COVID-19 の中、テクノロジーを活用してカナダ国民の生活を支える Loblaw の取り組み

※この投稿は米国時間 2020 年 6 月 26 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

COVID-19（新型コロナウイルス感染症）の影響や、それに伴う私たちの仕事、生活、買い物のありかたの変化により、あらゆる業界が試練に立たされており、食料品業界の小売企業も例外ではありません。病院や地方自治体は私たちが経験している事態のようなシナリオを想定した危機計画を立てていますが、世界的なパンデミックの影響を十分に検討している食料品小売企業の経営者はほとんどいません。

COVID-19 に直面する前、従来の食料品小売企業は新しいオンラインのデジタル ネイティブな競合他社が市場に参入する姿を目にしてきたものの、大半の消費者は依然として日用品を食料品の実店舗で購入していました。これら従来の食料品小売企業にとって、食料品のオンライン販売量は実店舗と比較するとごくわずかであり、多くの企業は店頭販売に IT の意識を集中させていました。しかし、パンデミックを境に消費者による食料品のオンライン購入はカナダだけでも平均 1.5% から 9% に増加しました。

オンラインへの劇的かつ即時の変化により、食料品小売企業には膨大な負担がのしかかってきました。従業員やコミュニティの安全上の問題から、ウェブサイトをクラッシュさせるおそれのあるオンライン トラフィックの急増への対処、在庫や注文処理への対応に至るまで、さまざまな負担が生じています。食料品小売企業によっては、効率を改善し従業員や顧客の安全を守るためのさまざまなテクノロジーにより、こうした新たな事態を競合他社よりもうまく切り抜けています。

前例のないオンライン需要への対応

Loblaw はテクノロジーによりコミュニティをサポートして従業員を守りつつ、ビジネスも成長させている食料品小売企業の好例です。Loblaw は創業 100 年の老舗企業で、約 20 万人の従業員を擁するカナダ有数の食料品店および小売薬局のチェーンであり、1,800 万人以上もの買い物客が同社のポイント プログラムに参加しています。

北米で COVID-19 の影響が最初に現れた頃、Loblaw は食料品をオンライン注文して当日受け取りができるカナダでも数少ない食料品店チェーンの一つでした。購入をオンラインに切り替える買い物客が増えるにつれ、同社は増大する需要を満たすべくいち早くシフトしました。

オンラインのトラフィックと注文件数がかつてないレベルに達しており、Loblaw のオンライン食料品ウェブサイトのパフォーマンスでは負荷に耐えるのがやっとの状態に陥りました。そこで、Google Cloud は BFCM（ブラック フライデー サイバー マンデー）プロトコルを有効にしました。これにより、Loblaw Digital のテクノロジー チームとの専用の戦略本部が設置され、両社のエンジニアが協力し合って迅速に Loblaw プラットフォームを調整し、買い物客が滞りなく買い物を楽しめるようになりました。

Loblaw Digital と Google Cloud が連携することで、現在ではニューノーマルとなったオンライン トラフィックのレベルにすばやく対応し、安定稼働を実現することができました。Loblaw Digital の技術担当バイス プレジデントである Hesham Fahmy 氏は、次のように述べています。「Loblaw のシステムは他の世界大手の e コマース小売業者に引けを取らない規模で稼働しています。」

Takeoff によるフルフィルメントの自動化

Google が Loblaw の e コマース システムのスケーリングに取り組んでいた頃、Loblaw もフルフィルメント プロセスを改善し、注文件数に対応できる新たな方法を模索していました。Loblaw Digital PC Express チームはボトルネックを減らすためにいくつかの措置を講じました。たとえば、何千人もの新しいパーソナル ショッパーを雇用し、毎週の受け取りに合わせて何千ものスロットを追加するだけでなく、カナダ全土におけるキャパシティーを増やすために新しいテクノロジーを導入しています。

幸い、Loblaw は Google Cloud パートナーである Takeoff Technologies と自社初となる Micro Fulfillment Center（MFC）のロールアウトを進めていました。Takeoff の MFC は基本的に自動化とフルフィルメントの小規模ソリューションであり、食料品の通路が 2～3 本ほどの、スペースが小さい既存の店舗にも導入できます。MFC はロボット ラックシステムと Google Cloud が提供するクラウドと AI のテクノロジーにより、注文の保管、梱包、処理を行います。自動化での効率向上により、商品を可能な限り顧客の近くで管理することで、いわゆる「ラストマイル」費用を大幅に削減できます。  

