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インフラ モダナイゼーション

元 CIO から見たクラウド移行と改良された高速移行プログラム(RaMP)

2023年5月11日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 5 月 4 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

要約: Google では、改良した高速移行プログラム(RaMP)に複数の Google Cloud 移行プログラムをまとめる取り組みを行っています。移行部門担当の新しいバイス プレジデント Stephen Orban のリーダーシップのもと設計された RaMP には、人、プロセス、テクノロジーの準備状況を評価する方法など、お客様とパートナーが Google Cloud への大規模な移行を評価、実施するために必要なものがすべて揃っています。CIO としてだけでなく、複数のクラウド プロバイダで数千の企業の移行をサポートしてきた Stephen 氏が、10 年以上かけて学んだクラウド移行について語ります。


Dow Jones の CIO だった 10 年前に、初めてデータセンターのクラウドへの完全移行に関わったときは、数百台のサーバーを 6 週間で移行しました。これを手始めに、Dow Jones がクラウドに移行したデータセンターは約 50 を数え、私も数千の移行に関わりました(この移行の詳細や他の多数の移行については、拙著『Ahead in the Cloud』をご覧ください)。当時、クラウド ビジネス ケースを扱う資格があるコンサルタントはごくわずかでした。6R や、ランディング ゾーン、クラウド移行ツール、フレームワーク、プログラムといったものも存在せず、参考にできるのは他の数社の顧客企業のみで、そのほとんどにお話を伺いました。

利用できるベスト プラクティスはありませんでしたが、うまく移行することができ、データセンターを運営するより約 30% の費用削減になりました。これは、私たちが行った多数の移行の一つであり、迅速にビジネス価値を提供するために IT が担っていた役割を変革しました(1 年に数回のソフトウェア リリースが、週に数百回になりました)。

今思えば、成功の主な要因は 2 つありました。1 つは、データセンターのリースが 6 週間後に期限切れになるので、迅速な移行が「避けられない状況」であったことです。2 つ目は、その前の年にクラウドで新しいアプリケーションを構築していたので、すでに多くを学んでいたことです。

つまり、私たちには集中力と経験があったのです。明確で動かしようのない期限があったため、適切な人材とチームを結集してすぐに取り掛かる必要に迫られました。

現在、クラウドへの移行のベスト プラクティスは、はるかにわかりやすくなっています。何千もの企業が数百から数千のアプリケーションを移行し、規制対象企業は優れたランディング ゾーンを構築して大量の管理目標を扱っています。特定のワークロードを移行するための戦略や青写真がよく知られるようになり、ほとんどの大手 IT コンサルタント会社は確固たる移行手法を確立し、IT 人材が全般にクラウドの経験を積んでいます。

これだけ勢いがあるにもかかわらず、移行が希望どおりに進まない企業もあります。こうしたお客様から聞かれるのは、「今後 3 年から 5 年で 75~100% をクラウドに移行したいのですが、まだ 5~10% しか進んでいません。移行が進んでいる企業から得られた情報をもとに、より実用的なアドバイスをもらえませんか」といった声です。わずかですが、そもそも移行すべきかどうか判断できていないお客様もいます。

これは数字にも表れています。世界中で毎年数兆ドルが IT に費やされていますが、クラウドに切り替わった費用はほんの千億ドル(せいぜい 10%)ほどです。

なぜそんなに時間がかかるのでしょう。多くの企業で計画よりも移行が遅れている原因は何なのでしょうか。

結局はチェンジ マネジメントの問題だと言えます。大規模なクラウド移行では、大企業の人、プロセス、テクノロジーが一斉に進化する必要があります。多くのお客様はこのことを利用して、単に別の IT プロジェクトに取り組むのではなく、文化を進化させる機会として移行を捉えています。いつまでも後れを取るのではなく、イノベーションを継続できるように、運用モデルを変えようとしているのです。移行を達成するには忍耐が必要です。特に目まぐるしく変化するマクロ経済の圧力の中では難しい場合があります。順調に進んでも、大規模なクラウド移行は(数年とは言わないまでも)数か月はかかります。

