Built with BigQuery: Quantum Metric はデータの持つ力を活用し、不満の生じないカスタマー エクスペリエンスを実現
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 6 月 16 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
デジタルを取り巻く状況が急速に変化する現在、企業はこれまでとは異なる顧客のニーズへの対応において、前例のない課題に挑んでいます。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)がデジタル化を加速させたことで、デジタルには縁のない企業も新しい現実に対応せざるを得なくなりました。そのような市場の状況を背景に、Quantum Metric は主力企業として頭角を現しました。各企業が複雑なデジタル トランスフォーメーションを成し遂げ、カスタマー エクスペリエンスを改善できるようサポートしています。e コマースの台頭、カスタマー エクスペリエンスの重要性の増大、パーソナライズされたサービスに対する需要の高まりを受け、これはどの企業でも必須の能力となっています。
Quantum Metric のプラットフォームには、企業がすべてのチャネルでデジタル エクスペリエンスを分析し、最適化するための包括的なソリューションが用意されています。Quantum Metric のソリューションの中核をなすのが BigQuery です。これは、Google のペタバイト規模の分析が可能なフルマネージドのデータ ウェアハウスで、99.99% の可用性を誇ります。BigQuery により企業は、大量のデータをリアルタイムで分析して、データドリブンの意思決定を行い、優れた成果を出すための行動につながるインサイトを得ることができます。
ユースケース: 解決した課題と問題
ユースケース 1: リターゲティング
自社のウェブサイトやモバイルアプリで、ショッピング カートへの商品の追加や当座預金口座の新規開設など、ユーザーにしてほしいと思っている行動があっても、ユーザーがその行動をしてくれないことがあります。不満を感じた顧客はコンバージョンに至らず、口座の開設や航空券の購入を行うことはありません。何もせずに、サイトから去ってしまいます。
多くの場合、何がいけなかったのか、それを修正するにはどうすればよいのかがわかりません。「申し訳ございませんでした。改善が必要な点を調査いたしました。今後、改善いたします。」というメッセージとともに、潜在顧客に働きかけることができたらいいと思いませんか?問題が生じたすぐ後に、メールやチャットで連絡を受け、担当者と直接話せるとしたら、顧客はどう感じるでしょうか?
Quantum Metric と BigQuery がともに、この問題を解決します。Quantum Metric と BigQuery のインテグレーションによって、ユーザーの行動を調べられるようになります。これにより、ユーザーのコホート(Android ユーザーなど)がコンバージョンに至らなかった場合に、具体的にどんな問題があったのかも解明できます。
たとえば、小売業者は行動シグナルを利用して、オンライン ショップの利用に苦労している顧客や、「在庫なし」の通知が表示された顧客に対する、リターゲティング メッセージをパーソナライズできます。小売業者のマーケティング チームは、顧客のセッション中に発生した問題の詳細な分析情報を活用することによってリターゲティングの費用対効果が向上した、と話しています。
ユースケース 2: 顧客データ プラットフォーム(CDP)への情報提供
顧客データ プラットフォーム(CDP)では、リアルタイムの意思決定を行えます。これは、ビッグデータ分析の大きな利点の一つです。エクスペリエンス データは、リアルタイムで取得できる場合は特に、新たなアクティベーションの手段を生みます。
デジタル トランスフォーメーションの過程を最適化している航空会社があるとします。ほとんどの航空会社は、ロイヤリティ ステータスやポイント プログラムを提供しています。このプログラムは通常、CDP と連携するように構築されています。これによって航空会社は、さまざまなシステムの複数のデータソースからのデータに基づいて、顧客の全体像を把握できます。顧客データをエクスペリエンス データと併せて利用することで、重要なオーディエンス セグメントが、自社のウェブサイトやモバイルアプリ内をどのように移動し利用しているかを詳しく把握できます。
たとえば、ロイヤリティの高いメンバーが不満の兆候を示していることを察知して、チャットを通じてサポートを提供したり、特別なサポート エージェントからの通話をトリガーしたりできます。また、プロモーションなどのフォローアップ オファーを送って、不満のある顧客をウェブサイトに呼び戻すこともできます。行動データと顧客ロイヤリティ ステータス データを組み合わせることで、リソースをより実用的かつ有効に活用できるようになります。つまり、顧客のロイヤリティを維持、強化し、コンバージョンを推進するためのアクションを取ることができます。
