データ ワークロードのモダナイゼーションと移行の比較
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2024 年 4 月 25 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
クラウドへの移行には、データ、アプリ、インフラストラクチャなどのデジタル アセットをクラウド環境へ移行することが含まれます。特に、データとデータ プラットフォームはアプリケーション、分析、AI / ML などのワークロードに必要不可欠であるため、オンプレミスや他のクラウド プロバイダなど、他のプラットフォームから既存のデータを移行するのが一般的です。ほとんどの組織にとって最初の課題となるのが、データを新しいプラットフォームに移行する際のデータの処理方法を決めることです。
単純な移行(リフト&シフトとも呼ばれます)を行うべきでしょうか?それとも、プラットフォームをモダナイズして、最新のクラウド テクノロジーを活用できるまったく新しいソリューションを構築することを検討すべきでしょうか?この投稿では、データ ワークロードのモダナイゼーションと移行のアプローチについて説明します
移行とモダナイゼーション: 違いは何か
一般的には、移行にはクラウドへのデータの移動が含まれます。最もよく見られる移行プロセスは、次の 2 つのカテゴリに分類されます。
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オンプレミスからクラウドへの移行: ローカルサーバーやデータセンターからクラウド プロバイダへの運用の移行です。移行のユースケースとして一般的であり、企業はスケーラビリティ、柔軟性、費用削減といったクラウドのメリットを活用することを目指します。
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クラウドからクラウドへの移行: クラウド プロバイダを切り替えることで、イノベーション、機能、費用、パートナーシップの面でさらなる価値を実現します。
一方、クラウドのモダナイゼーションは、既存のアプリケーション、データ、インフラストラクチャを変革して、クラウド コンピューティングによってもたらされるメリットをさらに活用するための戦略です。企業が成功するには、データを管理、分析するための統合された、柔軟かつスケーラブルで費用対効果に優れたデータ プラットフォームが不可欠です。たとえば、フルマネージド データベース サービスを利用すれば、パフォーマンスとスケーラビリティを強化して、クラウドでの全体的な運用コストを削減できます。クラウド ファーストのデータ レイクとデータ ウェアハウスを使った最新の分析機能にアクセスして、顧客データについてのより詳しい分析情報が得られます。
通常、クラウドのモダナイゼーションを検討されているのは、デジタル トランスフォーメーションの達成、高度なクラウド サービスの活用、継続的な改善と開発のサポート、生成 AI などの新たなテクノロジーの可能性の解放といったビジネス戦略を掲げているお客様です。
たとえば、以下を実現しようとしている場合は、クラウドのモダナイゼーションを検討するでしょう。
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サーバーレス データ プラットフォーム、マイクロサービス、コンテナ化などのクラウドネイティブ アーキテクチャを使用して、アプリケーションとインフラストラクチャを見直し、再構築する。
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サーバーレス データベース、データ レイク、ML プラットフォーム、分析ツール、クラウド運用などのマネージド サービスを利用してタスクを自動化し、新機能を活用できるようにして、市場投入までの時間を短縮する。
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DevOps の原則と CI / CD 手法を採用して、クラウド環境のイテレーションを行って最適化する。
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スケーラブルなデータ マネジメント、十分なコンピューティング能力、事前構築された AI サービスを備えた、生成 AI ユースケースの開発とデプロイのための強固な基盤を提供する。
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自己管理のデータベースではなくマネージド サービスを通じて、費用を削減し、セキュリティとコンプライアンスの体制を強化し、信頼性と生産性を向上させる。
移行に関する決断をする際の重要な要因
お客様にとって、移行するかモダナイズするか、ましてや何を移行するかの決断は困難なプロセスであり、時には手に負えない場合もあります。
とはいえ、オンプレミスのデータベースをスケールするのは難しく、高額になることがほとんどです。そのため、データベースをクラウドベースのサービスに移行してモダナイズすることで、スケーラビリティが向上して大きなデータ列を処理できるようになり、オンデマンドのコンピューティング リソースを通じたパフォーマンスの向上が保証されます。さらに、クラウド ソリューションによってガバナンスとセキュリティのより適切な選択肢が得られ、運用コストの削減が企業に大きな影響を与える可能性があります。
新しいソリューションの開発とデプロイも、クラウドネイティブの CI / CD プロセスの恩恵を受けられます。複数のチームに対して一元化されたクラウド環境を提供することで、データサイロを解消し、チーム間のコラボレーションを妨げる制限を取り除くことが容易になり、開発とデプロイのサイクル中の生産性が向上して、エラーが減少します。
では、組織のデータ ワークロードに最適なアプロ―チを決定するにはどうすればよいでしょうか?