私が過去 10 年に携わった大規模なクラウド移行のすべてで、次の 5 つのベスト プラクティスが変化の管理、集中力と忍耐力の維持、移行の成功に役立ちました。

  1. ビジネス、IT、財務、セキュリティ、運用の各責任者が認識を合わせられるように、「理由」を明確に示したビジネスケース。

  2. 各自が新しいスキルを習得し、働き方の変化に伴う FUD を緩和できるように、個々の役割に合わせた学習プラン。

  3. ベスト プラクティスの収集、ランディング ゾーンのセットアップと維持、チームが使用量や移行をスケールする方法の「原則」と青写真の設定を行う「Cloud Center of Excellence」(CCoE)チーム。CCoE は 4 つ目と 5 つ目のベスト プラクティスを推進する。

  4. 広くやり取りされ、測定、調査されて定期的に報告される明確に定義された OKR(目標と主要成果、または一連の目標)。

  5. OKR に対する進捗状況の定期的な確認(理想的には週 1 回)、リスク / 問題 / 課題の優先順位付け、新しく得られたベスト プラクティスの収集を定めた強固なプログラム ガバナンス。

Google Cloud に来てから 7 か月の間に、多数のプロダクト、プログラム、エンゲージメント モデルが、大規模な移行を行うお客様の助けとなり、これらのベスト プラクティスを実装していることに気づきました。たとえば、移行するワークロードを検出して評価する StratoZone、サーバーをリフト&シフトする Migrate to Virtual Machine サービス、Database Migration ServiceStorage Transfer ServiceMigrate to Containers サービス、ワークロードのモダナイズに役立つ CAMP、システム統合パートナーが移行の能力を示すために取得する Google Cloud 移行スペシャライゼーションなど、ほかにもまだまだあります。

多くのお客様がこうしたサービスをそれぞれ使用してベスト プラクティスを実施していますが、一部のお客様からは、すべてをまとめた総合的アプローチと、次のような作業のサポートを望む声が寄せられました。

  • ビジネスケースの構築と関係者の連携の促進

  • 人、プロセス、テクノロジーの準備状況におけるギャップの特定と解消

  • ワークロードを優先順位付け(通常は易しい~難しい)して移行戦略(6R)によって分類する「移行ウェーブ」の作成

  • 財務、セキュリティ、コンプライアンスが適切に管理されたランディング ゾーンの作成

  • 使用すべきツールの決定

  • トレーニング / イネーブルメント計画(変更が必要な役割と変更方法)の定義と実施

  • Cloud Center of Excellence(CCoE)の確立

  • OKR の設定

  • 最適なパートナーの選択

  • 移行の徹底した管理

以上はほんの一部です。ご要望にお応えするために、数か月かけて Google Cloud のあらゆる分野から Google 社員を集め、チームを結成しました。合計すると数世紀分のクラウド移行経験を持つグループが、既存のプロダクト、プログラム、エンゲージメント モデルを世界水準の 1 つの高速移行プログラム(RaMP)に統合するために取り組んでいます。今年は最初のお客様グループに RaMP を提供し、Accenture、Deloitte、Onixnet、SADA、Slalom、66 Degrees、Wipro、TCS、HCL、Cognizant、Capgemini、Infosys などのパートナーによってサポートされる、最新のクラウド運用モデルと移行のベスト プラクティスを獲得する予定です。

その一例として、お客様、パートナー、Google のアカウント担当者の間で「信頼できる唯一の情報源」として使える、Google スプレッドシート形式の「RaMP プレゼン資料」を作成しました。これにより、適切なベスト プラクティスを採用し、共同で設定した OKR に対する進捗を追跡して、リスク、問題、課題が発生した場合の優先順位付けが可能になります。

今回の投稿に続けて、今後の投稿ではベスト プラクティス(前述したものなど)の概略、お客様とパートナーの成功事例、利用可能になる新しいツール、テンプレート、アプローチをご紹介していきます。他にご希望のトピックなどありましたら、stephenorban@google.com までご意見をお寄せください。最後になりましたが、移行を検討されている場合は Google Cloud のアカウント担当者にお問い合わせいただくか、RaMP ウェブサイトをご覧ください。移行前の IT 環境に関する無料の調査と評価をお申し込みいただくことも可能です。

構築を続けましょう。


- 移行担当バイスプレジデント、Stephen Orban
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