ユースケース 3: パーソナライズ
上記の CDP の例は、Quantum Metric と BigQuery のインテグレーションによって達成できることのほんの始まりにすぎません。リアルタイムの行動データから情報を取得する、統合されたデータセットを活用すれば、大きな成果を生むパーソナライズ プログラムを作成できるようになります。
主に日用品を販売している大手小売業者を想定して考えてみましょう。この企業はブラック フライデーで売り上げを大きく伸ばす必要があります。Quantum Metric と BigQuery を使用すると、クリック数、タップ数、閲覧時間、不満度などの、商品へのエンゲージメントに関する統計データをリアルタイムで取得できます。これらのインサイトを地域ごとの商品の在庫状況や競争力のある価格設定などのデータと組み合わせると、ブラック フライデーで売り上げを伸ばすための成功の秘訣を編み出すことができます。
小売業者はこれらのデータ インサイトを利用して、ユーザーのコホート(年齢、デバイス、ロイヤリティ ステータス、購入履歴など)を作成できます。各コホートには、取引データ、技術データ、行動データに基づいてパーソナライズされたおすすめ商品が表示されます。こうしたおすすめ商品は、在庫があり、顧客のニーズに基づくものであるため、売り上げ向上につながりやすくなります。
ソリューション: Quantum Metric が Google Cloud 上に構築されている理由
Quantum Metric は Google Cloud をパートナーとして選びました。Google Cloud は世界随一のインフラストラクチャであり、高い可用性とスケーラビリティを持っているからです。これにより Quantum Metric は、Google Cloud のデータ分析と AI / ML の機能を活用して、高度な分析と世界トップクラスのデータ プライバシーを実現することができています。Quantum Metric のソリューションはそのほかにも、Google Cloud のコンタクト センター AI プラットフォームなどのさまざまな Google Cloud プロダクトと連携することで、エンドツーエンドのカスタマー エクスペリエンスを提供しています。
Quantum Metric のプラットフォームは Google Cloud 上に構築され、Google Cloud でのみ提供されるため、BigQuery と簡単に統合して、データセットを統一、融合できます。そのため、安全なデータ共有を簡素化するための理想的なアプリケーションとなっています。たとえば、BigQuery に加えて Analytics Hub を利用することで、安全なデータ共有が可能になり、組織の境界を越えてアセットを利用できるようになります。
このソリューションの主な機能は次のとおりです。
データ キャプチャ: カスタマー エクスペリエンスに関する完全なデータを活用し、デジタルチーム、IT チーム、サポートチームは顧客理解を深めることができます。
インテリジェンス レイヤ: 取得したすべてのデータは、Google の ML エンジンによって処理されます。このとき、Google のデータ損失防止(DLP)機能を使用して、顧客データが正しく分類されるようにします。自動化されたセグメントとベースラインを作成することで、リアルタイムの異常検出を推進します。
分析と可視化: チームのニーズに幅広く対応するツールです。たとえば、プロダクト / IT 運用の問題のモニタリングとアラート生成は、ジャーニーとヒートマップによる UX 設計の最適化に役立ちます。
サブジャーニー別に分類されカスタマイズされた分析情報、アクション、ユースケースを自動的に加工する、データ キャプチャ、インテリジェンス、可視化機能について、業界ガイドが事前に作成されています。
「Google BigQuery のおかげで、非常に強力な機能が手に入り、規模を拡大できました。これまではリレーショナル データベースを使用していましたが、それによって会社の能力が制限されていた、ということに気が付きました。Google BigQuery によって、当社の分析製品を競合製品と差別化できました。なぜなら、どんな質問をしても、どれだけ大量のデータを投入しても、数秒で結果が得られるのですから。」Quantum Metric 創設者兼 CEO、Mario Ciabarra 氏
ソリューション アーキテクチャ
以下は、Google Cloud 上での Quantum Metric の動作を示すアーキテクチャ図です。