次の 6 つの要素が、組織にとって役立つことがわかっています。
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企業戦略: 企業戦略は、移行戦略を形作るうえで決定的な役割を果たします。移行プロセスについて最終決定を下す前に、合併や買収、地理的拡大、ベンダー ロックインなどの要因がクラウド要件にどのような影響を与えるかを慎重に検討することが重要です。
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費用に関する考慮事項: データセンターを所有して運用するには多額の資本的支出が必要ですが、クラウド ホスティングでも、プロビジョニングとリソースの使用量を適切に監視しないと、予想外の料金になる可能性があります。特にクラウド間で大量のデータを移動する場合は、データの下り(外向き)料金を考慮する必要があります。
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セキュリティとコンプライアンス: セキュリティ モデルの複雑さとコンプライアンス要件は、移行戦略の決定において重要な要素となります。HIPAA、GDPR、PCI などの地方および政府の規則や規制は、移行プロセスがさまざまな種類のワークロードにどのように機能するかに大きな影響を与える可能性があります。
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パフォーマンスと信頼性: クラウドへの移行には、ダウンタイムがわずかで信頼性の高いクラウド リソースへの期待が伴いますが、移行を計画しているサービスのレイテンシ、スケーラビリティ、ダウンタイムの要件を常に理解しておく必要があります。ほとんどのクラウド サービスは、3 桁、4 桁、または 5 桁(99.9%、99.99%、または 99.999%)の可用性 SLA を提供していますが、それでも、移行計画の決定要因となり得る計画的ダウンタイムやメンテナンスの時間枠は依然として存在します。
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特長と機能: 企業の成長に伴って、クラウドのニーズも進化します。時間の経過とともに、ビジネスの拡大をサポートするための追加の機能、サービス、スケーリングが必要になったり、競争力を維持するために専門サービスを探したりする場合もあります。移行に関する決定を行う際には、クラウド サービスによって提供されるイノベーションと新しいテクノロジーについて、慎重に評価する必要があります。
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サポートとカスタマー サービス: 移行には不明な点が多く、短期間で多くのことを習得する必要があります。移行プロセスにおける十分なサポートと支援があることを知っていれば、移行を確実に成功させるのに役立ちます。
モダナイゼーションまたは移行プロジェクトの計画に関するベスト プラクティス
企業の IT 部門では数十年にわたって移行が行われてきました。そのため、ほとんどの組織は移行またはモダナイゼーションのプロセス(メインフレームから x86 サーバーへ、SQL ワークロードから NoSQL へ、Hadoop フレームワークの導入など)に慣れ親しんでいます。
独自のプロジェクトを計画する場合は、次の 4 つのカテゴリに従ってアプローチを組み立てると便利です。
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オポチュニティ評価: オポチュニティとビジネスケースを特定して定量化し、関係者の連携の促進を開始します。デュー デリジェンスや状況把握などのアクティビティにより、IT 環境全体に対する分析情報が得られ、さまざまなクラウドベースのオプションを適切に策定できます。
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基盤と計画: 移行またはモダナイゼーション プロジェクトの成功への基本的な鍵となるのが、クラウド インフラストラクチャの強固な基盤の確立です。クラウドへの移行に最適なワークロードを判断して優先させ、それらの移行方法を計画します。
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移行と検証: 実行、検証、古いシステムの廃止はすべて、移行プロジェクトにおける重要なステップです。クラウドに最適なワークロードから始めて、ビジネス価値、技術面での優先事項、クラウド適合性に基づいて後続のプロジェクトを計画します。各ステップを分析、評価することで、今後の移行に向けて微調整できます。
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最適化と運用: 移行後、新しい環境に移行したワークロードを運用して最適化する必要があります。クラウドベースの運用を採用し、ワークロードのパフォーマンスをモニタリングして理解することは、どのクラウド移行プロセスにおいても非常に重要なステップです。このプロセスを行わないと、クラウド費用の高額化とクラウド環境の複雑化に頭を抱えることとなるでしょう。
モダナイゼーションと移行のループ(Gemini で作成した画像)
プロセスに関係なく、移行のアプローチは同じようなパターンに従い、同じような特性を表す傾向があります。たとえば、プロジェクトを計画する際には、人員、プロセス、テクノロジーの要素に焦点を当てることが重要で、これらはすべて、移行の成功に貢献する重要な要因となることがわかっています。各要素について考慮すべき事項をいくつか例示します。
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人員: 関係者の連携、スキルの構築、リソースの管理
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プロセス: ベスト プラクティスの収集、ガバナンス モデルを通じたプロセスの追跡、または明確に定義された OKR の定義とモニタリング
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テクノロジー: 技術的なギャップの特定、移行ワークロードの優先順位付け、財務、セキュリティ、コンプライアンスが十分に管理された、適切なプロジェクト ランディング ゾーンの構築
適切に実行される移行プロセスは、フライホイール効果を生み出します。すなわち、ワークロードの移行から得られた知識と経験が複合してビジネスケースの絞り込み、基盤の強化、後続の移行の加速を実現し、ワークロードの経時的な最適化が容易になります。
この記事の分析情報と私自身の現場での経験を踏まえて、可能であればデータ ワークロードのモダナイゼーション プロセスを検討することを強くおすすめします。サーバーレス テクノロジーは、TCO を大幅に削減し、モダナイゼーションへの取り組みの費用対効果を高めることができる魅力的なメリットを提供します。これらのメリットには、費用の削減、セキュリティの強化、パフォーマンスとスケーラビリティの向上、最新テクノロジーの活用、アジリティとイノベーションの向上などが含まれます。モダナイゼーションを選択することで、Google の数多くのお客様が行っているように、多くのメリットをすぐに現実に享受できるようになります。
Google は、ツール、リソース、ベスト プラクティス、インセンティブ ファンディングを使用したエンドツーエンドのガイダンスとサポートを提供して移行のリスクを軽減する、データベースのモダナイゼーション プログラムを提供しています。詳細情報およびプログラムのお申し込みについては、こちらをご覧ください。
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