BigQuery と Salesforce Data Cloud のデータをゼロ ETL で安全に組み合わせる
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2024 年 3 月 23 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
BigQuery と Salesforce Data Cloud の双方向データ共有の一般提供が開始されました。これにより、データ インフラストラクチャや複雑な ETL(抽出、変換、読み込み)パイプラインの構築と管理に追加の費用をかけなくても、異なるプラットフォーム間のデータを安全に組み合わせてデータ ユースケースを簡単に拡充することができます。
今や、顧客のニーズに迅速に応えることはかつてないほど重要となっており、リアルタイムのカスタマー エクスペリエンスを提供するタッチポイントやデバイスが増え続けています。しかし、生成・収集されるデータの量は増加の一途をたどり、それらの膨大なデータが複数の SaaS アプリケーションや分析プラットフォームに分散して存在しているため、顧客のニーズに迅速に応えることはますます困難になっています。
昨年、Google Cloud と Salesforce は、顧客が BigQuery と Salesforce Data Cloud のデータを簡単に組み合わせ、BigQuery と Vertex AI ソリューションの力を活用して分析や AI / ML の新たなシナリオを発掘・拡充できるようにすることを目的に、パートナーシップを締結したことを発表しました。
本日、これらの機能の一般提供が開始されました。これにより、Google Cloud と Salesforce をどちらも利用しているお客様は、一方のプラットフォームまたはクラウドに存在するデータに他方から安全にアクセスできます。つまり、特にインフラストラクチャを準備または管理しなくても BigQuery から Salesforce Data Cloud のデータにアクセスでき、さらには Google Cloud のデータを使用して Salesforce Customer 360 やその他のアプリケーションを強化することもできます。
今回の発表は、Google Cloud と Salesforce を併用しているお客様に次のようなメリットをもたらします。
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プラットフォームの垣根を越えたゼロ ETL でのデータの一括表示とサーバーレス データアクセス。
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Salesforce Data Cloud と BigQuery のデータへの管理された安全なニア リアルタイム双方向アクセス。データ インフラストラクチャやデータ パイプラインを別途作成する必要はありません。
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Google Cloud のデータを使用した Salesforce Customer 360 と Salesforce Data Cloud の強化。他の関連するデータセットや一般公開データセットを使って、最小限のデータ移動で顧客データを充実させることもできます。
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Vertex AI や Cloud AI の差別化されたサービスを予測分析やチャーン モデリングに活用し、その結果を Vertex AI と Einstein Copilot Studio の統合を通じて顧客キャンペーンに適用。
クラウドの境界を越えて Salesforce と Google の各プラットフォームのデータを総体的に見たい場合は、BigQuery Omni と Analytics Hub を利用することで、それが可能となります。この統合により、データ アナリスト、マーケティング アナリスト、データ サイエンティストなどのデータユーザーやビジネス ユーザーは、Salesforce と Google のデータを組み合わせて、分析、インサイトの発見、AI / ML パイプラインの実行などのタスクを、データ エンジニアリング チームやインフラストラクチャ チームの助けを借りずに独力で行うことができます。
この統合は完全に管理および統御された形で行われるため、お客様は分析作業やインサイトの発見に専念することができ、重要なエンタープライズ システムを統合する際によく見られるビジネス上の重大な問題を回避できます。データアクセスおよびガバナンス ポリシーは、管理者がデータに対して設定したものが適用されます。アクセスできるのは明示的に共有されたデータセットだけであり、権限を持つユーザーのみがデータを共有・探索できます。複数のクラウドまたはプラットフォームにまたがるデータについては、関連性の高いデータが事前にフィルタされます。その際、Salesforce Data Cloud から BigQuery へのコピーは最小限で済むため、下り(外向き)費用とデータ エンジニアリングのオーバーヘッドが抑えられます。
「これまで、顧客データを理解しようという試みは悪夢のようでしたが、Google Cloud と Salesforce Data Cloud をシームレスに接続したことで、その課題は克服されました。プラットフォーム間でデータをコピーする必要がなくなり、複雑な API に頭を抱えなくて済むようになったのは喜ばしい限りです。両プラットフォームの統合のおかげで、セグメンテーション、お客様の理解、マーケティング アクションやサービス アクションの改善のやり方が劇的に変化しました。」 - 北米の大手保険会社
「当社は顧客データの効果的な活用についていくつかの課題に直面していました。ファーストパーティの BigQuery データと Salesforce の間でのリード エンリッチメントは、手動での時間のかかる作業でした。また、データをバッチ転送していたため、データに基づくタイムリーなライフサイクル マーケティング ジャーニーを生み出すのも困難でした。BigQuery と Salesforce をシームレスに統合することで、これらのプロセスが一変しました。この統合のおかげで、リアルタイムのデータトリガーによるマーケティング キャンペーンの自動化が可能になり、顧客エンゲージメントが大幅に強化されました。何より良かったのは、手作業によるバッチデータ転送の負担がなくなり、貴重な時間とリソースを節約できたことです。これはマーケティング チームの仕事を楽にするだけでなく、収益の向上にも貢献しています。」 - 北米の大手小売企業
