための第一歩となるでしょう。
- Google Cloud, Global Network Infrastructure,VP, Brian Quigley
- Google Cloud, Optical, Network Architect, Mattia Cantono