ウェブサイト、モバイル デバイス、キオスクなどのさまざまなソースからのデータが、Google Cloud サービスをによって BigQuery に取り込まれます。取り込まれたデータはリアルタイム分析と履歴分析の両方に使用され、BigQuery データセットに保存されます。Quantum Metric プラットフォームには、マーケティング、プロダクト マネージャー、アナリストまで、さまざまなオーディエンスに対応した、すぐに使えるダッシュボードが備わっています。さらに、未加工のデータセットをクライアントと安全に共有できるので、BigQuery インスタンスでクエリを実行できます。これをほかのデータセットと統合し、Looker を使用してさらに多くの分析情報を生成することもできます。
利点と成果
このソリューションから得られる主要な成果には、次のようなものがあります。
プロダクト - 顧客の問題について自動的にアラートを生成し、問題が収益に与える影響の大きさを測り、プロモーションや支払いといったエクスペリエンスを即座に把握できるようにします。
分析 - ビジネス上の関係者がセルフサービスでインサイトを取得できるようにします。問題の原因を把握し、手動タグ設定なしでリリースの影響を測定できます。
テクノロジー - すぐに使える異常検出機能によって技術的な問題を特定し、フロントエンド エクスペリエンスをリアルタイムでモニタリングして、影響度に応じてバックログに優先順位を付けられます。
高度な分析で小売りエクスペリエンスを最適化
Canadian Tire Corporation は Google Cloud と Quantum Metric を使用して、大規模なポイント プログラムに対するデジタル エンゲージメントを把握し、オンラインと店舗において優れたカスタマー エクスペリエンスを実現しています。その成果をいくつかご紹介します。
オンラインと店舗のエクスペリエンスをよりきめ細かくカスタマイズすることで、オムニチャネルの売り上げを最大 15% 増大しました。
顧客の行動に関するインサイトを誰でも利用できるようにして、販売、マーチャンダイジング、マーケティングを改善しました。
デジタル カスタマー ジャーニーにおいて顧客が不満を抱える点を減らして、より快適なショッピング エクスペリエンスを実現し、ブランドのロイヤリティを向上させました。
Quantum Metric と BigQuery のインテグレーションにより、Canadian Tire は、顧客のニーズ、要望、好みに迅速かつスマートに応えられるようになりました。また Canadian Tire は、Google BigQuery で、Google アナリティクス、取引情報、Quantum Metric 自体の各データセットが統合された全データに無制限にアクセスできる当社独自の機能も活用しています。
Quantum Metric の詳細については、こちらをクリックしてご確認ください。
ISV とデータ プロバイダにとっての Built with BigQuery のメリット
Google は Built with BigQuery イニシアチブを通じ、テクノロジー、便利な専用のエンジニアリング サポート、市場開拓共同プログラムを簡単に利用できるようにすることで、Quantum Metric のような企業が Google のデータクラウド上で革新的なアプリケーションを作成できるように支援しています。参加企業には以下のメリットがあります。
専任のエキスパートから、重要なユースケース、アーキテクチャ パターン、ベスト プラクティスに関するインサイトを得ることによって、プロダクトの設計とアーキテクチャの構築を加速できます。
共同マーケティング プログラムを利用して、認知度の向上、需要の創出、導入の拡大を図り、より大きな成功を実現できます。
BigQuery は、Google Cloud のオープンかつ安全でサステナブルなプラットフォームに統合された、パワフルでスケーラビリティの高いデータ ウェアハウスのメリットを ISV に提供します。Google が提供する巨大なパートナー エコシステムと、マルチクラウド、オープンソース ツール、API のサポートを利用すれば、テクノロジー企業は、データ ロックインを回避するために必要な移植性と拡張性を得ることができます。
Built with BigQuery の詳細については、こちらをクリックしてご確認ください。
本ブログ記事の執筆にご協力いただいた、Quantum Metric と Google Cloud チームの以下のメンバーに感謝します。
Quantum Metric: パートナー マーケティング担当バイス プレジデント Kayla Kirkby 氏 / CEO Mario Ciabarra 氏
Google: Built with BigQuery 担当責任者 Tom Cannon
- Google Cloud、パートナー エンジニアリング、ソリューション アーキテクト Sujit Khasnis
- Quantum Metric、戦略およびパートナーシップ担当バイス プレジデント Jake Makler 氏