Google Cloud から Salesforce Data Cloud への簡単かつ安全なアクセス
企業は、Salesforce Data Cloud に存在するマーケティング、コマース、サービスのデータと、Google 分析プラットフォームに存在するロイヤルティ データや POS データを組み合わせて、顧客の行動に関するアクショナブルなインサイト(購買傾向の分析やクロスセル / アップセルの推奨案など)を導き出し、高度にパーソナライズされたプロモーション キャンペーンを実施したいと考えています。また、Salesforce と Google Cloud の統合データを基に、Google AI の差別化されたサービスを利用してトレーニング / 予測用の ML モデルを構築し、チャーン モデリング、顧客ファネル分析、マーケティング ミックス モデリング、価格弾力性、A/B テストなどのユースケースを可能にすることも望んでいます。
今回の一般提供により、お客様は BigQuery の差別化されたクロスクラウド機能やデータ共有機能を通じて Salesforce Data Cloud のデータにシームレスにアクセスできるようになりました。他の Google アセットのプライバシーに配慮しながらクロス プラットフォーム分析を行うために必要なすべての関連情報にアクセスし、広告キャンペーンをパワーアップできます。Salesforce Data Cloud の管理者は、関連性の高い BigQuery ユーザーまたはグループとの間で直接、簡単にデータを共有できます。BigQuery ユーザーは、Analytics Hub UI を介して共有データセットを簡単にサブスクライブできます。
このプラットフォーム統合では、次のようないくつかの方法で情報を共有できます。
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小さなデータセットやアドホック アクセス(例: 昨年の売り上げが最も多かった店舗を検索する)の場合は、データを最小限移動またはコピーすることで、Salesforce Data Cloud データセットと Google Cloud データセットの単一のクロスクラウド結合を使用できます。
エグゼクティブ向けの報告、毎週のビジネス レビュー、マーケティング キャンペーン ダッシュボードのソースとなる大きなデータセットの場合は、クロスクラウド マテリアライズド ビューを使用してデータにアクセスできます。このビューは、自動的に増分更新されて増分データのみを定期的に提供します。
Google Cloud に保存されたデータによる Salesforce Customer 360 の強化
特に小売業のお客様から、「Salesforce Data Cloud のデータと、Google アナリティクスでウェブサイトとモバイルアプリから収集した行動データを組み合わせたい」という声もよく聞かれます。このようなデータがあれば、より充実した 360 度の顧客プロファイルの構築、行動につながるインサイトの獲得、Salesforce Data Cloud の豊富な機能によるパーソナライズされたメッセージの提供が可能になります。Salesforce と Google の統合は、データサイロをかつてないほど簡単に破壊し、Salesforce Data Cloud 内から Google アナリティクス データへのシームレスかつリアルタイムなアクセスによってより充実した顧客プロファイルやパーソナライズされたエクスペリエンスを構築できるようにします。
Salesforce Data Cloud のユーザーは、ポイントしてクリックするだけの簡単な操作で Google Cloud アカウントに接続し、BigQuery の関連データセットを選択して、それらのデータセットを外部データレイク オブジェクト(データへのライブアクセスを提供するオブジェクト)として利用できます。データレイク オブジェクトになった BigQuery データセットは、ネイティブの Data Cloud オブジェクトのように動作します。このオブジェクトを通じて、360 度顧客データモデルを充実化し、Customer 360 の分析モデルやパーソナライズ用モデルを強化するためのインサイトを引き出すことができます。データ統合用の ETL パイプラインを構築してモニタリングする必要はないため、運用上のオーバーヘッドが軽減され、従来の ETL コピー アプローチに伴う遅延もなくなります。
Salesforce データと Google データ間の障壁の破壊
この Google Cloud と Salesforce Data Cloud のプラットフォーム統合は、データサイロを破壊し、行動につながるインサイトを獲得して、卓越したカスタマー エクスペリエンスを実現するための力を生みます。シームレスなデータ共有、アクセスの一本化、Google AI の適用を可能にするこのパートナーシップは、企業が所有するデータの活用方法を変革し、ビジネスを成功へと導きます。
Salesforce Data Cloud に保存されているデータには、BigQuery Omni の独自のクロスクラウド機能と Analytics Hub のデータ共有機能を通じて直接アクセスできます。これを Google Cloud のデータと組み合わせてさらに拡充すれば、ビジネスの分析や活性化に役立ちます。クラウドの垣根を越えてデータを表示できるだけでなく、カスタム ETL の構築やデータ移動などの手間をかけずに比類のないクロスクラウド分析を行うこともできます。
Google と Salesforce のコラボレーションの詳細については、こちらのパートナーシップ ページ、紹介動画、クイック スタートガイドをご覧ください。
-グループ プロダクト マネージャー、Vidya Shanmugam
-エンジニアリング担当ディレクター、Justin Levandoski