MFC の実装は 1 年近くの間進行中でしたが、最高のタイミングで完成に至ることができました。新しいテクノロジーは注文の供給力をさらに広げ、近接した複数の PC Express ロケーションの注文件数に対応する機能を備えています。

マサチューセッツ州ウォルサムを本拠地とする Takeoff は MFC を前倒しで稼働させるため、Google Meet（Google のプレミアム ビデオ会議ソリューション）用にウェブカメラを用意した従業員をカナダに派遣し、稼働開始の最終段階に対応しました。このプロセスには通常なら 12 人以上の従業員が必要ですが、Takeoff はわずか 2 人の派遣で済みました。2 人の従業員はカナダでの 2 週間にわたる自己隔離の後、Google Meet を通じてマサチューセッツにいるチームメンバーと協力し、効果的なロールアウトを確実に行いました。MFC によって、商品のピッキングと梱包の作業を手動に比べてすばやく行うことが可能になりました。

Takeoff の共同設立者である José V. Aguerrevere 氏と Max Pedró 氏は、次のように述べています。「これは、自動化がいかに従業員のワークロードをサポートし、時間と費用のかかるプロセスを軽減できるかを示す好例です。このような地域密着型の自動化は、地元企業の生き残りだけでなく成功にも役立ちます。また、長期的には食品価格を下げ、店舗の設置面積を削減し、データをサプライヤーにフィードバックして食品や梱包材の廃棄量を減らすことで、最終的に環境保護に貢献できる可能性もあります。」

Takeoff の最高技術責任者である Zach LaValley 氏は、次のように述べています。「Google のおかげで、特に Loblaw との最近のリリースで私たちの強みが発揮できています。実装フェーズでのソリューション アーキテクチャのパートナーシップから、Google Cloud Platform の安定性と信頼性、新しいサイトをリモートで立ち上げることを可能にする Google Meet の使いやすさに至るまでさまざまなものを提供してもらっています。当社には食料品業界を改革するという壮大な使命があり、当社のサービスはかつてないほど重要になっています。Google には、小売業のパートナーが現在必要としている優良なサービスを提供するために必要な信頼性、スケーラビリティ、世界的な視点が揃っています。」

Loblaw は Takeoff にとってカナダ初の MFC 稼働施設です。そのテクノロジーは Google Cloud のスケーラブルなプラットフォーム上に構築されており、2020 年末までに米国、オーストラリア、ニュージーランド、中東におよぶ 53 か所の小売チェーンに導入される予定です。

Google Cloud 基盤の上に構築

Loblaw Digital は自社で蓄積した技術的な基礎により、ショッピング行動における突然の変化に対し、すばやい対応を可能としています。過去 2 年間、Google Cloud と Loblaw Digital は連携し、より幅広いデジタル ロードマップに取り組んでいます。このロードマップは、PC Express から始まり、ペット用品、おもちゃ、乳児用の必需品、室内装飾品や、その他実店舗では入手できない商品の新しいマーケットプレイス開設にまで広がっています。

その過程で Loblaw Digital は Google Cloud を基盤として使用する新しいオンライン プラットフォームの構築を効率化できました。PC Express は半年足らずで完成しましたが、Loblaw の新しいマーケットプレイスはほんの数週間で稼働しました。同社チームは現在、Google Cloud で複数のデータソースを統合しています。これにより、データ全体を調べて顧客にサービスを提供する新しい方法を見つけることができます。

オンライン食料品担当バイス プレジデントを務める Sharon Lansing 氏は、次のように述べています。「当社のオンライン トラフィックは数日で 4 倍に急増しました。このような時期においては、当社のチームがお客様により良いサービスを提供する方法を見つけることができ、そのサービスを迅速に提供できるように徹底することが重要でした。」

Loblaw はテクノロジーへの先見性と投資により、COVID-19 にすばやく対応することができました。詳しくは、Loblaw の導入事例をご覧ください。

- Google Cloud 小売および消費ソリューション部門バイス プレジデント Carrie Tharp